ムカムカした吐き気や胃部不快感を生じ、胃酸の分泌が増えることで胃炎や胃潰瘍の発症につながることも少なくありません。
辛い症状が続く胃もたれ…。少しでも改善する方法を解説します。
【目次】
・【胃もたれ 吐き気】飲むべき市販薬は?
・【胃もたれ 吐き気】下痢、寒気までし始めたら?
・【胃もたれ 吐き気】解消法として効果的なのは?
【胃もたれ 吐き気】飲むべき市販薬は?
辛い胃もたれが続くときの解消法としておススメなのが、市販薬の内服です。
現在では、ドラッグストアや薬局だけでなく、コンビニや通販でも一部の市販薬を手軽に購入することができます。もちろん、胃腸の調子を整え、様々な不快症状を改善する市販薬も多く販売されています。
ただし、一概に「胃もたれ」といってもその症状は様々。それぞれの症状に合わせた市販薬を選ぶのがポイントです。
胃もたれ、その症状は?
食事後から続く胃もたれ
食後すぐの時点から生じる胃もたれの原因は、胃の粘膜から分泌される胃酸の不足によるものです。
胃酸の中にはたんぱく質を細かく分解する消化酵素が含まれており、胃酸分泌量が低下すると、消化に時間がかかり胃の中に消化しきれない食べ物が溜まりやすくなってしまうのです。
このようなタイプの胃もたれには、消化酵素が含まれる胃薬や胃酸の分泌を促す胃薬がおススメです。どちらか一方のタイプを服用するよりも、二種類を同時に服用した方がより高い効果が得られます。
食後1時間以上経過してからの胃もたれ
食後ある程度時間が経過してから生じる胃もたれは、胃の蠕動運動が低下することが原因です。
胃の中で消化された内容物は、胃が蠕動運動を繰り返すことで十二指腸に送り込まれます。このため、十分な運動が行われない胃は内容物を送り込むことができず、胃の中に停滞しやすくなるのです。
このようなタイプの胃もたれには、胃の蠕動運動を促す作用のあるタイプの胃薬がおススメです。
胃痛を伴う胃もたれ
胃の中に内容物が停滞した状態が続くと、更なる消化を促すために胃酸が過剰に分泌されるようになります。その結果、胃の粘膜が荒れて胃痛を引き起こすことも少なくありません。
放っておくと深刻な胃炎や胃潰瘍に進行してしまうこともありますので注意しましょう。
胃酸の分泌過多には胃酸分泌を抑える胃薬が有用ですが、胃もたれがある場合は消化が悪くなって逆に胃もたれが悪化してしまうことも…。
このため、胃痛を伴うタイプの胃もたれでは、消化を促す胃薬の他に、胃の粘膜を保護する効果のある胃薬を同時に服用するようにしましょう。
胃薬には様々なタイプがあり、症状に合わないものを服用すると症状が悪化してしまうこともあります。市販薬を購入するときは効能をよく読み、どれを選んでよいか分からない場合は薬剤師に相談するようにしましょう。
【胃もたれ 吐き気】下痢、寒気までし始めたら?
ムカムカが続く吐き気や胃部不快感は、胃もたれによるものだけではありません。
胃もたれは女性によく起こりうる症状であるため、軽く考えられがちですが、なかには思わぬ病気が原因となっていることもあるので注意が必要な症状でもあるのです。
特に注意したいのが、下痢や寒気、発熱などの症状を伴うときです。
胃もたれと共にこれらの症状が見られる場合には、感染性胃腸炎の可能性が考えられます。感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌などの病原体に感染することで胃や腸に炎症を引き起こす病気です。代表的なものでは、ノロウイルスやロタウイルス、腸管出血性大腸菌などが挙げられます。
主な症状は発熱・倦怠感・関節痛などの全身症状、下痢・嘔吐・腹痛などの消化器症状ですが、発症初期には炎症によって胃や腸の動きが低下することでムカムカとした胃もたれを引き起こすことがあります。この段階では通常の胃もたれと区別するのは難しいでしょう。
感染性胃腸炎が疑われる場合は水分を多めに摂るよう心がけ、なるべく早めに病院を受診することが大切です。重症化すると脱水症などの重篤な合併症を引き起こすことがありますので、早め早めの対策が必要です。
また、病院を受診するまでの対処法として下痢止めを服用する人もいますが、原因が分からない下痢がある時は無暗に下痢止めを服用するのは大変危険です。
下痢止めを服用することで、腸管内の病原体が便と共に排出できずに体内に止まることで、治りが遅くなったり、重症化することもあります。
市販の解熱剤も胃の粘膜を荒らすことがありますので自己判断で市販薬を服用せず、病院で安心して服用できる薬を処方してもらいましょう。
【胃もたれ 吐き気】解消法として効果的なのは?
長引く胃もたれや吐き気を解消する方法として大切なのは、生活習慣を整えて十分な休息を取り、ストレスや疲れが溜まらない生活を心がけることです。
胃もたれやそれに伴う吐き気は、胃の消化運動が低下することによって引き起こされるものです。私たちの胃や腸の消化運動を司るのは「自律神経」と呼ばれる神経系統の一種です。自律神経には、交感神経と副交感神経の二種類があり、それぞれが相反する作用を持つことで全身の様々な機能を調節しています。
つまり、胃の中に食べ物が入り込むと、副交感神経が優位に働いて胃酸の分泌や蠕動運動を促して消化を行い、消化が終わってそれらの働きが不要になると今度は交感神経が優位に働いて胃酸の分泌や蠕動運動が低下するのです。
しかし、自律神経のバランスが乱れると、胃の中に食べ物が入り込んだにも関わらず交感神経が優位に働いたままで消化に時間がかかり、胃もたれや吐き気を引き起こしやすくなります。
自律神経バランスの乱れは様々な原因によって引き起こされますが、過度なストレスや疲れ、緊張がその発症に大きく関与していることが知られています。
働く女性は、何かとストレスや疲れが溜まりやすいものですが、生活習慣を整えて心身ともに健康な生活を送るようにしましょう。
成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。