2025年2月に開幕する舞台『SEIMEI』。世界に誇る日本のクリエイターが集結し、安倍晴明の世界を新しいエンターテインメントとして舞台化する、今までにない邦楽劇です。安倍晴明を演じるのは、歌舞伎のみならず映像や他の舞台作品でも圧倒的な存在感を放つ市川團十郎さん。晴明を裏切る朱雀に大抜擢されたのは、現在人気急上昇中のLil かんさい(リトルかんさい)の嶋﨑斗亜さん。アイドルでありながら映像や舞台の経験を積み、今回の作品につながったそう。新鮮な共演だけでなく、豪華クリエイター陣が顔を揃えた話題の舞台にかける嶋﨑斗亜さんのインタビューをお届けします!
市川團十郎さんと共演、メンバーからは「すごすぎひん?」
――歌舞伎界の大ベテランである市川團十郎さんと共演が決まったときの率直な気持ちを教えてください。
嶋﨑さん(以下敬称略): 舞台への出演が決まったと聞いていましたが、まさか市川團十郎さんとの共演とは思ってもみませんでした。「嘘やろ!?」と、本当に驚きましたね。母に報告したところ「お母さんも意味わからへん」と驚いていましたし、祖母は大喜びでした。
製作発表会見でもお話しさせていただきましたが、團十郎さんはテレビで拝見すると強いオーラを感じて近寄りがたい印象でしたが、実際にお会いするととても優しい方なんです。僕が東京で受けているボイストレーニングの話題を広げてくださるなど、細やかな気遣いも印象的でした! 歌舞伎界の大スターである市川團十郎さんと共演させていただけることに、緊張と不安を感じる一方で、この素晴らしい機会に精一杯応えたいという気持ちが強くあります。
――以前團十郎さんと共演された事務所の先輩の宮舘涼太さん(Snow Man)からは、アドバイスなどはありましたか?
嶋﨑:僕が團十郎さんと共演することを知って、応援の言葉をかけてくださっているとお聞きしてすごくうれしかったです。これからお稽古が始まりますが、色々と宮舘くんに相談させていただこうと思っています。ぜひ公演にも来ていただきたいです。
――今回の團十郎さんと共演、Lil かんさいのメンバーからはどんな言葉をかけてもらいましたか?
嶋﨑:「頑張れ」と言ってもらいました。あとは「すごすぎひん?」と(笑)。それを聞いて、やっぱり團十郎さんと一緒の舞台に立つのはすごいことなんだと改めて思いました。メンバーの期待にも応えられるようにしっかりと頑張りたいです。
「主役である安倍晴明を裏切る朱雀。自分を俯瞰で見ながら表現を磨いていきたい」
――まだ解禁できる情報が少ない『SEIMEI』ですが、どんな作品になりそうですか?
嶋﨑:今までにないものになりそうです。團十郎さんも、今、世の中に根付いている安倍晴明のイメージを超えた新しいものを作ろうと言われていますし、音楽も衣裳も非常に華やかで艶のある作品になるのではないかと楽しみにしています。僕が普段踊っているような“ダンス”とは違い、“舞”になると思います。でもお稽古はこれからなので、僕もこれから学んでいく感じです。
――作品への意気込みはいかがでしょうか?
嶋﨑:公式サイトの「市川團十郎」の下にある「嶋﨑斗亜」の文字の大きさはこれでいいのかな?と思いますね。もうちょっと小さくても…(笑)。でもこの(文字の)大きさに負けないよう、躍動して前に出て、團十郎さんの存在感に怯まないように挑んでいきたいです。これからお稽古が2か月くらいあるので、印象に残れるようにがむしゃらに頑張るしかないです。
いつものステージでは「吸収するのが速いね」と言っていただけることがあるのですが、それも役立つかなと思います。お客様に見られる仕事をするうえで「こう動いたら、こう見える」と、なんとなく俯瞰の自分を想像できるようになってきたので、それもプラスにしていきたいですね。
――嶋﨑さんが演じる朱雀はどんな役ですか?
嶋﨑:僕が演じる朱雀は、晴明を裏切る、闇を抱えているような役です。晴明の視点では確かに裏切り者なのですが、善と善がぶつかり合う状況もあり、朱雀が本当に悪なのかという複雑な立場にもあります。それをどう表現するかが難しいですね。
でも大変であればあるほど楽しみが大きくなるので、ワクワクします! だってまさか自分がこのような舞台に立てる未来が待っているとは思わなかったですし(笑)。
――嶋﨑さんが重要な役どころにキャスティングされた理由は、ご自身としてどんなところだと思いますか?
嶋﨑:技術も大事なことであり、あと以前出演した舞台『波濤を越えて』からつながったこともあったのかなと思います。『波濤を越えて』でご一緒した歌舞伎音楽の田中傳次郎さんと今回もご一緒させていただくのですが、「できるよ」と気にかけてくださったり、製作側の方から「(僕に)演じてもらいたい」と言っていただけたので、精一杯頑張ります。
初めて歌舞伎に触れた『波濤を越えて』は本当に大きな経験で、自分の自信にもなりました。普段とはまったく違う身体の使い方で筋肉痛になったりしたのですが、それ以来グッと歌舞伎の面白さがわかるようになってきたので、それはひとつの成長だなと思います。歌舞伎を知ってエンターテインメントの幅が広がった感じですね。
――歌舞伎が楽しめるようになったのは大きなことですね。
嶋﨑:作品を通じて、日本の歴史にさらに興味を持つようになりました。特に歌舞伎は本当にカッコいいし、團十郎さんの「にらみ」は鳥肌モノです。歌舞伎俳優の「にらみ」の浮世絵を見た時、「かなり誇張して描いているな」って思っていたのですが、実際の團十郎さんを拝見して、まさに浮世絵そのままの迫力があることに驚きました。
――これからお稽古が始まるとのことで、それに向けて準備していることはありますか?
嶋﨑:『波濤を越えて』が2年前のことなので、そのときの姿勢や走り方を思い出しています。これといって大きなことはしていないのですが…、先日家族で旅行したときにガラス製品を売っているお店で朱雀のお守りを発見してつい買ってしまいました。今バッグにつけています(笑)。
ビジュアル撮影で朱雀の衣裳とカツラをつけてメイクをして、ちょっと実感が湧いてきました。こう動くとカッコいいなとか、歌舞伎の型を応用してみようとか、少しイメージができたような気がします。それをどんどん磨いて、いい感じにしていきたいです。
――『波濤を越えて』では、時代背景を知るために平家物語のマンガを読んで学んだそうですが、今回はどのように知識を入れていますか?
嶋﨑:やっぱりマンガが読みやすいので、母が安倍晴明のマンガを買ってきました。でも朱雀のことにはあまり触れられていなかったから自分で調べたりも。陰陽師ってこういう(指先を立ててくるっと空を切るポーズ)イメージがあるじゃないですか。でもそういう一般的なことにとらわれなくていいのかなと思っています。新しいものを作るという意味で、調べすぎず縛られず、制作の段階で少しずつわかっていけばいいかな。晴明は絶対にカッコいいですけどね。
――今後、市川團十郎さんとはどのようなコミュニケーションを心がけていきたいですか?
嶋﨑: 團十郎さんから大阪のおすすめスポットを尋ねられた時、「なんばグランド花月」をご紹介したところ、「大阪公演の時に一緒に行こう」とお誘いいただき、とても嬉しかったです。おすすめのお笑い芸人さんもしっかり紹介できるよう、勉強しておかないと(笑)。
團十郎さんにどんなものを差し入れしたらいいかわからなくて、お好きな食べ物をひたすら調べました。どうやら新之助さんがレモン好きらしいのですが、(それを差し入れにするのは)少し違うかなと思い(笑)、フルーツ大福を選ばせていただきました。これからSNSなども拝見させていただいて、團十郎さんのことをもっと知っていけたらと思っています。
――製作発表のときに、團十郎さんとギャルピースをされていましたね!
嶋﨑:あれはミスりました〜。歌舞伎界の大スターになにさせとんねん! と本気で怒られてもおかしくなかったですよね(苦笑)。でも團十郎さんは優しくて、「指ハートは、娘とやったりするよ」とおっしゃってくださりました。舞台の上のカッコいい姿しか存じ上げなかったのですが、そんなプライベートなお話をうかがって、心が温かくなりました。
――スタッフも錚々たるメンバーです。今回初めてお会いになった方の印象を教えてください。
嶋﨑:製作発表のときに楽曲担当のSUGIZOさんはいらっしゃらなかったので、母に「どんな人なの?」と聞いたら「ママ世代で知らん人はおらんよ」と言っていたので、本当にすごい人なんだろうなという印象で、お会いするのが楽しみです。神楽振付のケント・モリさんはぶれないのがすごい。一般の人の感性とはまったく違う感性を持っているからこその振り付けなんだろうなと思っています。
いろいろな方の才能に触れていろいろなものを吸収して成長できたらいいなと思っています。スタッフに、普段仲良くさせていただいている方や以前の舞台でご一緒させていただいた方がいるので、そこから広げてみなさんといい関係を築きたいです。
――この作品を楽しみにされているファンの方へメッセージをお願いします。
嶋﨑:作品全体を通して歌舞伎への興味にもつながったらうれしいです。僕が歌舞伎を観に行かせていただいたとき若い世代のお客さんもいましたので、世代を問わず楽しめるものだと思うんです。
だけど古典芸能に触れるきっかけがなかなかないという人が多いと思うので、この『SEIMEI』がそのきっかけになるとうれしいです。歌舞伎の要素と現代的な部分が融合した作品なので、初めての人でも楽しんでいただけると思います。
日本の演劇を集結させ、安倍晴明の世界を日本エンターテインメントとして舞台化!
JAPAN THEATER 『SEIMEI』
【Cast&Staff】
出演:市川團十郎 嶋﨑斗亜(Lil かんさい)他
脚本:今井豊茂
演出:広井王子
楽曲:SUGIZO
邦楽作曲:今藤長龍郎
神楽振付:ケント・モリ
歌舞伎音楽:田中傳次郎
【公演詳細】
<大阪公演>
日程:2025年2月19日(水)〜2月24日(月)
会場:オリックス劇場
<東京公演>
日程:2025年3月1日(土)〜3月23日(日)
会場:THEATER MILANO-Za
公式サイト:https://japantheater.com
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撮影/有泉伸一郎 スタイリスト/内田あゆみ(creative GUILD) 取材・文/斉藤裕子