薺の読み方・意味は？ 語源・由来も紹介
◆薺の読み
春の七草には、芹（せり）、繁縷（はこべら）、御形（ごぎょう）、仏の座（ほとけのざ）、菘（すずな）、蘿蔔（すずしろ）、薺があります。
その中のひとつ、「薺」。ひらがなで表記されることも多いですが、「なずな」と読みます。
ほかにも「薺」は音読みで「セイ」「ザイ」、訓読みで「はまびし」とも読みます。
◆薺について
花としての「薺」はアブラナ科ナズナ属の野草。別名「ぺんぺん草」「三味線グサ」とも呼ばれています。薺は田畑や荒れ地、沿道などに生え、小さい頃に「ぺんぺん草」と呼んでいた人も多いはず。
春から夏にかけて小さな花と三角の果実を実らせ、高さは10〜40cmほど。春の七草では、若葉を茹でて食べます。
◆薺の語源・由来
「薺」の語源は「撫菜（なでな）」が訛って生まれた説が有力のよう。撫でたいほどかわいい菜という意味です。
ほかにも、早春に開花し、夏に枯れることから「夏無き菜」、夏無（なつな）から変化したという説、朝鮮の古い言葉で「ナジ菜」が転じたという説もあるようです。
◆薺にまつわる名歌
昔から身近な存在だった「薺」。その咲く様子から、松尾芭蕉も俳句を詠んでいます。
「よくみれば薺花さく垣ねかな」
（意：ふだんは気にかけない垣根の根元にも、よく見ると、ナズナの花が目立たずひっそりと咲いている）
与えられた場所でも、そこで成功・幸せになろうといった意味があるような気がしますね。
薺の書き方、正しい漢字の書き順（筆順）
画数が17画の「薺（なずな）」。「薺」は難しく見えますが、分解していくと簡単。くさかんむりに、「齊」。
「齊」は、「亠（なべぶた）」、「丫（あげまき）」、「刀」、「ノ」、「レ」、はらい、「ノ」、横棒、横棒、縦棒、の順に書きます。
難しい漢字をさらっと書けたら素敵ですね。
薺の栄養
薺は雑草として扱われることもありますが、実はたくさんの栄養が含まれています。
薺（100gあたりの栄養価）
・タンパク質… 4.3g
・脂質… 0.1g
・炭水化物… 7.0g
・食物繊維… 5.4g
・β-カロテン… 5200μg
・ビタミンB1… 0.15mg
・ビタミンB2… 0.27mg
・ナイアシン（B3）… 0.5mg
・パントテン酸（B5）… 1.10mg
・ビタミンB… 60.32mg
・葉酸… 180μg
・ビタミンC… 110mg
・ビタミンE… 2.5mg
・ビタミンK… 330μg
・カルシウム… 290mg
・リン… 92mg
・鉄分… 2.4mg
・マグネシウム… 34mg
・マンガン… 1.00mg
・カリウム… 440mg
特に、栄養価が高いものはこちら
・β-カロテン… 活性酸素を抑え動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病、がん予防が期待される
・カルシウム… 骨や歯を構成するのに必要なミネラルのひとつ
・カリウム… 疲労回復や利尿作用、高血圧の予防に役立つ
レシピは、七草がゆ以外にも、天ぷらや和え物、おひたし、お茶にしてもいいでしょう。
ただし、薺に含まれる、アセチルコリンは血圧を下げる効果があり、妊娠中の方の摂取は控えたほうが良いとされています。
薺の花言葉とは？
白くて小さな花を咲かせる「薺」の花言葉はなんでしょうか。
薺の花言葉は、「I offer you my all.（私はあなたにすべてを捧げます）」です。
薺の三角の果実は、その三角のかたちから西洋では「羊飼いの財布」と呼ばれ、「薺を渡す＝財布を預ける」が転じて、「あなたに全てをお任せします」と意味になったとか。薺の実の中には、ちいさな黄金色の種が詰まっていることも由来のひとつと考えられます。
薺は人名に使える漢字？
素敵な読み方と花言葉、栄養満点な「薺」だから、子どもにも名付けたいという人もいるでしょう。
結論からお話すると、「薺」は子の名前に使える漢字ではありません。常用漢字ではないこと、初見で読みにくいことが理由です。
法務省「子の名に使える漢字」によると、人名に使える漢字は、常用漢字表と人名用漢字表、ひらがな、カタカナ、人名用として使える仮名・符号の5つが認められています。
「薺」と名付けたい場合は、「なずな」とひらがな表記にするのがよいかもしれません。
薺の英語表記は？
「薺」の英語表記をチェックしていきましょう。
「薺」は「shepherd’s purse」です。花言葉にも出てきた「羊飼いの財布」の訳。
関連する春の七草もあわせて紹介します。
・せり（water dropwort）
・はこべら（chickweed）
・ごぎょう（cudweed）
・ほとけのざ（henbit）
・すずな（turnip）
・すずしろ（daikon radish）
・春の七草（The seven herbs of spring）
＊ ＊ ＊
古くから、邪気を払い1年を健康に過ごせるようにと願いが込められてきた、春の七草のひとつ「薺」。読み方から書き方、花言葉、英語表記について紹介してきました。
身の回りで見つけられる野草だったのに、そこまで知らなかったという人もいるはず。身近な存在だからこそ大切に扱っておきたいですね。
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