市議会議員の女性が主人公のドラマ『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』(フジテレビ系・月曜日夜9時放送中)、みなさんご覧になってますか?
10/23放映の第1話では、篠原涼子さん演じる主婦・佐藤智子が選挙戦を戦い抜き、見事「当選」を勝ち得ました。これまで、市議会議員を主役にしたドラマはあまりなかっただけに、2期8年間市議をしていた私としても、ワクワクしています。
そこでドラマの進展に併せて「リアル市議会議員」の世界を、みなさまにご紹介していきます。
「本物のステーキを子どもに食べさせたい」の想いが年収950万円の世界を目指すキッカケに!?
ドラマでは、主人公の佐藤智子が「息子の駿平に本物のステーキを食べさせてあげたい」「保育園の送迎に電動自転車が欲しい」などの想いを抱いたあとに、パソコンで「市議会議員」の職を見つけ「年収950万!?」と驚きつつ出馬を決意。選挙中も「年収950万円!」を合言葉に奮闘していました。
さて、このドラマをご覧になって「市議会議員って、みんな年収950万円なの?」と疑問に思った方もいらっしゃるのでは?
市議会議員の年収は地域によって異なる!
市議会議員の年収(正確には議員報酬)は、各自治体によって金額が異なります。一般的には、人口が多かったり財政が豊かだったりする自治体のほうが、市議会議員の報酬は高額な傾向にあります。また、市議会議員や県議会議員を「地方議員」と呼びますが、市議(区議)or県議(都議)によっても、報酬は異なります。
参考までに、私が市議会議員を務めさせていただいてた千葉県・市川市を例にとると、議員報酬の月額は60万4,000円(平成23年4月1日改定)で、月額報酬の他に毎年6月と12月に期末手当(民間で言うボーナスのような位置付け)が支払われています。ここから、税金などが引かれて、“手取り”はこれよりも少なくなります。また、企業のような社会保険制度がないので健康保険や国民年金などの社会保障の費用を別途ここから支払います。「地方議会議員年金」も平成23年6月1日を以ってすでに廃止されていますので、市議会議員には現在公的な年金制度はありません。
市議会議員の平均年収は758万円!?
ところで、少し調べてみると、市議会議員の平均年収は758万円(出典:平均年収.jp)とのこと。どうやら、ドラマの「年収950万円」は、全国平均と比べて議員報酬が恵まれている部類に入りそうですね。ドラマのロケでは千葉市が舞台となっているので、千葉市が政令指定都市であることも関係しているのかも? ちなみに、一般的には一般市よりも政令指定都市のほうが、議員報酬はお高めです。
報酬の全てを自由に使えるわけではない!?
「市議会議員の年収が平均で758万円なんて、相当いい暮らしができそう!」と思った方も、少なくないかもしれません。ドラマでも篠原涼子さん演じる佐藤智子は「時給950円と年収950万円」の暮らしの違いにまつわる発言を多くしていましたよね。
実務上、市議会議員として仕事をするにあたっては、日々の交通費や活動費、事務的な費用や支持者が集う会合への会費など、多くの経費をこの議員報酬から出すことになりますので「年収=自由になるお金」というわけにはいきません。
また、選挙にもけっこうな費用がかかるのが通例なため、若手の議員だと、報酬からコツコツ貯めて次の選挙費用にしている人も。さらに、地方議員は兼業が認められていますので、市議会議員以外に自分の事業をしている人もいます。
「政務活動費」と呼ばれる調査研究(具体的には、資料購入や会議費、調査研修費や備品購入費など)に使える経費も別途支給されるのですが、政務なのか党務なのか選挙活動なのか……と分類が難しい出費に関しては、政務活動費ではなく議員報酬から支出する議員が多くなっています。
余談ですが、現在では多くの自治体で政務活動費の使途にまつわる透明化が進んでいて、収支報告書をインターネットで見られる議会も増えています。興味がある方は、お住いの自治体をぜひチェックしてみて!
さて、最後に再びドラマに話を戻しますと、選挙戦が始まってからの立候補で佐藤智子のように当選を勝ち得るのは実務上は非常に厳しいお話で、どんなに優れた候補者でも、知名度が不十分であれば落選してしまうことも多々ある世界です。
今後、このドラマはどんな展開を見せていくのでしょうか。ドラマ放映後、各エピソードに合わせて、リアル市議会議員の世界をみなさまにご紹介していきます!
『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』(フジテレビ系・月曜日夜9時放送中)
第2話は、10/30放送!
【参考】
発議第34号(平成23年2月市川市議会定例会)- 市川市
市議会議員の年収を徹底解説!平均は758万円! – 平均年収.jp
地方議会議員年金制度の廃止 – 総務省
初出:しごとなでしこ
並木まき
ライター・時短美容家。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。