本日のテーマは、世間を騒がせている「タコ宇宙起源説」です。
タコは宇宙からやって来たのか?
先日、多国籍の研究者グループが驚くべき研究結果を発表し話題を呼んでいます。
タコが宇宙からやって来た証拠が、タコのゲノム(遺伝子)内から多数見つかったという研究結果です。
こういう話を聞くと、映画などに出てくる「タコ星人」のような宇宙人がUFOで地球に飛んで来たってこと? と思ってしまいそうになりますが、そういうトンデモ系の話ではありません。
専門的な言葉を使うと「地球外のウイルスが、地球生物の進化において何らかの役割を果たしたことを示すエビデンスが、頭足類の遺伝子とトランスクリプトームのシークエンスの中に暗示的に存在している」とのことなのですが、ええ、ええ、何のことやらチンプンカンプンですね。
タコの遺伝子の中に宇宙起源の証拠が多数
簡単に説明させていただきますと、要点は3つです。
[1] そもそも生物の進化には、ウイルスの感染が関係しているという説がある
[2] そのウイルスは宇宙(地球外)から地球に来たという説がある
[3] タコの遺伝子にはそれが顕著に表れている。
生物の遺伝子には生物の進化の秘密が隠されているのですが、タコの遺伝子を調べたところ、[1][2]を裏付けるような証拠が数多く発見されたということです。
我々人間を含め、地球上のすべての生き物が地球の原始スープと呼ばれる化学物質がいっぱいの海か沼か、とにかく地球上の水たまりの中で誕生したのではなく、宇宙からちっちゃな生命の粒としてやって来て、地球上で繁栄したとする宇宙起源説をタコの遺伝子解析が後押しする形になったのです。
ちなみにこのタコだけに多国籍(つまらないダジャレ)の研究者グループの中には、本連載にも度々名前が出てくる天才天文学者のチャンドラ・ウィクラマシンゲ博士も含まれています。
タコのゲノムと人間のヒトゲノム
ちなみに、さらっと流してしまいましたが、「ゲノム」というのはそれぞれの生き物が持つすべてのDNAの情報(遺伝情報)のことを言います。
人間のゲノムのことをヒトゲノムと言いますが、このヒトゲノムも2003年にすべての情報が解析されております。そして、そのうちの人間の体を作るのに必要な情報を遺伝子と言うのですが、その数は22,000~25,000あるというのがわかっています。
これに対して、タコの遺伝子はいくつだと思いますか? えッ? ヒント? そうですね、他の生物はこんな感じです。(参考「ワトソン遺伝子の分子生物学(第6版)」)
・ミトコンドリア(13)
・大腸菌(約4,400)
・キイロショウジョウバエ(約14,700)
以上から予測すると、タコは19,000くらいかしら~? となりそうなものですが、タコはなんと33,000の遺伝子を持っています。
人間よりもはるかに多いのです。これがいったい何を意味しているのかは、今後の研究でさらに明らかにされることでしょう。
タコの驚くべき特徴とは?
タコのような生き物を頭足類と言うのですが、頭足類には次のようなすごい特徴があります。
・他の同等の生物に比べて大きな脳と洗練された神経系が存在する。(=脳を9つ持つ)
・ピンホールカメラのような仕組みの眼を持つ(焦点が合う、また盲点がない)
・柔軟性の高い身体構造で体の表面の模様を周囲に合わせカモフラージュ(擬態)ができる
驚くべきは、こういった高い能力を持ったタコが進化の歴史の中で「突如」出現しているという点です。
タコちゃんは突然どこからやってきたのでしょうか。ええ、ええ、さらに研究が進めば、宇宙のどの辺からいつやって来たということもわかるようになるかもしれません。…宇宙与太話まだまだ続きます。
【参考図書】
『YouもMeも宇宙人』いけのり著/東京大学名誉教授松井孝典監修(地湧社)
『彗星パンスペルミア 生命の源を宇宙に探す』チャンドラ・ウィクラマシンゲ著(恒星社厚生閣)
いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信(http://ikenori.com/)」の更新がライフワーク。