豪華キャストが織りなす人間模様。知る人ぞ知る配信の名作ドラマ
FODで配信中のドラマ『ペンション・恋は桃色 season3』。多くの作品に引っ張りだこのリリー・フランキーさん、話題作への出演をはじめ多方面で活躍する斎藤工さん、今をときめく伊藤沙莉さん、ナチュラルな魅力が光る山口智子さん…という映画級の豪華キャストに加え、稲垣吾郎さん、MEGUMIさん、鈴木慶一さんがゲスト出演します。
2020年1月にフジテレビ深夜25時台で放送されたseason1、2024年1月にFODで配信されたseason2を経て、今回のseason3へ。
父・シロウ(リリーさん)と娘のハル(伊藤さん)、バイト青年のヨシオ(斎藤さん)が営むペンション「恋は桃色」に訪れる“珍客”たちが巻き起こす大騒動。season1〜2はシロウの恋物語でしたが、今回はハルの事件がメインになるそう。
「一度観たらクセになる」とウワサのドラマ。メインキャストのリリー・フランキーさんと斎藤工さんにインタビュー。フリーダムなリリーさんとナイスツッコミ(合いの手?)の斎藤さんの愉快な掛け合いは、まるでラジオを聴いているかのようでした。
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『ペンション・恋は桃色 season3』が始まるにあたり、以前放送・配信された1と2の反響をうかがってみると…。
リリーさん:(反響は)まったくないです。
斎藤さん:テレビ誌の方が知らなかったんですよね、このドラマを。これが民意だなと(笑)。
リリーさん:誰にも気づかれずにseason3まで続けるのは逆に難しい。そんな慎ましく奥ゆかしい作品です。
斎藤さん:存在感が届いていないことを実感する(取材の)1日になっています。史上最弱の続編作品ですよね。
リリーさん:この作品を観たことのない人のために説明するってなかなか難しいんです。だって田中邦衛さんが『北の国から』を観たことのない人のためにいきなり「2024秋」の話をしないでしょう? season3とつけるより『ペンション・恋は桃色 2024秋』の方がよさそうですよね(笑)。
斎藤さん:観ている人がいいように解釈してくれそうですよね。…seasonが進んでいる事実をちょっと引っ込めたいような複雑な気持ちもありますし。
ここで、サンドイッチを頬張っていたリリーさんがスタッフの方に、「(パンの)耳を残してもいいですか? いつもは食べるんだけど、お腹いっぱいになっちゃって」と声をかけたタイミングで斎藤さんが言った興味深いひと言は、「このドラマはパンの耳みたいなものです」。
リリーさん:これでお腹いっぱいになりたくないってこと?
斎藤さん:でも、耳しかなければごちそうにもなるじゃないですか。ケースバイケースということで。
リリーさん:たしかに(笑)。僕がいつも行っている喫茶店は、長い食パンを1日30本使うらしいんですよ。だからいつもすごい量のパンの耳が出て、それをホームレスの人がもらいに来る。その人がまた周りのホームレスの人に配るというサイクルができているらしいんです。パンの耳って持続可能ですよね。
斎藤さん:まさに、このドラマもSDGsということでいかがでしょうか(笑)。
FODという動画配信サービスという形態についても言及したおふたり。若い世代には浸透しているものの世代が上がるととたんに認知度が低くなるというところから、話題のあの作品や監督への追及も…!?
リリーさん:今、地上波だけでなく動画配信サービスの大きな流れが来ているときじゃないですか。今回の作品もそうですが配信限定となると、子供の頃からSNSに精通しているようなデジタルネイティブでない場合、入会登録のやり方がわからないとか退会方法が難しいとかの悩みがありますよね。気になるドラマだから観てみたいと思っても、入口がわからない。
斎藤さん:ハードルが上がりますよね。
リリーさん:ちょうどそういうメディアの過渡期に、多くの人に観てもらうにはどうしたらいいかって考えますよね。
斎藤さん:はい。配信系の作品は世代によって観られない場合も少なからずあると思います。あんなに話題になっているNetflixの『地面師たち』や『極悪女王』もある世代の人には明らかに届いていないと感じますし。
リリーさん:でも、普通に民放のテレビでも『地面師たち』のことを話題にしたりするじゃないですか。それってもう、前と立ち位置が逆転しているということですよね。夜の銀座と地元の小倉では「『地面師たち』観ました!」って声をかけてくる人がほとんど(笑)。でも『ペンション〜』はそっち系じゃないから。
斎藤さん:存在的に、どっち系かにはなりたいですね。
リリーさん:ファンのいる街がわからないなぁ。観てほしいであろう山中湖あたりのペンションのお膝元はフジテレビがカバーしていないから。
斎藤さん:そうなんです、観られないんですよね。
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ペンションという舞台に流れる日常の感情。どこかクラフト感のあるこの作品を、リリーさんも斎藤さんも大切にしているようです。
リリーさん:昔は軽井沢にペンションが多かったけど、山中湖のあたりもすごく雰囲気がよくて今も減っていないんですよね。アミューズメントを期待しているとちょっと違うと思いますが、ゆっくりするにはとてもいい所。今度普通に泊りに行きましょうよ、ペンション。
斎藤さん:いいですね。そういう感覚ですよね、この作品。たまたま撮影があるというだけで、感覚はプライベートなんですよね。
リリーさん:撮影が終わってからもペンションでしゃべってますもんね。
斎藤さん:ペンションでの撮影が大半を占めていますし。ロケ地の情報を知っている人の予約が殺到して、(撮影クルーが撮影場所として)取れなくなっちゃった、みたいなこともあったりして。
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リリーさん:ハイシーズンは簡単に予約が取れないんですよね。家族旅行とか合宿とか、リピーターが本当に多い。
斎藤さん:合宿といえば、この作品も合宿感があるというか、自主映画の極み的な感じですよね。
リリーさん:うん。唯一楽しい仕事、これだもん(笑)。いいものを作ろうとすると、これがボーダーだと思うところからさらに精度を上げていくから苦しくなるじゃないですか。そうすると楽しさが減ってしまうんですけど、これは楽しいんですよね。楽しんでいる方が精度が上がるんです。
斎藤さん:その感覚わかります。
リリーさん:ライブをしながらセッションを楽しんでいる感じですよね。
リリーさん、斎藤さん、伊藤さんの3人のセッションに、個性あふれるゲストの方々の彩りが加わり、唯一無二の魅力を放つドラマ。次回は撮影の裏側を深くうかがいます。インタビューもまさにセッションでした!
撮影/黒石あみ 構成・文/斉藤裕子
ドラマ『ペンション・恋は桃色 season3』
【放送】
フジテレビ系にて毎週水曜24時25分放送中(関東ローカル)
【配信】
FODにて配信中
Profile
リリー・フランキー
1963年11月4日生まれ。福岡県出身。イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞・作曲、俳優など、多分野で活動。『凶悪』(13/白石和彌監督)と『そして父になる』(13/是枝裕和監督)で第37回日本アカデミー賞優秀助演男優賞(『そして父になる』は最優秀助演男優賞)など多数受賞。第71回カンヌ国際映画祭では、主演を務めた『万引き家族』(18/是枝裕和監督)がパルムドールを受賞。
斎藤工(さいとう・たくみ)
パリコレ等モデル活動を経て01年に俳優デビュー。映画『昼顔』『シン・ウルトラマン』ドラマ「海に眠るダイヤモンド」などに出演。3月20日には『少年と犬』等が公開。映像制作にも積極的に携わり、初⻑編監督作『blank13』では 国内外の映画祭にて多数受賞。現在公開中のドキュメンタリー映画『大きな家』や、ダニー・トレホら出演のハリウッド映画『When I was a human』(公開日未定)ではプロデューサーを務めている。また、被災地や途上国での移動映画館”cinéma bird”主宰、撮影現場での託児所プロジェクト、”Mini Theater Park”、白黒写真家等、活動は多岐にわたる。
【斎藤さん衣装】ジャケット ¥138,600、シャツ ¥60,500、パンツ ¥83,600(以上全てヨウジヤマモト/ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500) スカート、靴 共にスタイリスト私物