デジタル・ネイティヴ世代の最先端を行くサスペンス・スリラー映画『search/サーチ』
『search/サーチ』は、映画のスクリーンがすべてパソコンの画面の映像で展開されていくという、デジタル・ネイティヴ世代の最先端を行くサスペンス・スリラー。その設定だけでも興味を掻き立てられます。
▲父親が娘のパソコンを開いて、犯人探しを始める。
娘の置いていったパソコンを手掛かりに行方不明になった娘を必死に探す父親。しかし、事件は思わぬ方向へ進んでいく
ストーリーは、一人娘である16歳のマーゴットと突然連絡が取れなくなった父親デビッドが、警察の捜査もままならないまま行方不明から37時間経過したことで、娘の置いていったパソコンを手掛かりに自ら探していくところからスタート。彼女のインスタグラムや専用動画サイトを調べていくことで、全く知らなかった娘の別の顔を知り、事件は思わぬ方向に進んでいく。
▲事件はTVやネットでも注目されていく。
こう書いてしまうと妄想が広がるばかりで、凄いことが起きてしまうのでは? ヤバイものを発見してしまうのでは? というドキドキ感が止まらないけれど、ひとことだけネタバレしてしまうと、残虐なシーンはありません。なので、そういう嫌な気分は残らない映画です。
日々スマホやパソコンと接している私たちだから、全編がPC画面にも関わらず、違和感を感じずに一気に最後まで観てしまう流れ。
妻を亡くした後もマーゴットと良い関係を築いていたと思っていた父親が、知らなかった娘の別の顔をパソコンから発見したり、娘と仲良しだと思っていた友人たちが全然そうではなかったり……、リアリティに溢れた展開が続きます。別の意味で凄く怖かったのは、パスワードを知らなくても娘のパソコンに簡単に入れてしまうこと。でも、これもあり得ることです。
▲父は娘がピアノのレッスンを続けていたと思ったが……。
アイコンの画像あたりから面白さが加速。また、犯人が判明してからのラストへの急展開が、監督が一番伝えたかったことかもしれません。SNS上だけではなく、普段からリアルな会話を交わしていくことこそ大切なのだと。
監督はGoogleのCMなどを手がけてきた27歳のインド系アメリカ人 アニーシュ・チャガンティ
映画監督のアニーシュ・チャガンティは、南カリフォルニア大学で映画製作を学んだ、現在27歳のインド系アメリカ人。23歳の時にウェララブルコンピュータGoogle Glassだけで撮影した2分半の短編映画『Seeds』を製作し、それがYouTubeで24時間の間に100万回以上再生されたことをきっかけに、GoogleのCM制作などを手がけてきました。アイディア豊富なクリエイターで、天才肌と評されています。
▲画面の色調を登場人物ごとにコントロールしたそう。
今回、iPhoneも撮影に使われていて、その映像の質感から、観る側はストーリーをより身近な出来事に感じられるのかもしれません。また、マーゴットが大好きだった母親と過ごしていた時の色彩には《太陽の光のように、黄色を強調》、マーゴットは《緑と黄色と淡いクリーム色、もしくは星型のモチーフ》、父親デビッドは《茶色や赤》というように、登場人物の個性や彼らがいる場所の特徴をわかりやすくするために、カラースキームをツールにしたそう。こういったデジタル・ネイティヴ世代を意識した視覚感も、より体感しやすい映画にしていると思います。
『search/サーチ』は2018年サンダンス映画祭で観客賞を受賞したほど、本当に見事なアイディアに溢れている新世代の映画作品。話題作として、観ておくことをオススメします!
映画『search/サーチ』(10/26 全国ロードショー)
http://www.search-movie.jp/
初出:しごとなでしこ
伊藤なつみ
国内外問わず超人気アーティストなど多数取材している音楽&映画ジャーナリスト。若手ミュージシャンたちからの信頼も厚く、プロデュースやディレクション、スタイリングetcにも幅広く活躍中。フィガロ連載、Spotify のMUSIC SKETCHも人気。料理の腕前はプロ級でコース料理でおもてなしも。