10周年記念のベストアルバムをリリースしたナオト・インティライミさんが語る、メジャーデビューまでの険しい道のり
◆Guest Musician:ナオト・インティライミ
なおと・いんてぃらいみ/ソロ活動を続ける中で、’09年にコーラス&ギターでMr.Childrenのツアーサポートメンバーに抜擢され、2010年にシングル『カーニバる?』でメジャーデビュー。’12年、NHK紅白歌合戦に初出場。’17年に再び原点回帰の旅に出て、帰国後は音楽活動のほか俳優業にも挑戦。’19年には世界三大レーベルのひとつ「ユニバーサルミュージック ラテン」から〝Naoto〟名義で世界デビューを果たす。今年、デビュー10周年記念のベストアルバムをリリースし全国ツアーも開催中。
世界一周旅での日々をつづった旅日記が思わぬ縁を引き寄せる
S:日本を旅立つに当たって、マンションは引き払ったんですか?
N:マンションじゃなくて、家賃3万8千円の亀戸の団地でしたけれどね(笑)。
S:まず向かったのがどちらですか?
N:タイの予定だったんですけれど、飛行機に乗り遅れて香港からのスタートです(笑)。
S:いきなりつまづいた(笑)!?
N:世界一周の旅に出るぜ! ってなって、最初のフライトに乗り遅れる人っていないですよね(笑)? 香港のあとは、タイ、インド、トルコ、シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナ、イスラエル、エジプト、スペイン、ポルトガル、モロッコ、フランス、イギリス、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、キューバ、ジャマイカ、メキシコ、アメリカ、そして日本も含めて28か国を7 ヶ月間のつもりで行ったら、うっかり1年半の旅でした(笑)。
S:ははは(笑)! 次に行く場所っていうのは、その土地でいろいろな人と出会う中で決めていくのですか?
N:そうですね。まず入国したら、この国でいちばんチープなゲストハウスは、どこかってリサーチするんです。出会った人に「はなす」ボタンを押して聞いていく感じで、もうリアルドラクエの世界観だよね(笑)。
S:確かに(笑)。村人に聞いて、安い宿を見つけるみたいなね。
N:当時はWi-Fiとかないでしょう。何十冊も『地球の歩き方』をもっていけないし。
S:スマホもないですしね。インターネットを繋げずにサバイブした最後の世代ですよね、きっと。1年半かけた世界旅から戻ってきて、本になりましたよね。出版することになった経緯はどんなものだったんですか?
N:特に出版の予定もなく旅には出たんですが、「これは書いておけば、いつか本になるんじゃないか?」と思って、めちゃくちゃ書き溜めていたんです。
S:え〜、旅日記を!?
N:ノートにも書いていましたけど、当時はパソコンもスマホもないから、週一回ネットカフェに行ってブログにアップしてたんです。そうしたら、帰国後、あるラジオ番組にゲスト出演させていただいたときに、偶然、出版社の方に声をかけていただいて。
その回は、当初ゲストだった方が急に来られなくなってしまって、僕はその方の代理だったんです。ただ、ちょうど旅から帰ってきたばかりだったので、ずっとその話をしたんですよね。そうしたら、もうひとりのゲストの方に付き添いでいらしていた出版社の方が「旅の話、めちゃくちゃ面白かったよ!」って声をかけていただいて。「今から書ける?」って言われたんですけど、「こんなことがあるんじゃなかろうかと思って、全部書いてあるんです」と売り込んで(笑)。
S:さすがです(笑)!
N:早速、その日の夜に旅日記を出版社の方に送ろうと思ったら、本10冊分はあるんじゃないかってくらいの膨大なデータ量になっていて、担当者も若干引き気味で「今から読みます…」って(笑)。
S:すごい展開ですね! 担当者もびっくりですよ、それは!
N:最終的には上・下巻になりました。
Mr.Childrenの桜井和寿さんとの出会いがターニングポイント! 3度目のデビューへ
S:本を出版後、ミュージシャンとしての活動はどのように始動したんですか?
N:サッカー仲間を介して、ラジオのパーソナリティの話をいただいたんです。もちろんラジオは好きでしたけれど、音楽をやりたい気持ちが強かったから、最初は迷って…。話すことは嫌いじゃないけど、このままそっちの世界に染まるのが怖い…、でもそんなこと言っていられる状況じゃない、みたいな感じで。2〜3日時間をもらって悩んだんです。結局「ありがとうございます! やらしていただきます」って返事をしたんですけど、実はパーソナリティ決定ではなく、あくまでオーディションのお誘いだったの。
S:(大爆笑)オーディションのエントリーだけで3日も悩んだの!?
N:「ですよね〜」って、「いきなりパーソナリティって、そんな甘くないですよね〜」って。とはいえ、オーディションなんて行ったことないから緊張しちゃって。いざ当日、控室でガチガチの僕にめちゃくちゃ雰囲気のある男性が近づいてきて、「何? 君もオーディション受けに来たの?」(ナオトさん、謎のイケボ)って声かけられて。自分「あ、はい!」ってなって、「ま、せいぜい頑張ってね」(再びイケボ)って言われたんです。
S:何者〜(大爆笑)!?
N:嫌なやつって思いましたよね(笑)。最終選考まで残ったのは僕とその方で…。スタジオですれ違うときに、こうスローモーションになって…。〜〜スターンスターンスターン、カツーンカツーンカツーン(効果音付きジェスチャー中)〜〜「きみ、残ってたんだ」(例のイケボ)って。そんなドラマみたいな展開あります(笑)!?
S:超ヒールキャラじゃないですか(大爆笑)!
N:結局は僕がありがたくも受かりまして。
S:その人はじゃあ「残んなかったんだ」(サッシャさんまでイケボ)。
N:え!? サッシャさんじゃないよね、ちなみに?
S:違う、違う、冗談(笑)。
N:だよね、ジェントルだもんね(笑)。そんな訳で、ありがたく1年半、ラジオのパーソナリティとして3時間の生放送を務めさせていただきました。皮肉にも活躍しているミュージシャンたちを迎える側っていうね。
S:そうですよね。
N:その後、いろいろな縁が繋がって2回目のデビューをさせてもらったんですけれど、また事務所がつぶれてしまって。再び引きこもってもおかしくない状況だったんですけど、世界一周旅でタフネスを培うことができたのと、一回ダメになった経験値もあってか、それでも「自分のやりたいことを表現していけば、いつか必ず何かが起こる」と信じることができて、再び一からライブの動員を増やそうと前に進めました。
S:その流れでMr.Childrenの桜井(和寿)さんに出会えたことは、ひとつの転機でしたか?
N:それは間違いないですね。サッカーを通じて桜井さんに出会うことができて、本当に感謝しています。初めて会ったとき、こんな機会はもうないと思って「僕の歌、聴いてください!」って、CDを渡しました。それから毎週サッカーで会うことになるんですけど(笑)。でも、それがきっかけでミスチルのツアーにコーラスとギターで参加できることになって。
S:学生時代に、本気でサッカーに打ち込んでいたことが要所要所で実を結んでいますが、今回は3度目のデビューに繋がるわけですね。
N:そうですね、でもミスチルのコーラスをできるからといって、ミスチルと同じ事務所に自分が〝ソロアーティスト〟として契約できるかというのは、また別の話で。ここでも自分のライブを見て決めてもらいました。そのときに、桜井さんやミスチルの事務所の方も来てくれて、仮契約に結びつきました。
S:ただ待つのではなくて、自ら行動することで結果を引き寄せたんですね。
N:その後、仮契約から本契約に進んで、ようやく3度目のCDデビューの準備が始まるんです。
<Vol.3へ続きます>
【Information】10周年記念ベストアルバム『The Best – 10th Anniversary-』が好評発売中!
1年越しとなったメジャー・デビュー10周年を記念したベスト盤。『タカラモノ~この声がなくなるまで~』『いつかきっと』などのヒット曲を収録した「BEST」と、ライヴ定番曲や隠れた名曲などを収録した「MUST」の2枚組。/¥3,520(通常盤)、¥13,970(初回限定ファンクラブ盤) ユニバーサルシグマ
【ナオト・インティライミさん】すべてスタイリスト私物
【サッシャさん】ジャケット¥264,000・パンツ¥27,500(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン〈イザイア〉) その他/スタイリスト私物
撮影/高木亜麗 スタイリスト/三島和也(Tatanca/ナオトさん分)、久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/高桑里圭(ナオトさん分)、渋谷謙太郎(SUNVALLEY/サッシャさん分) 構成/宮田典子(HATSU)
Navigator:サッシャ
1976年、ドイツ・フランクフルト生まれ。10歳のときに日本に移住。日本語、ドイツ語、英語のトライリンガル。J-WAVE『STEP ONE』ナビゲーター、『ズームイン!! サタデー』『金曜ロードショー』(日本テレビ系)などにレギュラー出演するほか、各種スポーツ実況をはじめ、多方面で活躍中。