メジャーデビュー10周年を迎えたナオト・インティライミさんの衝撃のデビュー秘話を語ります!
◆Guest Musician:ナオト・インティライミ
なおと・いんてぃらいみ/ソロ活動を続ける中で、’09年にコーラス&ギターでMr.Childrenのツアーサポートメンバーに抜擢され、2010年にシングル『カーニバる?』でメジャーデビュー。’12年、NHK紅白歌合戦に初出場。’17年に再び原点回帰の旅に出て、帰国後は音楽活動のほか俳優業にも挑戦。’19年には世界三大レーベルのひとつ「ユニバーサルミュージック ラテン」から〝Naoto〟名義で世界デビューを果たす。今年、デビュー10周年記念のベストアルバムをリリースし全国ツアーも開催中。
「なにしろ聴いてほしかった!」。ダビング工場と化した自宅で制作した曲を自ら宣伝・販売した学生時代
サッシャさん(以下、S):今年はデビュー10周年ということで、おめでとうございます!
ナオトさん(以下、N):ありがとうございます!
S:10周年と言っても、“3度目のデビュー”からの10周年ですよね? ナオトさんの最初のデビューは大学在学中。これまで決して平坦な道ではなかったことが想像できます。はじめにナオトさんがミュージシャンを目指したきっかけをおうかがいできますか?
N:子供のころから歌うことはすごく好きで、学校の掃除時間に歌ったりしては、先生に怒られていました。歌いすぎで声が枯れていて、常にハスキーな少年でした。まぁ、よくしゃべっていたから説もありますけど(笑)。めちゃくちゃ歌がうまかったわけではないんですけど、光GENJIとかマイケル・ジャクソンとかの新曲が出ると、すぐに覚えて歌っていた少年でしたね。
S:歌うことが楽しい、好きっていう純粋な気持ちが強かったんですね。
N:でも、そのころは自分がミュージシャンになるなんて全然思っていなくて、サッカーがいちばんでした。中2くらいからかな? ギターで曲をつくり始めたんです。
S:ギターはだれかに教わったんですか?
N:サッカー友達の家に泊まりにいったときに、その友達が長渕 剛さんの『乾杯』をギターで弾き語りしてくれたのが、めちゃくちゃかっこよくて! 「おいおい! あいつにできて、オレにできないわけねーじゃねーか」って、教えてもらったんです。そこで覚えたコードで、1ヶ月後には曲をつくり始めて。それぐらいの時期から、だんだん音楽の夢が大きくなってきたと思います。高1の春には「音楽で食べていく」って決めていました。
S:両方やることは考えなかったですか?
N:サッカーも高3の選手権(全国高等学校サッカー選手権大会)までは続けていたんです。でも、「プロとは、その道以外のすべての可能性を捨てることだ」っていう言葉に出合って、音楽の道1本に決めました。もちろん並行してできる人もいると思うけれど、やっぱりそこに時間と精神をつぎ込むことが大切だと思って。
S:曲づくりはどんな風に?
N:中2から音楽をつくり始めて、高1のときには、すでに20曲くらいのオリジナル曲のストックがありました。
S:え! 全部オリジナルですか!? それはすごい。でも、今みたいに簡単に世に送り出せる時代ではなかったと思うのですが。
N:そう、そんな時代じゃない(笑)! 〝超〟手仕事でした。家がダビング工場みたいで、兄のCDラジカセで自作した曲をダビングして。僕の真のファーストアルバムとされる15曲入りのカセットテープを300円で販売したんです。全部手書きのタイトル入りで。
S:それはストリートで売っていたんですか?
N:ストリートもあります。あとは… 友達に押し売り(笑)。
S:(爆笑)押し売りは冗談だと思いますが、どうやって買ってもらうんですか!?
N:リリースする1週間前にクラスに予約票を回すんです。で、発売日になったらAからF組まで全部回って、「今日僕のファーストアルバムがリリースされまーす。だれか買いたい人〜!」って、ダンボールにカセットテープ入れて売ってました。
S:すごい〜!!
N:高1で150本、高2で450本、高3で850本を売りました。
S:どうやって制作していたんですか?
N:カセットMTRっていう、一度に4チャンネルを録音することができる機材をお年玉で買ったりして、少しずつ機材を駆使するようにしました。テープを売って稼いだお金は絶対に遊びには使わないで、次の音楽制作の準備に当てていたかなあ~。大学に入ってからはバンドを組んで、今度はCDをつくって。それはストリートで3000枚くらい売ったかな?
S:そのCDも手づくり?
N:そう。でも、その頃にはCD-Rに焼けるようになったから早くなったんです。
S:CDもタイトルは手書きですか?
N:それはさすがに印刷しましたよ(笑)。なにしろ人に聴かせたかった。大学に入学して最初の1〜2週間は、入る気もないのに、サークルのお花見とか新歓コンパとかに参加して、自分のテープを宣伝しまくるの(笑)。そして隣に座った子に聴かせまくるの(笑)。
S:「恥ずかしい」とか「どう思われるか」っていう、人の目を気にすることはなかったですか?
N:それがなかったんですよね。「プロになるためにできることを全部やる」って思いでした。動きまくって、人に絡みまくる。そうしたらいつかデビューできるはずだって、信じて疑わなかったです。
待望のCDデビューから、まさかの引きこもり生活へ!?
S:そうしたアクションが形になったのはいつごろでしょう?
N:最初にレコード会社と契約したのが大学4年の時だったから、ちょうど20年前ですね。
S:最初にお話をもらったときは、どんな思いでしたか?
N:きた! と。報われた! と。できることをすべてやれば道は開けて行くんだと、ものすごい自信になりました。でも、しばらくはCDデビューにまで至らなくて、「いるのかいらないのかハッキリしてくれ!」とやきもきしていました。
そこでレコード会社の人に、白黒ハッキリさせるために「もうライブを観て決めてほしい」とお願いして、「Shibuya O-WEST(現:TSUTAYA O-WEST)」でライブをしました。500人くらい入るライブハウスを満席にして、ようやく翌月にCDデビューが決まったんです。
S:おお〜! やっと夢が叶った!
N:でも『ミュージックステーション』に出て、武道館でライブをしてっていうスター街道を想像していたんですけれど… 全くの無風でしたね。1年くらい経ってから、思い描いていたものと違うことに気づいて…。遅いよね、気づくの。
S:そんなことないです! 一生懸命走っていたんですから。
N:そうこうしていたら所属事務所が潰れてしまって…。そこからですかね、自分を閉ざしていったのは。周囲にも「ビッグになる!」って公言していたし、でも自分としてはそれだけのことをやっていた自信もあったし、悶々としていた時期です。
「マジ見てろよ!」って勇んでいたのに、蓋を開けたらまったく売れない。もう恥ずかしくて、みんなに合わせる顔がなかったです。親にも友達にも、だれにも会えないっていう8ヶ月間の引きこもり期がありました。
S:今のナオトさんからは想像もできない…。
N:亀戸で8ヶ月間。週1回スーパーで食料(レトルト食品)を買いに出るだけの日々。
S:それで、このままの生活ではよくないと、一念発起して旅に出たんですね。
N:そうそう!
S:でも、引きこもりから海外へバックパック旅って、少し急展開な気もしますが。
N:20歳のときに初めてアメリカを訪れて、その後もタイ、ケニア、ブラジルと1ヶ月単位でバックパックしていたから、旅というものがどのくらいの奇跡をもたらして、自分の心に革命を起こすものかっていうのは肌で感じていたんですよね。だから、これは再び旅に出るしかないと。
1回目のデビューでダメだったやつが、同じ状態で2回目に臨んだところでうまくいくはずがないだろうって。音楽はもちろん、人間としてもいろいろなものを吸収しないと、2回目もうまくいくはずがないって感じていました。
じゃあ具体的にどうする? って考えたときに、部屋の中に飾ってあった「2010年ワールドツアーをする」っていう貼り紙が目に入って、そこで改めて自分の夢と向き合おうと。ワールドツアーしたいんだったら、その下見に世界を旅しに行こうじゃないかっていう思いで、全財産かき集めて2003年8月に日本を飛び立ちました。
S:なるほど! ワールドツアーの下見も兼ねたんですね。
<Vol.2へ続きます>
ナオト・インティライミの軌跡
2001年 大学4年生のときに〝なおと〟名義でメジャーデビュー。
2003年 ワールドツアーの下見のため世界28か国の旅をする。
2005年 旅から帰国後、〝ナオト・インティライミ〟名義で活動を再開。ソロ活動を続ける中で、サッカーを介してMr.Childrenの桜井和寿氏と出会う。
2009年 「ap bank fes ’08」にMr.Childrenのコーラスとして参加し、翌年のライブツアーにも同行する。
2010年 ユニバーサルシグマからメジャーレーベル初のシングル『カーニバる?』をリリース。
2012年 3rdアルバム『風歌キャラバン』が自身初となるオリコン・ウィークリーチャート1位を獲得し、同年にはNHK紅白歌合戦に初出場する。
2015年 初のベストアルバム『THE BEST!』をリリース。
2017年 原点回のため再び世界19か国の旅に出る。7月10日(ナオトの日)のスペシャルLIVEで完全復活。俳優業としてドラマ『コウノドリ」(TBS)にも出演。
2019年 世界三大レーベルのひとつユニバーサルミュージック ラテンから〝Naoto〟名義で世界デビュー。
2020年 予定していた10周年イヤーを2021年に延期することを発表。
2021年 10周年ベストアルバムのリリースに先駆け、『たいせつな』『あらら れれれ るるりら』の配信シングルを7月10日に発表。10月7日には初のEPというスタイルで『オモワクドオリ』をリリース。
【Information】10周年記念ベストアルバム『The Best – 10th Anniversary-』が好評発売中!
1年越しとなったメジャー・デビュー10周年を記念したベスト盤。『タカラモノ~この声がなくなるまで~』『いつかきっと』などのヒット曲を収録した「BEST」と、ライヴ定番曲や隠れた名曲などを収録した「MUST」の2枚組。/¥3,520(通常盤)、¥13,970(初回限定ファンクラブ盤) ユニバーサルシグマ
【ナオト・インティライミさん】すべてスタイリスト私物
【サッシャさん】ジャケット¥264,000・パンツ¥27,500(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン〈イザイア〉) その他/スタイリスト私物
撮影/高木亜麗 スタイリスト/三島和也(Tatanca/ナオトさん分)、久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/高桑里圭(ナオトさん分)、渋谷謙太郎(SUNVALLEY/サッシャさん分) 構成/宮田典子(HATSU)
Navigator:サッシャ
1976年、ドイツ・フランクフルト生まれ。10歳のときに日本に移住。日本語、ドイツ語、英語のトライリンガル。J-WAVE『STEP ONE』ナビゲーター、『ズームイン!! サタデー』『金曜ロードショー』(日本テレビ系)などにレギュラー出演するほか、各種スポーツ実況をはじめ、多方面で活躍中。