「そんなわけがないだろう」と思いました。自分たちが「ドラえもん」の映画に声優として参加するなんて、まるで夢のようで、それが現実だと実感するまでには少し時間がかかりました。
「ドラえもんは僕にとって教科書的な存在」(加賀)
────今回、『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』で声優として初挑戦しましたが、オファーを初めて受けたとき、どのような気持ちでしたか?
加賀さん(以下加賀)
────おふたりにとって、「ドラえもん」とはどんな存在ですか?
賀屋さん(以下賀屋)
「ドラえもん」は本当にめっちゃ好きでしたね。春に父親に連れられてドラえもんの映画を観に行くのが恒例行事で、毎年楽しみにしていました。大晦日はおばあちゃんの家に親戚が集まるんですけど、大人たちは紅白歌合戦を観たがり、子どもたちは「ドラえもん」を観たいので、毎年「大人 VS 子ども」の戦いになるんですよ。結局、大人たちはリビングにある大きなテレビで紅白を観て、子どもたちはおばあちゃんの部屋にある小さいテレビで「ドラえもん」を観ることになるんですけど(笑)。いとこ5人でくっついて観てましたね。そうそう、「大長編ドラえもん」の漫画版も買ってもらって、それを何度も何度も読んでましたよ。大学生になってから自分で完全版を買い直したりもしました。「ドラえもん」の思い出は本当にたくさんあります。
加賀
今こうして振り返ってみると、「ドラえもん」を見てアイデアというものを学んだ気がします。「ドラえもん」って〝ルール〟を自分で作って、「こんなルールの遊びですよ」って子どもたちの中に新しいルールをポンっと作っていましたよね。芸人さんでも「ドラえもん」好きってすごく多いんですよ。「『ドラえもん』を観てるからこんなことができる」っていうのがあるのかもしれません。そう思うと、「ドラえもん」は僕にとっての教科書的な存在です。
────好きなキャラクターは?
賀屋
ドラえもんかな。子どもの頃、ドラえもんの絵をよく描いてたんです。ちなみに、欲しいひみつ道具は「とりよせバッグ」。バッグの中に手を伸ばしたら、好きなものを掴めるんですよ。これさえあれば、忘れ物は絶対ないですね。今日、リップクリームを忘れちゃったんですよ。とりよせバッグがあれば(笑)。
加賀
スネ夫ですかね。スネ夫ってお金持ちなのに、満たされてない感じがあるというか。のび太って結構満たされてる感じがします。自己肯定感も高いですし。スネ夫は自分の存在意義を外側に設けるんですよね、「別荘持ってる」とか。しっかり愛されているのに、どこか劣等感がある。そんなスネ夫が今後どんな大人になっていくのか、楽しみにしているところはあります。あと髪型が面白いです。
賀屋
スネ夫がいつも新しく仕入れるおもちゃは、フランス製が多いんですよね。フランス製のラジコンは果たしていいのかっていうね(笑)。僕もスネ夫は好きですね。
────印象に残ってるエピソードはありますか?
加賀
すごいベタかもしれないんですけど、きれいなジャイアンが出てくる「きこりの泉」のエピソード。ジャイアンが泉に落ちて、キラキラになって帰ってくるんですけど、そのデフォルメ具合とかも絶妙に面白いというか。細くしたりとか、マッチョにしたりとかじゃなくて、ほんとに目がキラキラになってくる感じ。「ジャイアンを返してくれ!」ってなって、ゲラゲラ笑った記憶がありますね。本当に大好きなエピソードです。
「まさかVaundyさんとバンドが組めるとは…」(賀屋)
────声優に初挑戦した感想は?
賀屋
声優さんって本当にすごいなと思いました。決まったタイミングに決まったセリフを言わなきゃいけないんですけど、それが想像していた何倍も難しい。何回もミスしました。自分なりに練習もしたんですけど、正解がわからなくて。でもスタッフさんが導いてくれたので、当日は焦らずできたというか。1時間頭を抱えて…みたいなことはなかったです。改めてアニメ、そしてキャラクターに命を吹き込む声優さんがすごさを実感する機会になりました。
加賀
お笑いだったら、例えばネタをミスっても、別の機会に取り返せばいいかなと思えるんですけど、今回ばかりはそうはいかない。ドラえもんの歴史に自分の声が残るわけですから。最高のコンディションで挑むために、のど飴を食べたり、部屋に加湿器を2台置いたりしながら喉のケアまでしっかりしました。アフレコ後、手応えがあったかと聞かれるとわからないですね、正解だったのか。またチャンスがあれば挑戦したいです。
────バンドマン役が急遽決まったとのことですが、どのような経緯だったんですか?
加賀
自分たちのアフレコが終わった後に、ブースの外に聞こえるように「あ〜終わりたくない。帰りたくない」ってアピールしたんですよ(笑)。
賀屋
そうしたら、「バンドマン役やってみますか?」と提案いただいたんです。そのバンドのボーカルがVaundyさんだということはあとから聞いたんですけど、本当にうれしかったですね。Vaundyさんとバンドを組める人生があったとは…。本当にスペシャルな体験でしたね。
────劇中にたくさんの楽器が登場しますが、おふたりは思い入れのある楽器はありますか?
加賀
ギターですね。僕、高校を途中で行かなくなっちゃったんですよ。サボってたっていうか、面倒くさくて行かなくなった時期があったんです。そのタイミングでたまたまバイト先の先輩に「ギターやってみたら?」って言ってもらって。そうこうしてるうちに、僕の同級生のお父さんが親父バンドを組んでたんですけど、やめるから機材をもらってくれる人探してると言われて。プロが使うようなギターやマーシャルアンプが一瞬にして手に入ったんです。「絶対にミュージシャンになるやん、僕」って思ってギター始めたら、歌いたいことが何もなくて、表現したことがなかった(笑)。でも、ギターをやっていたおかげで、その時期はなんか楽しく過ごせたと思います。
賀屋
マリンバですね。弟がマリンバやっていて、 家にでっかいマリンバがあったんですよ。家に誰もいないときに僕もなんとなく音を出してみたりしましたね。家の中で圧倒的な存在感のマリンバもあったんで、 思い出には残ってますね。
「初めて観る漫才が僕らだってことも…」(加賀)
────本作は音楽が失われた世界を舞台にしています。そのような世界では、人々はイライラし、争いが勃発してしまう。音楽の大切さや楽しさを伝える作品になっていますが、「笑い」についても同じことが言えると思います。最近「笑い」の大切さや楽しさを実感したことはありましたか?
賀屋
先日、新幹線に乗っていたら、首に真っ赤なスカーフを巻き、シルクハットを被った男性に声をかけられたんですよ「めちゃくちゃファンです!」って。僕の周りにはいないようなとても個性的な雰囲気の方で、うれしくてとても印象に残っています。
加賀
ロケ先で小さな女の子が駆け寄ってきて、僕らの前で「いつも観てます!頑張ってください」って言って、去っていったんですよ。その後、お父さんとお母さんに「言えたよ!」って伝えていて…。僕らがその子の原体験になっているのかもしれないと思ったら、本当にうれしくて、お笑いやっててよかったと思いました。今回の映画を観る小さな子にとって、初めて観る漫才が僕らだってこともありえますよね? 音楽も笑いも、奇跡を起こしてくれるという意味ではすごく似ていると思います。
【Story】
音楽会の前にリコーダーを練習していたのび太の前に突然、不思議な少女・ミッカが現れる。のび太が吹くリコーダーの音色に魅了されたミッカは、音楽をエネルギー源とする惑星から来たと明かし、のび太とドラえもんたちを音楽(ファーレ)の殿堂へと招待する。ひみつ道具「音楽家ライセンス」を使って楽器を選び、ミッカと共に演奏することで、少しずつ殿堂を復活させていくドラえもんたち。しかし、その過程で、音楽の未来を脅かす未曾有の危機が迫っていることが明らかになる。ドラえもんたちは、音楽の力を信じ、困難に立ち向かっていく。
【作品詳細】
『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』
公開日:2024年3月1日(金)
原作:藤子・F・不二雄
監督:今井一暁
脚本:内海照子
音楽:服部隆之
〈声優キャスト〉
声の出演:水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、芳根京子、加賀翔(かが屋)、賀屋壮也(かが屋)、吉川晃司、石丸幹二
主題歌:Vaundy『タイムパラドックス』(SDR)
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2024
写真/深山徳幸
かが屋
2015年デビュー。かが屋は加賀と賀屋の名を合わせて名付けられた。キングオブコントで2018年準決勝、2019年と2022年には決勝進出し注目を集める。2019年1月には冠ラジオ番組「かが屋の鶴の間」がRCCラジオでスタートし、4月からはレギュラー放送。ライブ、バラエティ、ドラマ、映画など幅広いフィールドで活躍中。