今後の人生を豊かに過ごせるのは「音声メディア」を制する者!
音声SNSの空前のブームが到来! より生活を充実させるツールとして注目が高まってきています。ラジオDJ/タレントのサッシャさんに、Clubhouseをはじめとする「音声メディア」の魅力について教えてもらいました。
ラジオDJ/タレント サッシャさん
1976年、ドイツ・フランクフルト生まれ。数々の音楽番組のほか、モータースポーツ、ツール・ド・フランスなどの実況を担当、イベントMCとしても活躍。ITにも詳しい。J-WAVE『STEP ONE』、日本テレビ『ズームイン!! サタデー』、『金曜ロードショー』などにレギュラー出演中。オフィシャルHP:sascha348.com
楽しいだけじゃない!〝ためになる〟音声SNS
Oggi編集部(以下Oggi) 音声SNS「Clubhouse」が大ブームになりましたね。友達にも会えない中、音声でつながれるのは新鮮でした。とはいえ、楽しみ方がまだよくわからず…(苦笑)。
サッシャさん(以下敬称略) アンドロイド版はまだリリースされていませんし、招待枠が行きわたって多くの人の生活に定着するのは、これからかもしれませんね。
Oggi 最初は、芸能人の方々の会話を「この人とこの人、友達だったの!?」なんて盗み聞き感覚で楽しんでいました。
サッシャ タレントさんたちも雑談に飢えていたんでしょう(笑)。ちなみに僕も書道家の方と話していたら、人気俳優さんが入ってこられて驚きました。「飲み会を開いても、このおふたりを同時に誘うことはない」というメンバーが居合わせる、〝偶然性〟が楽しめるのはClubhouseならでは!
Oggi あらかじめメンバーが決まっているLINEなどのグループ通話と違って、友達のroomに入ったらその友達とも話せる、異業種交流会のような出会いはありますね。著名人のroomで手を挙げれば本人と話せるかもしれない、と期待してしまうくらいの距離の近さもうれしいです(笑)
サッシャ ただ、「Clubhouseで聞いたことは口外しない」というルールが守られているとは言い難くて、炎上トラブルもチラホラ。YouTubeのような収益性も確立していないので、タレントさんがClubhouseに登場する機会は、今後減っていくかもしれません。
Oggi サッシャさんご自身はどんなふうに楽しんでいますか?
サッシャ 僕は、実業家や専門家の方の話を、セミナーや勉強感覚で聞いています。マイクロソフト日本法人の初代社長を務めた古川 亨(すすむ)さんのroomでアメリカの音声メディア事情について学んだり、ニッチな業界の裏話を聞いたり。もし看護師の方がコロナ病棟の現状を話してくれたりしたら、ぜひ聞いてみたい! アメリカでも、投資のテクニックを専門家が教えるroomや、人生相談roomなどが人気のようです。
Oggi 学びにもなるんですね。
コロナ禍で音声メディアが一躍注目を集めた理由は…
サッシャ Clubhouseが流行った大きな理由のひとつは、バックグラウンド再生ができることだと思うんです。Clubhouseのアプリを閉じて、TwitterやLINEをしながらでもClubhouseが聞ける。ラジオをはじめとする、音で伝える音声メディア全体に言えることですが、いわば〝可処分時間〟を増やしてくれるメディアなんです。ほかのメディアが可処分時間の奪い合いだったのと対照的で、目は動画や画像、テキストを見るのに忙しくても、耳は空いてた! みたいな。
Oggi 移動しながらでも家事をしながらでも、状況によっては在宅ワークをしながらでも、音声メディアは聞けますもんね。
サッシャ いちばん古いと考えられていたメディアが、実はいちばん新しい時代になった気がします。ラジオ番組をスマホやPCで、好きなときに聞けるインターネットラジオ「radiko」は、昨年の緊急事態宣言発令後、利用者が急増しました。僕は月〜木曜日の昼、J-WAVEの番組でナビゲーターを務めていますが、お仕事時間に聞いてくださる方や、Oggi世代のような若いリスナーが明らかに増えたという手ごたえも感じます。
Oggi Clubhouse以前に、音声メディアの魅力に多くの人が気づくきっかけがあったんですね。ほかには、どのような音声メディアがあるんでしょう?
サッシャ ラジオ感覚で聞けるものとしては、ポッドキャストがあります。音声コンテンツをサーバーにUPすると、複数の配信サービスに配信されて、リスナーは好きなときに再生できるというシステム。音声メディアでも、スポーツ中継など一部の「ライブでなきゃ!」というコンテンツ以外は、自分のタイミングで能動的に取りにいくスタイルが主流になりつつありますね。リアルタイムでしか聞けないClubhouseはそれを逆手にとって、希少性を高めたサービス設計がウケたわけですが。
Oggi なるほど。ちなみに、ポッドキャストではどんな番組が人気なんですか?
サッシャ 英語学習系の番組が根強い人気のほか、kemioさんなどいわゆるインフルエンサーによるオリジナル番組、声優さんによる裏話、ラジオ局が制作したスピンオフ番組などもありますね。
Oggi ジャンルが幅広い!
サッシャ 日本でもだいぶリスナーが増えてきましたが、アメリカでは日本とは比にならないほど、盛り上がっているんですよ。もうひとつ、日本ではそれほど定着していないけれど、アメリカで急成長しているのがオーディオブック。
Oggi 本を朗読してくれるサービスですよね。ジョギング中や、車を運転しながらでも本が楽しめたら、確かにいいかも!
サッシャ 欧米のビジネスパーソンは、大人になってから日本人よりはるかに勉強するんです。それとは別に、気軽に発信できる音声メディアとしては、ひとつのアプリで収録も配信も完結する、音声配信プラットフォームもあります。著名人の配信も多いですが、一般の方がラジオのようにおしゃべりしているチャンネルも多いですよ。
〝声で発信する〟ことは働く女性にも役に立つ…!?
Oggi 音声メディアは〝聞く〟だけではなく、〝発信する〟メディアとしても存在感が増しているんですね。「話すのは得意じゃないし…」などと尻込みしてしまう人も多いかもしれませんが。
サッシャ 話が上手ではなくても中身があれば大丈夫。テーマをはっきりさせて、好きなこと、友達と話が尽きないことについてしゃべってみたら面白いと思います。ひとりでしゃべるのが難しかったら友達と一緒に、たとえば好きなファッションブランドについて話してみたり。そこから同じ趣味の人とつながったり、そのブランドの人が聞いていて、新作展示会にお声がかかることだってあるかもしれません。
Oggi 気分が上がりますね!
サッシャ 仕事でも、人前で話したり、プレゼンしたりするときの勉強になると思いますよ。うまくいけば副業につながる可能性だってあるかも? ひとりでいくら練習しても、本番の場数を踏むことでしか学べないことってあるんです。とっさの対応力とか間のとり方とか。発信して初めて感じた疑問を胸に、話が上手な人の配信を改めて聞くと、新たな気づきがあると思います。あと大事なのは、噓を言わないこと!
Oggi 噓、ですか…!?
サッシャ 長年ラジオのDJをやっていますが、思ってもいないのにノリで「おいしい!」「この曲最高!」などと褒めないようにしています。リスナーさんとの信頼関係は裏切りたくないし、本心で思っていないことは伝わると思うんですよ。だからといって好みではないものを否定する必要はなくて、いいところを見つけて「酸味がきいてますね」とか「イントロがいい!」などと言えばいい。YouTubeでも、生き残っているのは本音で話している人たちですよね。
Oggi ちなみに今後、YouTuberのように、人気が出て、すごく稼ぐスターは音声メディアでも現れると思いますか?
サッシャ アメリカでは現に、ポッドキャスト番組にスポンサーをつけて大成功している人もいます。Clubhouseはマネタイズの仕組みが今後どうなるかわかりませんが、進行役に徹する〝スターモデレーター〟も登場しているとか。
Oggi 夢がありますね(笑)。
サッシャ リスナーの属性や位置情報に応じてパーソナライズされる音声広告は、アメリカではすでに始まっていますし、日本でも徐々に普及していくでしょう。急成長している音声メディアは、リスナーとしてもスピーカーとしても、使わない手はないですよ!
【音声メディア】どんな種類・サービスがあるの?
ポッドキャスト
▲Apple Podcasts
iPod+broadcastからなる造語で、当初はAppleが配信。'18年にGoogle、その後は音楽配信サービスもポッドキャストに参入し、さまざまなアプリで聞けるように。
オーディオブック
▲Audible
世界数百万人が利用。コンテンツ数は約40万(うち日本語は約1.8万)。聴き放題のポッドキャストも。月1,500円(税込・無料体験あり)。
▲audiobook.jp
会員数180万人超、日本最大級のサービス。聴き放題プラン(月750円/税込・30日間無料)が人気。1冊ごとの購入も可能。
音声SNS
▲Clubhouse
招待制の音声SNS。話の内容をほかのユーザーも聞くことができ、主催者が許可すればスピーカーとして参加もできる。
▲Discord
もともとはゲームをしながら会話するためのチャットツール。操作性の高さからゲーム以外でも使われるように。利用者は1億人超。
インターネットラジオ
▲radiko
日本最大規模のインターネットラジオサービス。プレミアム会員登録(月385円/税込)すれば全国民放ラジオ全99局の番組が聞ける。
▲ラジオクラウド
全国約70局のラジオ番組(一部)がアーカイブされていて、コーナーごとのDLや再生速度の調整も可能。オリジナルコンテンツも。
音声配信プラットフォーム
▲Voicy
ビジネス系から芸能人まで、500以上のチャンネルを公開。新聞記事の読み上げチャンネルも。配信するパーソナリティは審査制。
▲stand.fm
だれでも簡単に配信でき、月間配信数は約15万本(’20年11月)。オリジナルBGMが使え、お便りを募集できるレター機能も人気。
●掲載している情報は2021年3月11日現在の情報です。
2021年Oggi5月号「Oggi大学」より
イラスト/八重樫王朝 構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部