上手にお金とつきあっていい自己投資ができる人になりたい
シンプルに貯蓄を増やすためにも、また自分を高めるためにも感覚を養っておきたいお金の使い方。新たなお金の価値観に刺激をもらえる一冊とは?
人気作家が教える合理的で楽しい自己投資のあり方
『お金の減らし方』
世の中にはお金を増やすノウハウを紹介した書籍がたくさんある。でも余剰資金がない人にとってはリスクが高い、もしくは現実味を感じられないものがほとんどだ。
森博嗣の『お金の減らし方』も、職業や年収が特殊な事例で参考にならないように思える。工学博士が小説を書いて20億円を超える収入を得たというのだから。しかし、実際に読んでみると、合理的かつ普遍的な自己投資のあり方を説いた本だとわかるのだ。
森さんは作家として成功する前から、収入の1割を自由に使っていた。妻にも1割を渡し「欲しいものはなんでも買えばいい、でも必要なものはできるだけ我慢をすること」と伝えたのだという。大半の人は必要なものを買い、欲しいものはできるだけ我慢しているのではないだろうか。
森さん曰く、必要と思ったものは、今持っていなくても過ごせている時点で不要なものかもしれないという。欲しいものを買ったほうが心の満足度は高い。大事なのは、他人や社会の評価に左右されず、自分が本当に欲しいものかどうかを吟味すること、できる限り一時的な価値ではなく、将来につながる価値を求めること。
買った瞬間だけ気持ちいいものに対して、お金を減らすのはもったいない。「お金というのは、自分の未来の可能性を考えるツールの一つ」だから。
森さんは趣味の模型で遊ぶ場所を得るために、借金せず収入を増やす方法として、小説を書くことを選んだ。そして手に入れたものを長く楽しみながら暮らしているところがいい。お金の使い方のみならず、自分で人生をデザインする方法を教えてくれる本だ。
『お金の減らし方』(SB新書)
著/森 博嗣
著者は小説『すべてがFになる』『スカイ・クロラ』などで知られる人気作家。国立大学教官の給料だけで生活していたときは、500円玉貯金をして欲しいものを買っていた。しかし、現在は1日に約45分ほどしか作家の仕事をせず、あとは広大な土地で遊んでいるという。そんな著者の新たなるお金の価値観をまとめた一冊。
新1万円札に描かれる「日本実業界の父」の言葉
『現代語訳 論語と算盤』
2024年に紙幣のデザインが変わる。1万円札に描かれる人物が明治から昭和にかけて多くの企業の設立に関わり「日本実業界の父」と呼ばれる渋沢栄一だ。守屋 淳が訳した『現代語訳 論語と算盤』は、渋沢栄一の語録を今の読者に対してもわかりやすい言葉でまとめている。
渋沢栄一という人は、道徳と経済の両方を同じくらい重んじた。「論語と算盤」というタイトルは、その思想の肝を表現しているのだ。お金の真の価値や欲望に迷わない方法について、時代を問わず通じる教え、が語られている。
『現代語訳 論語と算盤』(ちくま新書)
著/渋沢栄一 訳/守屋 淳
渋沢栄一は大蔵官僚を経て第一国立銀行の頭取になり、日本に資本主義を根づかせた実業家。道徳経済合一説を唱え、王子製紙、東京海上火災、日本郵船、東京電力、東京ガス、帝国ホテルなど、約480社の設立に関わった。お金の使い方については、主に第4章「仁義と富貴」で語られる。
2020年Oggi11月号「『女』を読む」より
構成/正木 爽・宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部
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石井千湖
いしい・ちこ/書評家。大学卒業後、約8年間の書店勤務を経て、現在は新聞や雑誌で主に小説を紹介している。著書に『文豪たちの友情』、共著に『世界の8大文学賞』『きっとあなたは、あの本が好き。』がある(すべて立東舎)。