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LIFESTYLE

2021.01.01

2021年、攻めの一年にする勇気がほしい… 嫌いなものまで糧にすれば自分の強みに!

書評家の石井千湖さんが、テーマごとにおすすめ本を紹介してくれる人気連載。「私、このままでいいのかな」そんな漠然とした不安が湧いてきたときに読みたい本は?

最近、守りに入っている気が…。もしかして、私の人生ってつまらない!?

事も人生も穏やかな日々。しかし、突如湧き起こる「私、このままでいいの!?」という不安。現状に甘んじてつまらない人生なのではとモヤモヤする気持ち、どうしたらいい?

フェミニズム批評という面白く攻められる思考ツール

『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』

自分の心身の健康を保つためなら、守りに入るのはまったく悪いことではない。ただ、攻撃が最大の防御になる場合もある。それゆえに、頭の中の武器は手入れしておきたい。というわけで、まずおすすめしたいのが北村紗衣の『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』だ。

年間約100本の映画と約100本の舞台を観て、260冊くらい本を読むという自称「不真面目な批評家」北村さんの批評集。まず読み物として面白く、自分という狭い檻の中に閉じ込められた思考を解放する手伝いもしてくれる。

北村さんが自らの檻を破る道具として選択したフェミニズム批評は、これまでの批評が実は男子文化だったというところに立脚し、女性にも楽しめる読み方を提供する。

『ローマの休日』と『キングスマン』という新旧のヒット映画を例に挙げて、なぜ男性はお姫様が好きなのかを考察した「プリンセスは男のロマン!」、『シンデレラ』の源流にあるたくましい民話のヒロインたちを紹介した「ディズニーに乗っ取られたシンデレラ」など、知っている作品でも未知の作品でも鑑賞したくなる。

芸術に限らず、物事の見方の参考にしたいのが「ユートピアとディストピアについて考えよう」だ。北村さんは高校時代に読んだディストピア小説『すばらしい新世界』がなぜ嫌いなのかを分析する。何かを「イヤだな」と感じたときに、自分の気持ちをおさえつけず、理由を掘り下げていくすると思いがけない発見がある。嫌いなものまで糧にすることができたら、何か戦わなければならない対象に出くわしたときに、強みになるのではないか。

お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』(書肆侃侃房)
著/北村紗衣
著者は1983年生まれで、武蔵大学人文学部英語英米文化学科准教授。『嵐が丘』の登場人物のセクシーな関係性、『二十日鼠と人間』や『ワーニャ伯父さん』の「キモくて金のないおっさん」など、名作文学からハリウッド映画まで明快な文章で深く読み解く。

守りとは無縁の人生を歩んだ女性の思想を知る

『伊藤野枝集』

明治44年に創刊された日本初の女性向け文芸誌『青鞜』で活躍し、夫と子供と別れて社会運動に身を投じ、28歳の若さで憲兵隊に殺された伊藤野枝。守りとは無縁の人生を歩んだ女性の思想に触れられる一冊が、森 まゆみが編集した『伊藤野枝集』だ。

女性解放活動家でもあった平塚らいてうをはじめ『青鞜』の仲間たちの情熱的な日常を描いた創作「雑音」。自分たちが理想とする権力も支配も命令もない相互扶助社会は、実現不可能ではないことを訴える論文「無政府の事実」など、率直で純粋な言葉に心を揺さぶられる。

伊藤野枝集』(岩波文庫)
編/森 まゆみ
現在ではなかなか入手しづらい伊藤野枝の著作から選りすぐった、創作・評論・書簡をまとめた本。ケエツブロウという海鳥にわが心を託した詩「東の渚」や小説家・木村荘太の恋文に対する返信など、野枝の魅力が詰まっている。巻末には編者による小伝も収める。

2020年Oggi1月号「『女』を読む」より
撮影/よねくらりょう 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部

TOP画像/(c)Shutterstock.com

石井千湖

いしい・ちこ/書評家。大学卒業後、約8年間の書店勤務を経て、現在は新聞や雑誌で主に小説を紹介している。著書に『文豪たちの友情』、共著に『世界の8大文学賞』『きっとあなたは、あの本が好き。』がある(すべて立東舎)。

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Oggi12月号で商品のブランド名に間違いがありました。114ページに掲載している赤のタートルニットのブランド名は、正しくは、エンリカになります。お詫びして訂正致します。
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