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LIFESTYLE

2024.09.29

日常のなかのピュアな人間関係と、そこから紡がれる温かな想い。池松壮亮さんが語る、映画『ぼくのお日さま』

第77回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション「ある視点」部門に正式出品された映画『ぼくのお日さま』(現在公開中)。出演者の池松壮亮さんにインタビューしました。

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門へ正式出品! 映画『ぼくのお日さま』出演 池松壮亮さんインタビュー

男女デュオ・ハンバートハンバートの楽曲『ぼくのお日さま』からインスピレーションを得て、気鋭の奥山大史さんが監督・撮影・脚本・編集を務めた、曲名と同じ名前の映画。

現在公開中の映画『ぼくのお日さま』は、雪の降る街を舞台に、少し吃音のあるアイスホッケーが苦手な少年・タクヤと、フィギュアスケートを学ぶ少女・さくら、元フィギュアスケーターでさくらのコーチ・荒川の3人の視点で紡がれる物語です。荒川を演じたのは、奥山監督とお互いに才能を認め合う池松壮亮さん。『ぼくのお日さま』の魅力や共演者についてなど、お話をうかがいました。

優しく温かなまなざしをもった作品。沈黙にも世界が耳を傾けるきっかけになれば

──この作品の見どころを教えてください。

池松さん(以下、敬称略):とある時代のとある街で、雪が降り始めてから雪が解けるまでのお話です。ドラマチックな出来事が起こる物語ではありませんが、大自然の中で様々な感情を抱える登場人物たちの、美しく儚い繊細な日々が描かれています。ひと冬の大切な恋心や、人の純粋さ、ゆえの残酷さ、冷たくて、温かな人生の記憶のような映画になっています。

──カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品されました。革新的で大胆な、新しい映画にスポットを当てた部門ですよね。

池松:ある視点部門は今年、本格的に次の世代の発掘へと大きく舵を取ったことが印象的でした。ある視点部門だけでなく、コンペも、セレクションメンバーを見てもこれまでと違うことを感じました。このタイミングで、今作が選ばれたことに大きな意味を感じ、とてもうれしかったです。

──この映画では「言葉では表現できない気持ち」が描かれていますね。

池松今作の主題歌は「ぼくはことばがうまく言えない」という歌詞で始まります。さまざまな情報や言葉が氾濫し次々と消費される時代にあっては、沈黙はないものとされがちですが、沈黙にも、沈黙の中にこそ大切な人の想いがあるものだと思います。この世界の沈黙や、自然や、未来の声に、耳を傾ける。この映画がそんなきっかけになれたらいいなと思っています。

子供たちふたりには台本を渡さずに演技してもらったからこそ、日常と関係性が融合したリアルな世界観が表現できた

──今作品にはスケートのシーンがたくさんありましたが、池松さんはスケートに親しまれていたのですか?

池松今まで氷の上に立ったことがなかったし、ローラースケートすら経験がありませんでした。接点のないスポーツだったので、どのくらいできるようになるものか全く未知なまま、練習をはじめました。

撮影の半年前からはじめましたが、本当に難しかったです。体を動かすことは苦手ではなく、高校までずっと運動をしてきて、役によってこれまでいろんなことに取り組んできましたが、今回がいちばん難しかったかもしれません。

──フィギュアスケートに興味を持ったタクヤがどんどんうまくなっていく、その成長過程にもグッときました。

池松敬達(タクヤ役の越山敬達さん)はスケートの経験がありました。 脚本を渡されていないなかで、タクヤのスケートの上達がどのくらいか敬達本人も演出を受けながら探っていました。奥山さんと「ここは何段階くらいの滑り方でいこう」と相談しながら撮影していました。彼はスケートを下手に見せることがすごく上手で、その段階を踏むチューニングが素晴らしかったんです。

──タクヤとさくらのふたりには脚本を渡さないで口伝えで演技指導をしていたから、池松さんが第2の監督だったと奥山監督が言われていましたが、そのなかで池松さんが心がけていたことや工夫したことはありますか?

池松物語を知らずに進めることで、僕との関係性がそのままダイレクトに反映されてしまうため、こちらが常にシーンや物語を念頭に置いて接していくことが重要でした。

ふたりの無垢な宝石のような輝きを見つめ、それを存分にこの映画に残してもらえるように常に意識を向け、心を通わせることでその場に荒川とタクヤとさくらを存在させたいと思っていました。

どんな距離感でどんな会話をするか、スタートからカットの間だけでなく、3人にカメラを向ければそこに荒川とタクヤとさくらが映ることを目指していました。互いに向き合い、かけがえのない時間を共有する中で感情が芽生え、それがシーンに反映され、作られたものではない物語が立ち上がってくることをふたりと一緒に体感したいと思いました。

──口伝えでの演技指導は映画ではあまりやらないということは、ある意味実験的なものでもあったのですか?

池松作家や脚本の力が強かった日本映画ではあまり主流ではないやり方だとは思いますが、是枝さんや西川さん、諏訪さんもその方法をとられています。映画に何を求めるかによって変わりますが、とても豊かで、リアリティあふれるものが映るので僕は好きです。子供たちが大人にやらされたものではなく、身体の内から感情が生まれる瞬間を捉えることができます。台本を渡さないのが正しいか正しくないかではなく、そのことで彼らの何を映そうとしているのかが重要なことだと思います。

──タクヤとさくらと荒川コーチの関係性をつくる段階ではどんなことをされたのですか?

池松たくさん話をしてなるべく一緒にいて、一緒にいることに慣れてもらうことでリラックスできるようにしたいと思いました。それからふたりがどんなことを喜び、どんなことが悲しいのか、今日はどんな気分なのか、常に観察していたいと思いました。その上で互いをちゃんと見ていること、感じていること、ふたりの注意をそのシーンに沿った場所に向けてあげたいと思いました。

自然の湖の氷の上で3人でスケートをするシーンで初めて二人にあいました。そのシーンは早く撮らないと氷が溶けてしまうということで、3人での初日になってしまいました。今作にとってとても重要なシーンだったので、なんとか成功させなければと思っていました。

朝、ホテルのロビーで「おはようございます」から車で2時間くらいかけて撮影場所に行き、それを2日間。とにかく嫌われてもいいやと捨て身の思いで話しかけ続け、お菓子を渡し、冗談を言い続け、それをふたりの気分が上がってくるまで永遠と続けました(笑)。

(※:作品のなかでもっとも印象的な、3人の関係性が温かく伝わってくるシーン)

──すごくキラキラしたシーンでした。

池松奇跡のようなシーンが生まれました。奥山さんの撮影があまりにも素晴らしかったですし、大自然の氷も、それを照らすお日さまの光も、そこで滑る3人も、夢のような時空が映っていました。あのわずか3分のシーンに、2日間をかけるという判断をした奥山さんと製作チームは素晴らしかったと思います。

奥山監督への絶大な信頼感、共演を重ねた若葉竜也さんとの心の親密さ。奇跡のような瞬間に出会えたもの作り

──共演者のひとりである若葉竜也さんについてもお聞かせください。映画『愛にイナズマ』以来の共演で、そのときは兄弟役で今回は恋人役です。今回、「こうしよう」みたいなお話はされましたか?

池松二人の関係性にも脚本上の余白があったので、奥山さんとぎりぎりまで考えていました。なにを伝えるべきか、説明的にならず、余韻を大切にしながら、どこまで伝えるか、常に話し合いました。

前回の共演経験があったからこそ、自分が五十嵐とのシーンに必要だと思うこと、あるいはなにを補い、削ぎ落としていくべきか、思うことを若葉くんにも全て共有させてもらいました。

若葉くんはもの作りに対してとても真摯な方で、いつも一緒に答えを探してくれました。そうした時間も、ふたりの関係性を作ってくれたのではないかと思います。

兄弟役と恋人役をやったのはこれまで若葉くんだけです。前作で兄弟を演じた中での心の親密さの記憶を利用して、今作のふたりの関係性に活かせたらと思いました。いまから20年ほど前のとある雪降る街で、秘めながらも確かに互いの温もりを頼りに生きるふたりを、決して特別なものではなく、自然に存在させたいという気持ちがありました。

──お話をうかがっていると、奥山監督への強い信頼を感じます。池松さんにとって、奥山監督はどんな存在ですか?

池松かけがえのない存在です。この映画、この役を作りあげるうえで心から信頼でき、全てを預けることができるパートナーであり、素晴らしい監督でした。

出会う前から、奥山さんのような存在が次世代の日本映画の希望になっていくのではないかと思っていました。記念すべき商業デビュー作に参加でき、目指すべき場所を探しながら好奇心を持って一緒に冒険することができました。そしてこのように細部に至るまで美しく素晴らしい映画を作り上げてくれました。才能豊かで、まだ28歳。多くの方にこの革新的なデビュー作を目撃してもらいたいです。

映画『ぼくのお日さま公開中

【Story】
雪の降る田舎町。アイスホッケーが苦手ですこしきつ音のある少年タクヤは、ドビュッシーの曲「月の光」に合わせてフィギュアスケートを練習する少女さくらに心を奪われる。ある日、さくらのコーチを務める元フィギュアスケート選手の荒川は、ホッケー靴のままフィギュアのステップを真似して何度も転ぶタクヤの姿を目にする。タクヤの恋を応援しようと決めた荒川は、彼にフィギュア用のスケート靴を貸して練習につきあうことに。やがて荒川の提案で、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習を始めることになり……。

【Staff&Cast】
監督・撮影・脚本・編集:奥山大史
出演:越山敬逹、中西希亜良、池松 壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩
主題歌:ハンバート ハンバート 『ぼくのお日さま』

撮影/天日恵美子 取材・文/斉藤裕子

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