美しき日仏ダンサーズによる美の饗宴
2025年3月のパリでの公演にて、パリ・オペラ座バレエ団を退団するエトワール、マチュー・ガニオ。王子のようなルックス・繊細な踊り・深い芝居心で多くの人々の心を離しません。なんとその彼がこの新年、日本のダンサーズとコラボレーションしました! コラボレーションの相手は元宝塚トップスター、日本が誇るバレリーナと、舞台ファンにはたまらない公演となりました。
パリ・オペラ座「マイヤーリンク」公開稽古の様子
この秋、パリ・オペラ座では数年ぶりに「マイヤーリンク」が上演されました。こちらは公開稽古の様子。悩めるハプスブルク家のルドルフ皇太子役をマチュー・ガニオが、その母エリザベート役をエロイーズ・ブルドンが演じました。
公開稽古は、ダンサーズの役作りや表現方法を作り上げていく工程を、間近で見られる貴重な機会。イギリス人の演出家が、ストーリーを大事にしながらどう表現するとより良くなるか、丁寧にアドバイスされていました。
このマイヤーリンク、今からご紹介する「マチュー・ガニオ スペシャル・ガラ ニューイヤーコンサート」の公演に大きくリンクしているのです。というのも、スペシャルガラに出演した元宝塚トップスター 柚香光さんが、マチュー・ガニオが演じた「ルドルフ」を宝塚での舞台で2度も演じているのです。(『エリザベート』『うたかたの恋』にルドルフとして出演)
崩れゆくハプスブルク家の未来を憂い、繊細がゆえに自決してしまった皇太子ルドルフ。バレエでは「マイヤーリンク」、ミュージカルでは「エリザベート」、宝塚では「うたかたの恋」・・と様々な演目で登場します。私はフランス・日本でそれぞれの公演を観劇していたため、「国・性別も異なるこの2人のアーティストが同じ役を演じ、そして日本の同じ舞台で共演するなんて不思議で素敵なことだ!」と驚きと感動の想いでした。
公演では、息を呑むようなラストシーンでルドルフの苦しみを見事に表現したマチュー・ガニオ
公開稽古で、真摯に熱心に、観客からの質問に答えていたマチュー・ガニオ。彼は美しい踊りで魅せることだけでなく、コツコツ丁寧にキャラクターの持つ感情をアウトプットすることを大切にされているのだな、と感じました。
その繊細な芝居心は、本番の公演では涙なしでは見られないほど、観客に熱く伝わるものでした。公演中はストーリー上、苦しい表情のシーンが多いダンサーズも、ほっと朗らかな表情を浮かべて。
柚香光・上野水香・世界のトップダンサーズとのコラボレーション
宝塚の舞台でルドルフを演じてきた元宝塚トップスター柚香光さん、日本が誇るバレエダンサー上野水香さん、世界で活躍するダンサーズが、マチュー・ガニオと共演した今回のスペシャルガラ。本公演は千秋楽を迎えましたが、彼らのプロフィール・インタビューが詳しく掲載されている、こちらのオフィシャルページ「マチュー・ガニオ スペシャル・ガラ ニューイヤーコンサート」をぜひチェックしてください!
柚香光さんは、重力を感じさせない軽やかな踊りが持ち味のダンサー。元男役をされていた経験を生かして、2つの性を行き来しながらマチュー・ガニオと新たな踊りの世界を表現されたようです。宝塚という日本独自の舞台芸術出身の彼女とフランスの舞台芸術を牽引してきたエトワールの彼。2人の魅力が融合した「ダンス」は、舞台芸術の可能性と比類ない美しさを、私たちに魅せてくれたのだと思います。
マチュー・ガニオは2025年8月にも、京都バレエ団との公演を控えています。パリ・オペラ座バレエ団を退団する後も、様々なアーティストやバレエ団と組んで、私たちを魅了してくれるのではないでしょうか。
宝塚を退団して新たな道を歩み始めたアーティスト・柚香光さん、そしてもうすぐ退団を控え、これからの活動に注目が集まるマチュー・ガニオ。美しいこの2人のこれからの活躍に目が離せず、胸が高鳴ります!
Ayami Okura
パリ在住スタイリスト・エディター。ファッション&ライフスタイルの記事を通して、「フランスの今」をお届けします。
instagram:@ayamiokura