今回のテーマは、6月8日にNASA(米航空宇宙局)が発表した火星探査機キュリオシティによる探査結果についてです。
NASAが世紀の大発表
その探査結果の発表内容は、驚くべきものでした。なんと、火星のゲール・クレーターというクレーター内にある30億年前の泥岩から採取された土壌試料の中から、複雑な有機物が見つかったとそうなのです。この発表に学会のみならず、地球外生命体好きたちが沸きに沸きまくっています。
あ、「有機物って何やねん」という方のために、最初に有機物のおさらいをしましょう。
そもそも有機物とは?
中学の理科や高校の化学で習った記憶がある方もいらっしゃるかもしれませんが、老婆心から…。この有機物を説明するためには、無機物も一緒にすると理解しやすいため、ふたつを簡単に説明しますと、
・無機物(無機化合物)とは …炭素が原子結合に含まれない物質
・有機物(有機化合物)とは …炭素が原子結合の中心となる物質
となります。炭素が含まれていれば有機物、含まれていなければ無機物です。
言い換えると、有機物は加熱すると炭になったり、二酸化炭素を放出したりする物質のことであり、無機物は有機物以外の物質のことです。
えッ? 我々人間は無機物と有機物のどちらかって? そうですね人間は、無機物の水分と有機物のたんぱく質や脂質でできているハイブリットというところでしょうか…。
[有機物と無機物のよくある分類]
有機物は生命の痕跡と考えられる
有機物は無機物よりも何やら生命に近い存在であります。こうした有機物は、もちろん生命とは無関係に存在することもできるのですが、現在の地球外生命体の探査活動においては、有機物のあるところに生命の痕跡アリ、調査の価値アリと考えられる…というのが今の見方です。
有機物は過去に存在していたかもしれない生命の詳細な情報を含んでいたり、生命の食料源などになっていたりする可能性があるからです。
今後の調査結果に期待大!
ちなみにこの探査機キュリオシティは、火星大気中にこれまた単純な有機物であるメタンも検出をしています。今回NASAが発表したキュリオシティの火星のデータは単独では、「昔生命が火星に絶対いた!」という証拠にはなりませんが、このデータをさらに詳しく調査することで、数十億年前の火星が現在よりも生命の存在に適した条件がそろっていたことは近い将来、言えそうとのことです。
パンスペルミア説には、地球の生命が火星を経由してやって来たという説もあります。もしかしたら我々生命は、宇宙中の惑星をふらふら旅をしているのかもしれないですね…宇宙与太話まだまだ続きます。
【参考図書】
『YouもMeも宇宙人』いけのり著/東京大学名誉教授松井孝典監修(地湧社)
『彗星パンスペルミア 生命の源を宇宙に探す』チャンドラ・ウィクラマシンゲ著(恒星社厚生閣)
いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信(http://ikenori.com/)」の更新がライフワーク。