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LIFESTYLE

2020.08.09

真っ赤なかき氷は“イチゴ味”かと思ったら、正体は意外なフルーツでした【連載・史上初かき氷小説作家の今日の一杯】

「食」に関する小説に特化した文庫レーベル「おいしい小説文庫」から発売された、史上初のかき氷小説『氷と蜜』の著者である佐久そるんさんが、ひんやりおいしいかき氷の世界に誘う食べ歩き連載。第7回目は、大阪府大阪市「かき氷研究所」です。

未来を感じる創作かき氷〈新人作家のかき氷探訪記〉

小説『氷と蜜』の著者、佐久そるんです。

かき氷が題材の『氷と蜜』には、数多くのかき氷のお店と、それを食べ歩く愛好家の人たちが登場します。大学生の主人公は、かき氷の削り手として奮闘しました。今回は小説の主人公と同じく、若い削り手さんをご紹介したいと思います。

関西のメディアで露出の多いスイーツレポーターの方が営んでいた『かき氷研究所』さん。

スイーツレポーターとしての知識と経験をつめ込んだかき氷は、ケーキのような甘い多層の氷で、ファンシーな見た目が特徴です。

2019年の春ごろに、新しい店長を募集されました。著名なスイーツレポーターのあとを引き継ぐのは相当なプレッシャーかと思われますが、手を挙げたのはなんと二十四歳の女性でした。

いただいたのはグァバのかき氷。じゅわっと果汁がほとばしる白桃の果実に、トロピカルな真っ赤なグァバのシロップがからむと心は南国、バカンス気分です。食べ進めると、鮮やかなピンクの層に変わります。ピタヤ(ドラゴンフルーツ)です。氷の中から現れたチーズのエスプーマと一緒に味わえば、旨みが増していきます。最後は香り立つオレンジのコンフィが、口の中を爽やかにしてくれました。

先代のときから何度か店を訪れていますが、これは師匠を超えちゃったのでは? と思わせる味の完成度でした。レシピは変わっていないと思うのですが、なぜでしょう?

▲先代のかき氷

他のかき氷も試してみましょうか。

ラム酒が華やかに香るのは、モンブランクリームのかき氷。さっぱりとしたカシスシロップ、サイコロ状にしたチーズケーキ、最後はアールグレイのシロップの味わいが豊かに広がります。見た目、味ともに、師匠の氷に引けを取りません。

ピスタチオクリームのかき氷はどうでしょうか? 普段はイチゴが飾られるけれど、今回は時期的なこともありチェリーに変わっていました。不思議なチェリーの飾り方はもちろん師匠ゆずり。ちょっと宇宙人っぽいです。ここは真似しなくても良いような気も……。

店主さんにお話を聞くと、お休みの日には全国各地のおいしいものを食べ歩いているそうです。そこで見たもの感じたものをもとに創作されていると仰っていました。

以前にいただいた味噌のかき氷が思い出されます。味噌は師匠が使っていなかった食材なので驚いたことを覚えています。日々進化するために努力されているのですね。自分も頑張らねばと刺激を受けました。

接客もより丁寧になったように感じています。以前はときおり聞こえる愛情のこもった叱咤激励に先代のプロ意識を感じることもありましたが、いまは女性二人で切り盛りしているためか、やわらいだ雰囲気がお店を包んでいます。受け継ぐだけにとどまらず、ご自身の経験と合わせて、技も心も昇華させつつあるのかもしれません。まだまだ変わっていきそうなお店ですね。

未来に飛び立つ一杯を、どうぞめしあがれ。

【かき氷研究所】
住所:大阪府大阪市西区新町1-9-14 2F
メニューや定休日は、公式インスタグラムをご確認ください

Instagram:@kakigorilaboratory

佐久そるん

大阪生まれ、大阪育ち。5年ほど前から小説の執筆をはじめる。2019年『氷と蜜』が第1回日本おいしい小説大賞の最終候補に選ばれ、刊行に向け改稿をスタート。2020年6月、同作で作家デビュー。かき氷の魅力が詰まっていると『氷と蜜』は話題に!

甘いものに目がなく、まめに食べ歩く。パンケーキ、パフェと続いてここ3年はかき氷にハマっている。コロナ禍の自粛期間中は和洋菓子をお取り寄せしてお店を応援。現在は再開したかき氷店へ著書を持って行脚の日々。

氷と蜜

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