生田斗真さんの最新主演作となる『彼らが本気で編むときは、』では、トランスジェンダーの役に初挑戦。インタビューvol.2では、役を演じるにあたり準備したこと、実際に演じてみて感じたことなどをうかがいます。
今まで感じたことのない「母性」を感じた
—リンコを演じるにあたりどのような準備をされたのでしょうか?
生田「まず外見に関して『きちんと女性に見えるようにしたい』と監督からの要望があったので、髪型や洋服、メイクをクランクインギリギリまで試行錯誤しながら作り上げていきました。そして所作に関しては女性らしく見せるために女優さんのお芝居を見て研究したり。最終的には歌舞伎の女形や日本舞踊の所作が一番良いのかなというところで落ち着きました。お箸の持ち方も基本的なマナーを大事にしながら美しく見えるように練習しました」
—生まれつき女性であっても普段から女性らしさを意識したほうがより女性らしく見えるということですよね。
生田「トランスジェンダーの方に直接お話をうかがう機会があったのですが、どうしたら女性らしくなるかということを日々研究しているんです。かわいく見せることやキレイに見せることに神経を注いでいると話されていたので、僕もできるかぎりそこまでいければいいなという気持ちでした。撮影後にネイルを塗ったまま家に帰ったり、スカートを履いたまま1日過ごしてみたりもしました(笑)」
—何か参考にされた映像作品はありますか?
生田「LGBT関連となると海外の作品が多いのですが、『トランスアメリカ』や『リリーのすべて』、『さらば、わが愛/覇王別姫』などを参考にしました。ただ、そういった作品は割とショーアップされている世界観のものが多いんですね。トランスジェンダーの方の精神性を学ぶことに一番注力したと思います」
—リンコの声色やしゃべり方に関して苦労されたのでは?
生田「子供の頃から声帯が成長せずに高い声のままの方や、女性らしく見せるために子供の頃から声を高くする練習を積んでいる方、あと、性別適合手術を受けた後に声が変わったりすることもあるらしくて、数あるパターンの中のどれをチョイスすればいいのか悩みました。最終的にはトモがリンコに対して『女性じゃないよね?』とちょっとした違和感を持つぐらいのところに落ち着きました」
—リンコを演じていて母性本能を感じることもありましたか?
生田「正直ありました(笑)。家でマキオとトモと川の字に寝ていて、トモがリンコの布団に入ってきておっぱいをモミモミするシーンがあるんですけど、そんなトモを抱きしめると今まで感じたことのない…なんか胸がキュッとなる感じというか…これってよく言う母性みたいなものなのかなと。トモが可愛くて仕方ない気持ちになりましたし、今まで経験したことのない不思議な体験でした」
—カメラが回ってないときはどんな感じで過ごしていましたか?
生田「普段だったらスタッフさんや共演者の方と話したりするんですけど、今回はなるべく静かにしていました。自分が準備したリンコがいて、さらに桐谷健太君やスタッフさんがリンコを作ってくれて。そんな風に大事に作ったリンコをふとしたことで簡単に逃してしまいそうな恐れがあったので、現場ではとにかく静かにして丁寧に演じるようにしていました」
文/奥村百恵
「彼らが本気で編むときは、」は2月25日公開予定
第67回ベルリン国際映画祭「テディ審査員特別賞」「観客賞(2nd place)」ダブル受賞!(パノラマ部門、ジェネレーション部門 正式出品作品)
脚本・監督:荻上直子
出演:生田斗真 桐谷健太 柿原りんか ほか
© 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会
公式HP
初出:しごとなでしこ