3月25日(土)よりWOWOWにて、直木賞作家・石田衣良原作『連続ドラマW 北斗 -ある殺人者の回心-』が中山優馬主演で放送がスタートしました。
本作は、2012年に石田衣良さんが発表した同名小説で、両親から激しい虐待を受け、心に深い闇を抱えた主人公が殺人者となるまでの残酷な運命を描いたもの。その内容ゆえ、映像化は困難とまで言われてきました。本作の主人公を演じるのは、ジャニーズ事務所所属の中山優馬さん、その他、松尾スズキ、宮本信子、村上淳と錚々たる面々が名を連ねます。
前回に続き、原作者の石田衣良さん、主演の中山優馬さん、脚本、監督を務めた瀧本智行さんに本作の秘エピソードを語っていただきます。
裁判所のシーンは、演じていながら本当に辛く悲しい気持ちになりました
——中山さんは、この撮影で約12kgの減量を行ったと聞きました。役づくりは、苦労されましたか?
中山:僕が演じる北斗は、愛に飢えた少年時代を過ごし、自らの運命に逆らうことができず、悩み、苦しむ若者なので、その深い悲しみの感情を表現するために、減量は役づくりに必要な要素でした。徐々に体重を落としていきましたが、撮影の後半は、人と会うことはせず、家でDVDを観る以外は、食事もせずに、時間があれば家の周りをふらふらと歩いていました。散歩中に、気になる料理屋さんを発見したんです。無事にクランクアップを迎え「思う存分食べるぞ!」と、意気込んでお店に向かうと、なんとお店はなかったんです…。僕がみていたお店は、幻想だったのかも、と思い、がっかりしました(笑)。
瀧本:中山くんには、学生から20歳までの北斗を演じてもらったので、演技の幅を要求していたので、大変だったと思います。撮影の後半はとくにハードなシーンも多くて、現場にくるたびに、中山さんの雰囲気が怪しくなっていくことを感じていました。中山くんの気迫の演技は、本当に見応え抜群ですよ。
——石田さんは撮影現場へ行かれましたか?
石田:僕は裁判所のシーンの撮影を見学させてもらいました。スタッフをはじめ、出演者のみなさんが一丸となって作品づくりをされていて、その張りつめた現場は独特の緊張感に包まれていましたね。
中山:裁判所のシーンは、演じていながら本当に辛く悲しい気持ちになりました。ほかにも印象的だったシーンは多々あったのですが、中でも北斗が犯罪者になってしまうシーンの撮影はとても緊迫したなかで行われました。雨に打たれながら、北斗が暴れ叫ぶシーンです。監督も全身を使い、感情的に僕に演技の指示を出されるので、こちらも演技に熱が入っていきました。そのタイミングで「斗真〜!! もっとやれ〜!! 斗真〜!! もっとだ!!」と、監督が僕に向かって大声で叫んでいたんです(笑)。雨の音にも負けないくらいのボリュームでした。カットがかかり「今、斗真って言われましたよね?」と聞くと「ほんと?」熱くなって、気がつかなかった”という、やりとりがありましたよね、監督(笑)。
瀧本:そうなんですよ、気合いが入りすぎて、主人公の「北斗」と中山さんの本名の「優馬」がまざってしまったみたいで(笑)。前作で生田斗真さんとご一緒していたこともあり、言い訳ですけどね(笑)。
中山:ピリピリしたシーンだったので、カットのあとにドッと笑いがおきましたよね。撮影は日々、自分を試されているような、とてつもなく大きいプレッシャーがありましたが、大先輩の俳優のみなさんに囲まれて、全身でぶつかることができました。
石田:原作を書いた僕が言うのもおかしな話しですが、ここまで感情がむき出しになった内容の連続ドラマも、最近、なかなか見かけないですよね。残酷で深く苦しいテーマですが、愛を求める人たちの運命が丁寧に描かれていると思います。人間の本質を、北斗という主人公を通して見届けてほしいです。
瀧本:小細工は一切ございません! 本気で、悲しくて力強い作品になりました。お見逃しなく。
中山:よろしくお願いします!
『連続ドラマW 北斗 -ある殺人者の回心-』は3月25日よりスタート
『連続ドラマW 北斗 -ある殺人者の回心-』
毎週土曜22:00(全5話)※第1話無料放送
出演:中山優馬 松尾スズキ 宮本信子ほか
原作:石田衣良「北斗 ある殺人者の回心」(集英社文庫)
脚本・監督:瀧本智行
▶公式HP
取材・文/木村真悠子
初出:しごとなでしこ