デビュー15周年を記念したアルバム『歌祭文 〜ALL TIME BEST〜』に込めた想いとは…!?
――今作には、これまでの名曲を収録したベストアルバム『一青歌祭文』の他に、近年の人気曲や新緑曲を収録した『新盤歌祭文』もパッケージされるんですね。
「はい。これまでの楽曲はもちろん、新しいアルバムとしても楽しんでもらえればと思います」
――今作は、水野良樹さんからの楽曲提供やチャラン・ポ・ランタン小春さんの参加など、様々なアーティストとコラボレーションされていますね。
「そうなんです。さらに、BEGINさんに『会いたかったのは僕の方』(「新盤歌祭文」収録)を作曲して頂いたりと、新しいコラボレーションもあって楽しかったですね。実は、BEGINさんにお願いするということで、“もしかしたら石垣島に行けるかも…”と思ったんですが、行けませんでした(笑)」
――あはは。『もらい泣き』から15年経った今、あらためて今だからこそ歌えた曲はありましたか?
「『もらい泣き』を手掛けてくれた方でもあり、“一青窈”を作り上げてくれた武部聡志さんが、今回は90年代をほうふつとするような楽曲のデモをたくさん作ってきてくださったんです。実は私も、そういった歌を歌いたいと思っていたので感覚がマッチしたんですよ。この感覚は、一緒に15年間やって来たからこそ一致したものだと思うんです。案の定、歌ってみたらすごく楽しかったですね」
――新録曲で紡ぐ言葉が、いつもよりストレートのような気がしましたが、心境の変化があったのでしょうか。
「やっぱり、出産をして、子育てをしたことが大きいと思います。常に子供を目の前にしているので、言葉がすごくストレートになったんですよ。まず、わかりにくい言葉は伝わらないですからね。言ってしまえば語彙力が減るんです(笑)。でも、それが故にポップスに近づいていく感じがあるんですよ。デビュー当時、こねくりまわして書いていた歌詞が、すごくストレートになった今は、いい意味で王道に近づいている気がします」
――言葉選びが顕著に変わっているのが、ベストアルバムでわかりますね。
「そうなんです。『Final Call』とかは、“私はなんでこんなに思い詰めていたんだ”という気持ちで聞いていますからね(笑)。ビルを見ていて、“私のために光っていない”なんて、今は思わないですから! 自分で“どうした、一青窈”って思うくらい(笑)。でも、その当時にしかだせないエネルギーが詰まっているんです。それはその時にしか出せない光だと思うので、あらためてベストアルバムとして並ぶと、面白いですね」
――今作は第二子を妊娠中に制作されていますが、妊娠中に浮かぶ歌詞に変化はありましたか?
「あまり変わらないかな。でも、母性が増えているせいか、嫌なニュースは取り込んでいかないようにしているんですよ。昔はそれも詞を書くきっかけになると思って本を読んだり、ニュースを見たりしていたんですが、今は摂取できなくなりました」
――できるだけいいニュースを取り込んでいくようになりますよね。
「そう! 笑顔が大事。子どもは、浴びる言葉をすぐに吸収するんです。だからこそ、キレイな言葉をたくさん耳の中に入れていけるような環境を作っていきたいと思っています」
――ありがとうございました。最後に“しごとなでしこ”読者にメッセージをお願いします。
「いま、結婚していない同年代の友達がネットで出会いを探していて」
――え!? 急にどうしたんですか!?
「あはは。いやいや、”しごとなでしこ”の読者の方って、私と同世代か、下の女性ですよね」
――そうですね。
「となると、出会いをネットで探す人も多いと思うんですよ。でも、メールでの文面を考えたり、他にも連絡を取っている人がいるんじゃないかって思うことがたくさんあると思うんです。そんなことに疲れたときにこそ、このアルバムを聴いてもらいたいですね」
――急にリスナーの幅を狭めましたね(笑)
「癒し系アルバムです!」
――間違いないですね、それは!
「このアルバムを聴いて、“大丈夫、あなたは間違ってない”と思ってもらえたら嬉しいです」
取材・文/吉田可奈 写真/小嶋淑子
一青窈『歌祭文 〜ALL TIME BEST〜』(読み方:うたざいもん)
デビューから15年間の軌跡と現在を濃縮した、一青窈自身初のオールタイム・バストアルバム。『ハナミズキ』や『もらい泣き』などの代表曲をリリース順に収録したヒット曲満載のディスク1「一青歌祭文(ひとと・うたざいもん)」と近年の人気曲と新曲を収録したディスク2「新盤歌祭文(しんばん・うたざいもん)」の2枚組み。発売中 ¥3200(税抜き)/UNIVERSAL MUSIC
【一青窈PROFILE】
東京都出身。台湾人の父と日本人の母の間に生まれ、幼少期を台北で過ごす。2002年シングル『もらい泣き』でデビュー。5枚目のシングル『ハナミズキ』は大ヒットを記録。歌手としての活動の傍ら、映画や音楽劇への出演、詩集出版など幅広いフィールドで活躍中。2017年10月にはデビュー15周年を迎える
一青窈オフィシャルサイト
初出:しごとなでしこ