一風変わった夏の風物詩〈新人作家のかき氷探訪記〉
小説『氷と蜜』の著者、佐久そるんです。かき氷を題材とした、わたしのデビュー作『氷と蜜』には、数多くのかき氷のお店と、それを食べ歩く愛好家の人たちが登場します。わたしも主人公と一緒に食べ歩いている気持ちになって、書かせていただきました。
じゃりじゃりっとした食感の氷に、赤や緑といったカラフルなシロップ。夜空に咲き乱れる花火を眺めながら、冷たい氷を口にする。かき氷と聞いて、みなさんが思い浮かべるのは、そんなイメージでしょうか。
素敵だと思います。
いまのかき氷はそこからちょっとばかり進化して、より儚く可愛らしい冷菓となりました。夏の風物詩から、日常に彩を添える削り氷へ。そんなかき氷の世界へ、みなさんをご招待します。
南国の風が香ってくるかのような趣きの店内。
ふわりとした口当たりは、まるで青空に浮かぶ雲をほおばったよう。
ベリー系の甘味におぼれるのは、大阪の福島区に店をかまえる『cafe12』さんのかき氷です。
◆cafe 12|かき氷
スプーンを手に、ほおばってみてください。可愛い見た目に反して、なかなかの量ですよ。陽気な店長の淹れてくれるお白湯で、ときおり体を温めながら食べすすめましょう。
小説の中で主人公たちは、ピスタチオとチェリーのかき氷を食べていました。香ばしさを残すピスタチオとチェリーの酸味が素敵な出会いを果たした、期間限定のかき氷です。
今回わたしも、期間限定のかき氷を楽しみに立ち寄りました。いただいたのは、黄色と赤色のかき氷。
マンゴーとストロベリーでしょうか?
それとも、パインとストロベリー?
違いました。
まさかの、コーンとストロベリーです!
この組み合わせには、さすがに驚かされました。ちょっと無理じゃないかな。出会わせるにもほどがあると。けれどその考えは、すぐに吹き飛びます。
ぷりぷりっと舌で弾けるコーンたち。にやけてゆるんだ頬を、ぴりりとした胡椒の刺激がしめてくれます。まろやかなコーンの甘味は、食べた人を童心に返らせてくれますよね。縁日でほおばった焼きトウモロコシのイメージでしょうか。
お店的には、浜辺のバーベキューかな?
そして不意打ちで出てくる、なめらかなジャムのような甘いストロベリー。
コーンとストロベリーの思いもよらない出会いに、心ときめいてしまいます。
子供のように、わくわくどきどき。
幼い頃は、すべての出会いが新鮮でしたね。甘いのも酸っぱいのも、ときには苦いのも。あなたはどんな出会いを思い出すのでしょうか。
驚きをもたらす出会いの一杯、どうぞめしあがれ。
〈店舗情報〉
【cafe 12(カフェトゥエルブ)】
住所:大阪府大阪市福島区福島2-3-12
電話番号:06-6136-3670
基本は月曜休(SNSなどで確認してください)
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佐久そるん
大阪生まれ、大阪育ち。5年ほど前から小説の執筆をはじめる。2019年『氷と蜜』が第1回日本おいしい小説大賞の最終候補に選ばれ、刊行に向け改稿をスタート。2020年6月、同作で作家デビュー。かき氷の魅力が詰まっていると『氷と蜜』は話題に!
甘いものに目がなく、まめに食べ歩く。パンケーキ、パフェと続いてここ3年はかき氷にハマっている。コロナ禍の自粛期間中は和洋菓子をお取り寄せしてお店を応援。現在は再開したかき氷店へ著書を持って行脚の日々。