体が欲しがる「絵」
しっとりと秋の匂いのする小雨の降る夜。
私は代官山の裏道を急いでいた。
お目当ては9月1日にオープンしたギャラリー。
『シソンギャラリー』
ギャラリーディレクターのアヤさんはこの名前を、バレエのポーズのシソンヌ(しっかり跳んで軽やかに着地、みたいなイメージかな)と子孫繁栄のシソン(末長く続く素敵な言葉ですね)、両方のイメージから取った、そんな新しいギャラリー。
こけら落としの展示は「山崎美弥子展」
my one thousand years…
全ての作品は「1000年後の未来」の風景という…
素敵そう! 千年後から遡った過去としての現在。
ということで、ハワイはモロカイ島からたくさんの自分の作品とともにわざわざ東京に来た美弥子さんに会いたい女性たちがわんさか押し寄せたレセプション!
私がついた時にはすでに熱気でムンムンしていた。
そりゃそうだ。
その理由は作品を見たらすぐわかった!
ほんわり、様々な淡色で彩られた数々。
花の様な、空のような、また、海のような。
揺らめきと透け感の先には、キャンバスを思わず通り越してすぐにたどり着いてしまいそうな1000年後の世界。
こんな1000年後なら本当に生きていたい、と心から思えるやさしい作品たち。
『無条件に受容される世界』との謳い文句そのままに、女性たちは皆、美弥子さんの優しい世界に圧倒されていた。
たまらず、お天気の良い週末に再訪。
このギャラリー、代官山の裏通りにあるのだが、昭和七年建築の日本家屋を改装して維持し続けている。
ギャラリーに改装するにあたって、内装は木のぬくもりと対照的にきっぱりはっきりとした白、しろ、白の空間。
広過ぎず、狭過ぎず、ベランダに抜ける窓も気持ち良い。
頭の洗濯にはぴったりです。
ぎしぎしする(笑) 階段をのぼったら、素敵な窓と1階とはまた違った密やかなギャラリースペース。
どこに飾っても美弥子さんの絵は『絵になって』いた。
私がお邪魔している間もひきも切らず、女性がどんどん入ってくる。
実は美弥子さん、スタイリストさんやら雑誌の編集の方やら、わざわざモロカイ島にまで求めにいく熱烈なファンもたくさん。
今回も関西からもわざわざ来訪されていた女性も!
そしてモロカイ島まで行けば島のガイドまでしてくださると言う。俄然行きたくなった! モロカイ。
(モロカイはハワイの中でも一番土着文化を大切にしていて、自然たっぷりなんだそうだ)
この絵が、日々のバタバタした現実から自分を解き放ってくれるという実感が、本当にした。
多分みんなそう感じたんだと思う。
体が欲しがっている感じ。
だから、見ているそばからどんどん若い女性たちが購入を決めていく。
ギャラリーに飾ってある作品はどんどん売約済みのシールが貼られていく。
決してお安くはないけれど、でも買えない値段じゃない。
ブランドバッグ1個諦めたら、この1000年後の世界の温かな安らぎが手に入るんだ!
美弥子さんの作品を求めている女性の気持ちがしみじみと伝わってきた。
絵を買って飾る。
日本人は芸術が好きなのにシェアする方が得意という。
(展覧会とか美術館とか)
買ってみるというよりは行って見る。
でも、ゴッホやルノワールやらの大作じゃなくてもこういった素敵で心のこもった日々の作品はたくさんある。
そういうものを自分の手に入れるのは大切な消費じゃないか。
こうやって癒される感覚を『自分の』絵から感じるって素敵だな。と改めて思った今回の山崎美弥子展でした。
#山崎美弥子展は9月24日までみんないそいでGO!
【編集後記】
ということで、わたくし、クロシマ。消費家です!
さんざん悩んだ末に一枚購入。少し動きのある絵にしたけど、でもすでにもう一枚、あのしんと静謐な絵の方も欲しくなった。(やばいすでにハマってる><;)
初出:しごとなでしこ
黒島美紀子 MKシンディケイツ代表
消費家・商業マーケティングコンサルタント
アパレル、セレクトショップ・百貨店を経て独立起業して早や10年余。数々のお買い物の実践と失敗を繰り返し、ファッション、ビューティ、グルメ、ライフスタイルの動向を消費者目線で考察。また、世界各地の商業スペースやブランドをチェック、消費活動を通じたマーケティングを行い、企業と消費者を結ぶ。