【働く私にMusik】多彩な歌手活動、女優としても活躍する平原綾香さんの今を深堀り

Guest Musician:平原綾香(ひらはら・あやか)
1984年、東京生まれ。2003年、ホルストの組曲『惑星』の『木星』に日本語詞をつけた『Jupiter』でデビュー。ドラマ主題歌やクラシックカバーなど、多彩な歌手活動を行う一方、ドラマやミュージカルなど女優としても活躍。
平原綾香さんの軌跡
2003年—ホルストの組曲『惑星』の『木星』に日本語詞をつけた『Jupiter』でデビュー
2004年—『Jupiter』の大ヒットで第55回NHK紅白歌合戦に初出場
2008年—主題歌『ノクターン』を歌ったドラマ『風のガーデン』で女優デビュー
2009年—全曲クラシック曲のカバーアルバム『my Classics!』をリリース
2011年—NHK連続テレビ小説『おひさま』の主題歌『おひさま~大切なあなたへ』をリリース
2014年—『オペラ座の怪人』の続編となる『ラブ・ネバー・ダイ』でミュージカルデビュー
2023年—デビュー20周年アニバーサリーアルバム『A-ya!』をリリース
《Oggiライブ後》歌手・平原綾香さんのこれまでとこれからをインタビュー

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今を楽しむことの大切さを改めて感じさせられた
サッシャさん(以下、S): Oggi Liveぶりの再会! 記念すべきライブを開催した場所で、こうして再びインタビューすることができてうれしいです。改めて、素敵なライブをありがとうございました!
平原さん(以下、H):こちらこそ! 本当に楽しい夜でした。〝仕事帰りにライブを楽しむ〟というコンセプトのもと、たくさんの働く女性が来てくださいましたが、皆さんのうれしそうな顔が忘れられなくて。
好きなことをする、今を楽しむということがいかに大切かを改めて感じられました。これは当日のステージで自然に出てしまった言葉なんですけど、まさに〝体験できるファッション誌〟でしたね。
S:名キャッチ! コロナ禍でこうしたイベントができない時期があったから、想いがより強く感じられました。
H:さまざまな仕事が延期や中止になったときも、「心の豊かさだけは忘れないようにしよう」とずっと思い続けていたんです。そんな、心の豊かさが客席から伝わってくる夜でした。
S:客席から感じた熱い思いを音楽で返す… 感情を揺さぶられる平原さんの歌あってこそ、でしたよ。
H:サッシャさんや客席のみなさんの温かさに触れて、ふだん話さないことも、あの日は心の翼を広げてお話できました。泣いている方もいて、うれしかったですね。おしゃれをして、音楽と食を楽しむ。私もお客さんとして参加したいくらい、本当にいいイベントでした。
歌手としてのデビューもチャレンジのひとつだった
S:好きなことを楽しむお客さんの笑顔が印象的だった… ということですが、現在の平原さんはいかがですか? 好きなことを追求できていますか?
H:はい、追求できています。だけど、正しくは〝挑戦している〟かも。デビューからずっとチャレンジの連続ですから。

S:もともとはお父様のようなサックスプレーヤーを目指していたことを考えると、歌手デビューする…〝歌う〟ことも挑戦だったわけですよね。
H:そうなんです。できないことに挑戦して、新しい自分に出会う… その繰り返し。でも、頑張ることが好きなんですよ。周りが面倒に思うことも好きに感じるタイプというか… たとえば、学校の遠足のしおりを進んでつくりたがるような(笑)。
S:あ! クラスにひとりいると助かるタイプだ!(笑)
H:そういう自分がイヤだなと思ったこともありました。でも、できないことを追求していく性格は、巡り巡って自分の仕事のプラスになっているから、報われているなって思うんですよね。
S:歌手デビュー曲『Jupiter』は、いきなりの大ヒットでしたね。
H:当時、授業でホルスト作曲の『木星』を聴き、涙が止まりませんでした。デビュー曲として歌わせてほしいとお願いし、2001年に起きた9・11事件のこと、難病を抱える少女アシュリー・ヘギちゃんの生き方、その当時自分が抱えていた心の中にある葛藤を歌詞に込めました。世界中が混とんとする中で、人々の心が少しでもあったかくなるような歌を歌いたいと思っていました。
S:その思いは、本当に多くの人に届きましたね。
H:何がすごくて何が普通なのか、当時の私にはわからなくて。周りの人たちが喜んでくれている姿を見て「これはいいことなんだ」と思っていました。
自分の色を決めつけて自らの可能性を狭めていた
S:インパクトの強いデビューでしたが、次のステップに進むことは難しくなかったですか?
H:大学に通いながら音楽活動をする、今まで使ってこなかった声帯を酷使する…という日々が続いて、次に何をしようかと考える暇がなかったですね。とはいえ、歌いたい曲のイメージは明確にありましたし、逆に、歌いたくない・歌えないと感じる曲もありました。

S:自分が歌うべきではない、自分以外にもっと歌える人がいる… と?
H:そうです。たとえばラブソングとか。「私にはまだ早い!」って、なんだか恥ずかしかったんですよね(笑)。自分が望んでいる雰囲気とは異なる曲を提案されて、それをイヤだなと思う時期もありました。そんなとき、「あーやが歌えばあーやの歌になるんだから、なんでもチャレンジしてみたら?」と母が声をかけてくれたんです。
S:素敵なアドバイス!
H:私は自分の色を勝手に決めつけて、自分の可能性を自ら狭めてしまっていたんだなと。その言葉をきっかけに歌うことにした曲は、いまだに世界中の人が愛してくださっていて。あぁ、歌ってよかったなと思うんです。
S:自分のことって、意外に自分ではわからないんですよね。特に若いころは自分の可能性を決めつけがちというか。
やりたいことをやって、今の自分を楽しんでほしい
S:さまざまな挑戦を重ねてきた平原さんにお聞きしたい! Oggiは「働く30代」を主なターゲットにしている雑誌なのですが、ご自身の30代を振り返ってのアドバイスなどありますか?
H:「この服はもうちょっとやせてから着よう」なんて考えることもあると思うんですけど、それはもう今着てください!です(笑)。
S:すごく力強いアドバイスだけど、どういうこと!?(笑)
H:「いつか幸せになるんじゃなくて、今幸せになりなさい」——これは母から掛けられていた言葉なんですけど、この意味が40代を迎えるとよくわかるんです。どんな状況に置かれていたとしても、今を幸せに過ごすことが未来につながる。
亡くなった父が闘病していたとき、「病気が治ったら幸せになれる」ではなくて「今、父と一緒にいられることが幸せ」と思うようになったら、すごく幸せになれたんです。もしそのとき、泣き暮らしていたとしたら、父が生きていた時間を幸せだと感じていられなかったら… すごく後悔したと思います。
S:今を幸せに生きることが大事なんですね。
H:だって、30代のときに「やせたい」と思っても、40代のほうが太ってるかもしれないでしょ?(笑) だから、やりたいことをやって、いっぱいおしゃれをして、今の自分を楽しむ。難しい、恥ずかしいと思うことも、腹を括ってやってしまえば、割とうまくいくものだから。
S:今を楽しみながら、平原さんがこれから挑戦していきたいこととは?
H:世界中でコンサートをしたいです。ミャンマー語やロシア語、最近は中国語にもチャレンジしました。現地の言葉で歌うと、すごく喜んでもらえるんですよ。現地の言葉で歌うことも意識しながら、海外で歌う機会はこれからも定期的につくっていきたいなと思っています。

S:最近は、SNSやストリーミングサービスが拡大したことでも、海外はより近くなりましたしね。ビルボードでも、英語以外の曲がどんどんチャートに入るようになりましたし、現地の言語で聴いてもらう、日本語で聴いてもらう…その両方の道ができたことで、音楽の世界はグッと広がったように感じます。
H:世界に向けての音楽プロモーションは、以前よりは少しだけハードルが低くなってきたのかなと思います。スマートフォンやパソコンひとつで、世界中の音楽を聴くことができるのですから。でもその一方で、「生の演奏を聴きたい、届けたい」という思いがとても強くなりました。
SNSで耳にして気に入った曲があったとしても、加工や編集がされていない演奏や歌唱が聴きたいですし、音楽には同じ空間で聴くことでしか伝わらないものが必ずあるので、コンサートに来ていただいて、生の演奏をたくさんの方に聴いてもらいたいと思っています。
S:Oggi Liveで感じられた〝心の豊かさ〟にもつながる話ですよね。夢は世界ツアー! さらに広がっていく平原さんの歌が楽しみです!
◆サッシャさんが語る! 「インタビュー後」談話もチェック!
サッシャさんがお届けする“あとがき”ならぬ“あと語り”コーナー。サッシャさんの肉声によるインタビュー後コメントはこちら!
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[平原さん分]ワンピース¥576,400(ラルフ ローレン〈ラルフ ローレン コレクション〉) 靴¥140,800(クリスチャン ルブタン ジャパン〈クリスチャン ルブタン〉) イヤーカフ¥231,000・ネックレス¥847,000・リング[右手人差し指]¥506,000・リング[右手中指]¥814,000・リング[左手]¥231,000(フレッド カスタマーサービス〈フレッド〉)
[サッシャさん分]ジャケット¥495,000(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン〈イザイア〉) その他/スタイリスト私物
2024年Oggi7月号「働く私にMusik」より
撮影/曽根将樹(PEACE MONKEY) スタイリスト/角田今日子(平原さん分)、久保コウヘイ(サッシャさん分)ヘア&メイク/Hiromi(平原さん分)・新地琢磨(Sui/サッシャさん分) 構成/旧井菜月
再構成/Oggi.jp編集部
