高田馬場から徒歩1分にある居酒屋「里」で奇跡のカレールーと出会った
音楽業界でもファッション業界でも流行があるように、カレー業界でも流行はあります。流行をチェックし、押さえていくのはどの業界でも大切であり、多くの人と豊かなコミュニケーションを取る上でも必要なことだと思いますが、流行に流されない良さを持った音楽やファッションや、カレーがあることもまた事実です。
今回は、流行とはまったく関係ないところで確かな支持を得ていながら、カレー業界でもまだほとんど知られていない、とっておきのお店をご紹介します。それは、高田馬場にある「里」という飲み屋です。
居酒屋ではなく、バーでもなく「飲み屋」という言い方が一番しっくりくるお店であり、外観からは想像もつかない美味しいカレーが食べられる、僕の大好きなお店です。
カウンターのみの小さなお店。店内には壁に貼り付けた手書きのメニュー。テレビがついていて昭和な雰囲気満載です。カウンターの中で一人お店を切り盛りするのは御年68歳の武田さん。こちらのお店を開いて今年でちょうど30周年だそうで、ベテランならではの無駄のない動きでお店を回しています。
お店自体は和風な雰囲気なのですが、その中でも一番人気なのが自家製カレールー。
お店の雰囲気からすると家庭的なカレーを想像しますがそうではなく、手間暇かけまくった本気のカレーなんです。何しろマスターの武田さん、その料理人人生のスタートが東銀座の老舗ナイルレストランからはじまったというのですから間違いない本物。昭和のナイルレストランで7年間勤めていた方ですから、生半可ではありません。ナイルレストラン仕込のカレーは、10時間かけて玉ねぎを炒め、全行程含めると5日間もかけて作るという非常に手の込んだもの。
今回は特別編ということで、しごとなでしこ編集部のお二人を連れて、こちらに行ってきました。以下は会話形式でお店の素晴らしさを感じてもらえればと思います。
<参加者>
武➡️店主 武田さん
カ➡️カレーおじさん\(^o^)/
編A➡️しごとなでしこAさん
編M➡️しごとなでしこMさん(途中参加)
編A:うわぁ、なんだか渋いですね。カレーがあるとは思えない。私、こういうお店好きですよ。
カ:良かった。女性はこういうお店を苦手と感じる人も多いじゃないですか、でも、こういうのが好きな女性もきっといると思うんです。今回はそんな女性に向けた記事にしたくて。
編A:絶対いますよ!楽しみです。
カ:じゃぁマスター、とりあえずカレールーと、豚バラ玉子カレー炒めと、インディアンポテトのカレー三昧でお願いします。
武:あいよ!カレーは辛口にしとこうか?
編A:辛さも選べるんですか?
武:甘くはできないけどね、辛くならできるよ。言ってくれれば辛くするから。
カ:辛めがおすすめなので、辛口でお願いします。
武:そんじゃまずカレールーね!
編A:うわ!美味しい!
カ:でしょ? 僕も初めてここ来てこれ食べた時、驚いたんですよ。
編A:どうやって見つけたんですか?
カ:店外の手書きメニューでカレーの文字を発見して。お店の雰囲気からして家庭的なカレーかと思って頼んだんですが、出てきたらこれでしょ。もう美味しくて驚いてマスターに思わず話しかけたんです。美味しいですねこれ!って。そしたらマスター、「まぁね、昔カレー屋で働いてたからさ。」って。
武:そうそう。そんでどこのカレー屋って聞かれて、ナイルレストランってとこって答えたらさ、「ムルギーランチのナイルレストランですか!」って言われて、詳しいねぇってなって話が盛り上がって、そこからの仲よ。はい、豚バラ玉子カレー炒めね。
編A:いただきます… 美味っ! あ、「うまっ」とか言っちゃった(笑)
カ:わかりますよ(笑) 実際美味いんですもん。これにブラックペッパーかけて食べるのが僕のおすすめです。
編A:ほんとだ!これは美味しい!
武:ありがとうございます(笑)。スパイスはね、これ使ってんの。ナイルのだよ。
編A:へぇ!これを使っているお店も沢山あるんですか?
武:あるよ。有名店でもこれ使ってたりするから。
カ:僕も実際これが厨房に置いてあるお店、結構見た事ありますし、少なくないですね。でも、このスパイス使ったから美味しくできるってわけじゃなくて、本当に手が込んでるからこその美味しさで、この値段(400円)でこれが食べられるって奇跡ですよ。
編A:このカレーはいつから出しているんですか?
武:最初はね、カレー出してなかったの。なにせ作るのが大変だからさ。でもお客さんと話してる中でね、昔カレー屋にいたなんて話してたらさ、じゃぁ作ってよって言われて。でも本当に大変だからしばらく断ってたんだけど、10年くらいやった頃からかなぁ。あんまり言われるもんだから寸胴買ってさ、それで一回試しに作ってみたら、人気出ちゃって。
カ:そうやって客のわがまま聞いてくれるのがここの良さでもあるんですよ。僕もメニューにないもの色々作ってもらったし。
編A:どんなものですか?
カ:ここはもつ煮込みも美味しいので、そのもつとカレー合わせてもつカレーにしたら絶対に美味しいだろうなと思って、頼んで作ってもらったり。
編A:もつカレー!?美味しそう!
カ:じゃぁそれも頼みますか。マスターもつカレーお願いします。
武:はいよ!でもさ、もつだけじゃなくて他にも色々入れてみたよねぇ。ゲソとかソーセージとか色々ね。ここにあるものだったらね、作りますよ。無いもの言われても流石に無理だけど。はい、インディアンポテト。
カ:カレースパイスで味付けたポテトです。居酒屋のポテトって冷凍ものが多いんですが、ここは生のじゃがいもを皮むくところから作ってるんです。それをスパイスで揚げたというか炒めた的な。
編A:あぁ!これも美味しい!
武:それね、カレールーにつけてみても美味しいのよ。
編A:ほんとだ!また新たな美味しさ!私、ここ好きです!
カ:良かった(笑)やっぱりわかる女性にはわかるお店なんですよ。最近は女性のお客さんも増えてきましたよね?
武:そうそう。昔は全然だったんだけどね、最近若い女の子も来るよ。カレーおじさん\(^o^)/の書いたの見て来たなんていう子も結構いたなぁ。美味しい美味しいっていって帰って。また来てくれた人もいるし。
カ:それは良かったです。ここは女性一人で来てもマスターが優しく話しかけてくれるし、常連さんも良い人が多くて会話もはずむので寂しくなくて良いですからね。
武:でもね、こないだ女の子のお客さんに変に絡んでくるやつがいてさ、帰したよ。もう来るなっつって。
編A:えぇ!?
武:だってそうでしょ。女の子と話したいんならそういう店行けって。普通に話すんなら良いけどさ、しつこく口説くようなことしてたら迷惑だもん。
カ:女性にも優しいお店ですよ。マスターもそうですし、多くの常連さんはちゃんと大人なので優しいですから。
武:はい、もつカレーね。
編A:これも美味しい!
カ:どんどん食べてください。
武:こないだもね、若い子が来てくれてさ、カレーの噂聞いて来たっていって。二人組だったんだけど、飲んだ後だったらしく、一人は乗り気じゃなかったみたいなんだよ。でも一人が、とりあえず食ってみろって頼んで、食ってたらさ、その乗り気じゃなかった方も、「うん」なんつって、結局3回おかわりして食べていったから(笑)
A:その気持ちわかります!私もこれなら3杯食べてもまだいけます(笑)
武:ナス味噌炒めとかどう?
編A:お願いします!カレー以外の料理はどちらで覚えたんですか?
武:ナイルで7年務めた後に14年、中華の店を色々と渡り歩いたの。中には中華だけじゃなくて和食出すお店もあってね、天ぷらとか色々ね。で、その後にここにお店出して、今年でちょうど30年。出した頃はちょうどバブルの時代でさ、忙しかったんだけど、暇な時代もあったし、色んなことがあったけどね、良いことも悪いことも含めてさ、面白いよ。
カ:ここに来ると色々な人の色々な時代の色々なお話を聞けるので、本当に面白いんです。僕はだいたい一人で来てるんですが、いつも楽しいし、友達連れて来てもみんな気に入って帰っていきますからね。こういうお店って貴重です。
武:はいナス味噌!
編A:あぁ、これも良いなぁ。
(ここでカレー大好き編集部M登場)
編M:ここだったの! ここじゃないだろうと思って通り過ぎたんだけどカレーの匂いするから戻ってきたのよ(笑)
カ:お疲れ様です(笑) 流石カレー好きですね。カレーの匂いに導かれてきたとは(笑)
武:いらっしゃい! カレーの匂いにつられてくる人、結構いるよ(笑)
編M:美味しそうな匂いですもんね。さて、何を頼めば良いのかしら。
編A:それじゃカレールーと、豚バラ玉子カレー炒めと、インディアンポテトを是非!
カ:おぉ、結構頼みましたね。
編A:また食べたくて(笑)そして食べてもらいたいくて!
カ:カレールーに関してはテイクアウトもできるんですよね?
武:そうだね。前もって何人前って連絡して入れ物持ってきてくれれば多く作っておくこともできるし、一人前くらいだったらうちの入れ物で持って帰ってもらうこともできますよ。家だったらご飯と一緒に食べることもできるしね(笑)
編M:なるほど。カレールーと一緒に色々なものを食べることができる飲み屋ということなんですね。深いなぁ。
武:うちは飲み屋だからさ、ご飯は出さないの。ご飯食べたらそれで満足しちゃうでしょ。色々と食べて飲んでもらいたいから。
カ:ただでさえ安いですからね、カレーライス出してそれだけで満足されちゃ困りますもんね(笑)
編M:ほんとだ。全部安い。
武:でもね、毎月来てくれる人でさ、はしからはしまでずらーっと頼んで、カレールーなんか3回とか食べて、色々飲んで、うちで8000円とか飲み食いしてくれる人もいるのよ。
カ:それは凄い! 僕はだいたいいつも一人で来てカレーとその他いくつか。お酒も何杯か飲んで、2000円前後くらいですもん。そして逆にいえば全部頼んで沢山飲んでも8000円ってことですもんね。
武:そうだねぇ。はい。カレールーと、豚バラ玉子カレー炒め。インディアンポテトも。
編M:いただきます!あぁ、このカレーは確かに美味しい。お酒飲みながら食べるのにピッタリですね。このポテトをカレーにつけて食べるんだっけ?
編A:まずはそのまま食べてみて、その後にルーにつけて食べると美味しいですよ。
編M:うん。なるほどね。確かに美味しさが変わる。豚バラも美味しい! カレーって色々な食べ方があるんですね。
カ:そうですね。カレーの可能性は無限です。そしてカレーがつなぐ人と人の縁というのも無限ですよね。僕とマスターしかり、僕としごとなでしこの皆さんしかり。
編M:カレーで出会いましたもんね(笑)
編A:是非またこういうのやりましょう! 素敵なお店でカレー食べながら、色々と語り合うのを。今回はごちそうさまでした!また来ます!
リピーターが多いのも納得!必ずもう一度食べたくなる
このように、初めて来た女性も虜にするカレーの味とマスターの人柄です。今どきのおしゃれなお店ではありませんし、古いお店なので、見た目の雰囲気重視な方には向かないかもしれません。しかし、カレーの味がわかる人や昭和な雰囲気が好きな方には本当におすすめのお店です。
16時頃から24時頃までの営業。日曜定休。気になった方は是非行ってみてください。そしてもしそこに僕がいたら、気軽に話しかけてやってください。それもまた、カレーがつなぐ人の縁だと思いますので\(^o^)/
初出:しごとなでしこ
AKINO LEE カレーおじさん\(^o^)/
ヴォーカリスト、パフォーマーとして自身の活動の他、様々なアイドルの作詞作曲振付プロデュースを担当。ヴォイストレーナーとして後進の育成にも力を注いでいる。音楽ライターとしても各種雑誌、ムック本などで執筆を担当。また、カレーおじさん\(^o^)/としても知られ、年間平均900食以上のカレーを食べてきた経験と知識を活かしてTVや雑誌など各種メディアにおいてカレーについて語っている。
http://www.akinolee.tokyo/