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2017.11.18

知ってるようで知らない「共謀罪」私たちの生活に影響ある?

2017年7月から導入された「共謀罪」が私たちにどう関係するのか、お聞きしました。

2017年7月から施行! そもそも「共謀罪」 とは…?

【処罰の対象】
組織的犯罪集団が、対象となる277の犯罪をふたり以上で計画し、役割を分担して犯罪の実行に合意し、集団のだれかが資金・物品の手配や場所の下見などの「準備行為」をすること。

【罰則】
対象犯罪のうち、10年を超える懲役・禁錮の刑が定められている罪は5年以下の懲役か禁錮。4年以上10年以下の懲役・禁錮の刑が定められている罪は2年以下の懲役か禁錮。

「共謀罪」私たちの生活への影響は?

美優 「共謀罪」の法律が国会で審議されていたのは、今年の6月ごろでしたか? 騒がれていたわりには、あっという間に可決されてしまったような記憶が…。もう法律は発効しているんですか?

木村 7月から施行されています。

美優 そもそもどんな法律なのか、よくわかっていないんですよね。

木村 難しいですよね。まず、今回可決された「共謀罪」の趣旨が盛り込まれたいわゆる「共謀罪法」は、「組織犯罪処罰法」という法律の改正です。大ざっぱにいうと、「組織的犯罪集団の活動として、犯罪の実行を共謀し、準備行為をした場合」に、処罰できるということになります。

美優 まだ罪を犯していなくても、ということですよね。それと、ひとりではない、と。組織的犯罪集団――ってどんなグループのことですか? たとえばこの間テレビドラマを見ていたら、友達同士が日常会話の延長で「もし学校を爆破するとしたら…」みたいな話をするシーンがあったんです。仮に言い出した人は本気だとしても、周囲の人はあくまでも冗談として話しているわけで…。

安座間美優

木村 まず、その爆破計画が冗談だと証明するのはとても難しいですよね。全員が「冗談です」と主張しても、それを警察が理解してくれるかどうかはあやしい。

美優 確かに、話していたのは事実ですもんね。

木村 それに、たとえば指定暴力団なら指定するための厳しい条件や手続きが決められていますが、共謀罪でいう組織的犯罪集団は特別な指定手続きがあるわけではなく、「構成員に、過去に罪を犯した者がいる」といった条件もありません。もともと犯罪を目的に集まったグループではなくても、罪を犯すかもしれない集団に変わったと見なされれば、共謀罪が適用されて、取り調べられる可能性はあります。

美優 えーっ! じゃあ「準備行為」というのはどんなことをさすんですか?

木村 法律には「下見その他」と書かれているんですが、とても広い範囲が含まれます。たとえばその、爆破計画をしているグループが腹ごしらえをしようと、おにぎりを買ったらどうでしょう?

美優 それも準備行為になる、のかな…? そういえば国会では、「お花見ならビールとお弁当を持っているけれど、〝下見〟だったら地図や双眼鏡を持っている」といった説明もあって驚きました。

木村 適用される範囲が広いので、共謀罪を適用しようと思えばどうとでもなってしまうのが問題なんです。ほかにもたとえば、音楽グループのひとりが楽譜を買ってほかのメンバーがそのコピーを使うのは著作権法違反にあたる可能性があります。でもだれかがLINEで「1冊買って人数分コピーすればいいんじゃない?」と書いて、あなたが既読スルーしたら「合意した」とみなされかねません。SNSの「いいね!」も同様です。また、会社の会議で、たとえば不正競争防止法や法人税法スレスレの議論がされているとき、反対意見を言わなければ、それも〝合意〟になりかねません。

美優 既読スルーでも!? うっかりヘンなことができませんね。

木村 ただ、ふだんからビクビクしすぎるのも問題です。共謀罪は277の罪について適用されますが、現実問題として警察がそれほど幅広い行為に関係する共謀すべてを見張ることは不可能でしょうから。ただ、何かのきっかけで警察から目をつけられることはだれにでもありえます。そんなときに共謀罪が適用されて、むやみに捜査されたり逮捕されたりしないか、冤罪が生まれないかが心配です。

共謀罪可決を急いだ政府の主張の裏オモテ

美優 釈然としませんが、犯罪が起こる前に防ぐためには、意味のある法律なんでしょうか…。

木村 それは意見が分かれるところですね。実は共謀罪は10年以上前から議論されていて、これまで3回廃案になっているんです。

美優 でも今回、可決されたのはなぜですか?

木村 政府が十分な議論をする時間を与えず、法案の問題点を国民が認識する前に通してしまった、というのが実際のところでしょう。まず政府が主張していた、共謀罪が必要だとする表向きの理由はふたつ。ひとつは「テロ対策」です。

美優 確かに最近、さまざまな国で立て続けにテロが起きているから、気になりますね。

木村 でも実は、’20年の東京オリンピック開催が決まった翌年、’14年に「テロ資金提供処罰法」という法律が改正されていて、テロの準備行為はすでに、包括的に処罰できるようになっています。

美優 これまでの法律で十分だったということですか?

木村 はい。また、政府が言っていたもうひとつの目的は、「パレルモ条約」と呼ばれる国際条約に加盟すること。この条約は国際的な犯罪組織を協力して取り締まれるよう、たとえばA国で犯罪になっていることはB国でも犯罪になるよう、協調する目的のものです。日本政府は、加盟するためには共謀罪が必要だと説明していましたが、日本にはもともと「共謀共同正犯」といって、実行された犯罪の共謀者を処罰することができ、重大犯罪の準備行為を罰する法律もありました。

美優 あれ? じゃあ、共謀罪は必要なかったということですか?

木村 専門家から、そうした指摘が相次ぎました。パレルモ条約がテロ対策になるという説明もありましたが、パレルモ条約はもともとマフィアや暴力団対策のもの。そもそも今回の「共謀罪」のことを政府は「テロ等準備罪」と呼びましたが、条文の適用対象はテロだけに限られていません。つまり、共謀罪がテロ対策だという政府の説明は、噓だと言っていいでしょう

美優 そうだったんですか!? ネットやテレビでもよく、「テロ対策のために共謀罪は必要」という賛成派と、「共謀罪を施行したら監視社会になる」という反対派、といった議論を見かけていたので、てっきりテロには有効なのかと…

木村 共謀罪はある程度法学の知識がないと理解するのが難しいんです。法律に明るくない有識者たちの、論点がズレた意見に惑わされてしまった人は少なくないかもしれません。本来の争点は、テロ対策だと言い張る政府の噓を許していいのか、ということです

美優 噓、ですか…。

木村 ほかにも実は、犯罪を決行したほうが、共謀した犯罪を中止したときより罰が軽くなる可能性がある法律が存在するという問題点もあります。また、パレルモ条約を批准するには、共謀罪より、国際社会で少数派の死刑制度について議論する必要があるのに…など、あまり報道されなかった、気がかりな点は多々あるんです。

美優 素朴な疑問なんですが、政府はなぜ、そこまで共謀罪の施行を急いだんでしょうか?

木村 政府が本当の説明をしなかったから、一連の出来事からの推測でしかないんですが、外務省がパレルモ条約批准の条件を、杓子定規にとらえすぎた、という側面はあると思います。また、共謀罪ができることで、警察が捜査や逮捕をしやすくなるのは事実です。これまでは不当逮捕だとされていたケースでも、共謀罪を適用して「犯罪を計画しているという情報があったので」と言えば、だいたいのものは不当逮捕ではなくなるでしょう。

私たちが共謀罪に対してできること

美優 現時点では、まだ共謀罪が使われたことはないんですよね?

木村 はい。つまり今のところ、無茶な使われ方はしていないということなので、ひと安心ではあるんですが。施行の際、ある新聞に警察関係者の「これだけ強い反対があった法律なので、運用には慎重になる」というコメントが載っていましたが、最初の事案がどのようなケースになるのかは注目してほしいですね。「これは適用されてもしょうがない」と思うのか、「やっぱりひどい法律だった」と思うのか。そしてみなさんには、不当な運用がされないよう関心を持ち続けてほしいです。

美優 もし「共謀罪はやっぱりおかしい」と思ったら、私たちにできることは?

木村 たとえば同僚や友達に「共謀罪はおかしい」と言うだけでもいいんです。特にOggi世代は日常的に政治的な発言をすると思われていないので、そういう人たちが意見を言うと、結構な影響力がある。また、共謀罪の問題点を主張する雑誌を買ったりテレビ番組を見るだけで意味はありますよ。まっとうな報道をしているメディアの視聴率や発行部数が伸びないと、その意見は影響力を失っていってしまうので。

美優 なるほど! そういう視点で考えたことはありませんでした。

木村 もともと問題の多い法律だけれど、施行されてしまったからには、不備がないか、見守り続けることが重要です。

覚えておきたいキーワード

「277」

刑法や爆発物取締罰則、銃刀法などのほか、文化財保護法、種苗法、モーターボート競争法、著作権法など、テロ対策とは一見関係がなさそうな法律に抵触する犯罪も、多くが適用対象になっている。

「テロ資金提供処罰法」

正式名称は「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律」。’02年施行。’14年の改正で、テロ集団への資金だけではなく、物品や役務、その他の利益を提供する行為も処罰の対象に。

「パレルモ条約」

正式には「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」。TOC条約とも呼ばれる。締結国間では犯罪者の引き渡しなどがよりスムーズに行える。日本も今年7月11日に締結し、世界の締結国・地域は188に。

「共謀共同正犯」

複数人で犯罪計画を立て、そのうちのだれかが実行した場合、一緒に計画した全員が処罰対象になること。たとえばオウム真理教の教祖など、自分では手を下さない犯罪組織のトップを重く処罰できる。

※この特集で紹介している情報は、2017年9月8日時点のものです。

2017年11月号「Oggi大学 今知っておきたい共謀罪のこと」より。
本誌掲載時スタッフ:撮影/為広麻里 スタイリスト/角田かおる ヘア&メーク/コンイルミ(ROI) モデル/安座間美優 構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成:Oggi.jp編集部

お話を聞いたのは…憲法学者/木村草太さん

きむらそうた
’80年生まれ。東京大学法学部卒業、同大学助手などを経て、首都大学東京教授。著書に『憲法という希望』(講談社現代新書)など。報道番組のコメンテーターなども務める。


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