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LIFESTYLE

2021.01.02

ダイエットに疲れてしまったら… 食に喜びを見出し、生きる喜びに繫げよう!

書評家の石井千湖さんが、テーマごとにおすすめ本を紹介してくれる人気連載。今回は、食べることは尊いのだと再認識できる2冊。

食べることを心から楽しむにはどうしたらいい?

体重が気になって美味しいものを心から楽しめない…。忙しくてランチを抜くこともある…。生きる=生を営むこと。そんな当たり前に気づかされる2冊で、食べることを改めて楽しんで。

食と生きる喜びが繫がるエッセイ集

『ことばの食卓』

インスタグラムにほぼ毎日、晩ごはんの写真を上げている。記録してみると傾向が見えてきて、分量やバランスにも気を使うように。これ美味しかったな、と振り返ることが何より楽しい。一回一回の食事をより味わい深いものにするには、言葉で残すのもいいだろう。実際に食べものにまつわる記憶をつづったエッセイ集がある。武田百合子の『ことばの食卓』だ。

たとえば「枇杷」は、亡き夫で作家の武田泰淳氏と一緒に枇杷を食べたときの話。刺身のように薄く切った果肉を、もどかしげに口の中に押し込んだ夫の指の形や表情がユーモラスに描かれている。あまり上品な食べ方とは言えないけれど、食べたいものがちょうど食べたいタイミングで食べられる幸福に気づかされる。

「お弁当」は小学生時代のお弁当の思い出話だ。煎り卵ともみ海苔を混ぜた「おべんと御飯」、おかかと海苔をごはんの間に敷いた「猫御飯」、あぶった油揚げにおしょうゆをまあるくまわしかけたもの…。戦時中で贅沢なおかずではないけれど、とても美味しそう。著者である百合子さんの天衣無縫な文章を読んでいると、食に喜びを見出すということは、生きる喜びに繫がるのだなと思う。

ことばの食卓』(筑摩書房)
著/武田百合子 絵/野中ユリ
著者は夫の死後に発表した『富士日記』が評判を呼び、随筆家として活躍。本書には14編の文章を収録。今年80歳になるという老女がうなぎを入れた小田巻蒸しについて熱心に語る「花の下」のように、小説として読めるものもある。野中ユリの挿画も美しい。

美味しくておしゃれなレシピコミック

『R先生のおやつ』

自分で美味しいものをつくれたら、食べることはもっと楽しくなるはず。雲田はること福田里香の共著『R先生のおやつ』は、初老のお菓子研究家・R先生と助手のKくんのおやつの時間を描いたレシピコミックだ。

粉に卵液を混ぜて膨らませるだけのポップオーバーから、ばらのデコレーションのカップケーキ、スウェーデン語で「夢」という意味をもつ名前のクッキーまで、手軽でありながらおしゃれなおやつのつくり方を紹介している。

それらを教えてくれるのが魅力的な男性というところもいい。いつも優しい笑顔で季節に合わせたおやつをふるまうR先生と、なんでもうれしそうに気持ちよく食べるKくんのコンビネーションは絶妙。

おやつは甘いものばかりとは限らない。「すいかとモッツァレラのサラダ」や、「半熟卵とコーンスープのジェラート」、「蒸し野菜のカレーディップ」など、甘党でなくても心ひかれるレシピがいっぱい登場する。実際につくってみて成功したら、きっと大好きなだれかに食べてもらいたくなるはず。

R先生のおやつ』(文藝春秋)
漫画/雲田はるこ レシピ/福田里香
漫画担当の雲田はるこは、ドラマ化されたベストセラーコミック『昭和元禄落語心中』の作者としても知られる。レシピ担当の福田里香は漫画批評の分野でも活躍するお菓子研究家。25のおやつのつくり方のほか、番外編の「R先生の台湾買い出し紀行」も収録。

2020年Oggi3月号「『女』を読む」より
撮影/よねくらりょう 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部

TOP画像/(c)Shutterstock.com

石井千湖

いしい・ちこ/書評家。大学卒業後、約8年間の書店勤務を経て、現在は新聞や雑誌で主に小説を紹介している。著書に『文豪たちの友情』、共著に『世界の8大文学賞』『きっとあなたは、あの本が好き。』がある(すべて立東舎)。

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Oggi12月号で商品のブランド名に間違いがありました。114ページに掲載している赤のタートルニットのブランド名は、正しくは、エンリカになります。お詫びして訂正致します。
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