元花組男役として研鑽を積んできたふたりによる本音トーク。必読なこぼれ話も!
男役スター時代は「花組のアニキ」として熱くてクールな魅力を振りまき、観客の目をクギヅケにしていた元タカラジェンヌの瀬戸かずやさん。惜しまれながら2021年7月に宝塚歌劇団を退団し、11月に宝塚歌劇 花組・月組100周年記念公演『Greatest Moment』で退団後初となる舞台出演を経て、2022年4月〜5月にはファーストコンサート『The ALSTROEMERIA –アルストロメリア–』でステージの真ん中に。
実は瀬戸さんは、Oggi専属読者モデルの力丸莉帆さんのタカラヅカ時代の先輩。組配属から退団まで、ずっと花組で過ごしてきたふたり。「私たちが研1(入団1年目のこと)のときに、かずやさんたちの期が新人公演(入団7年目までのメンバーたちだけで行う公演)の長だったんです。男役として目指すべき姿、大切なことを直接教わりました」と力丸さん。退団して約8ヶ月を過ぎた瀬戸さんのリアルな気持ちや、コンサートへの意気込みなど、詳しくお話をうかがいました。
◆男役を卒業してからのファーストコンサート。化学変化を楽しみたい
力丸さん:今日はよろしくお願いします(笑)。
瀬戸さん:ふふふ、不思議な感じ(笑)。
力丸さん:まず、ファーストコンサートの開催、おめでとうございます! ヤン(ANJU)さんの構成・演出・振付ということで、とてもカッコよくなりそうです。
瀬戸さん:まず、(宝塚歌劇)在団中からヤンさんはさまざまな作品の振付に携わってくださっていたので、「瀬戸かずやはこういう人である」というのをある程度わかってくださっていると思っています。“男役・瀬戸かずや”を卒業し、ただの“瀬戸かずや”としてどんな表現ができるんだろうと考えたときに、ヤンさんなら新しい私の姿を引き出してくださるのではないかと思って今回お願いしたんです。
力丸さん:私も現役時代にヤンさんにお世話になりました。とてもカッコいい振りが多くて。
瀬戸さん:ヤンさんの(振付の)場面にオラオラと出るのが楽しくてね。『CONGA!!』(2012年花組大劇場公演)の海賊の場面、覚えてる? 「男役してるなー! フー!!」って変なスイッチが入る瞬間があって(笑)。
力丸さん:はい、覚えてます! 私はまだ研3で緊張していました。
瀬戸さん:緊張感と、でもヤンさんの振付で踊れることの高揚感もあって。今回このような機会をいただけて本当にうれしいです。ほかに、(タカラヅカ時代からつながりのある)三井(聡)先生も振付しつつ出演もしてくださるので、いろんな方向から“新・瀬戸かずや”を引っ張り出してくださるんじゃないかと思います。宝塚歌劇では女性との共演でしたが、このコンサートで初めて男性のいる舞台に立ちます。きっと、新たな見え方や考え方、感じ方があるんじゃないかなと、緊張しつつも楽しみにしています。
力丸さん:ヤンさんが演出もされるとのことで、かずやさんも楽曲など提案されるんですか?
瀬戸さん:「この曲を歌うよ」というのはまだ秘密なんですけど(笑)、現役時代の懐かしい曲もあります。実はね、お互いに持っていった曲がヤンさんと同じだったの! 私が「すみません、まだ1曲しか思いつかないんですけど…」って出した曲と、ヤンさんが「これ、合うと思うんだよね」って出してくださった曲が一緒で、そんなことある!?、って大騒ぎしちゃいました。
力丸さん:なんかそれ、感動ですね! 以心伝心というか。編集部から、「GLAYの曲は入れないのですか」と質問がきています(笑)。
瀬戸さん:あはは、ファンだったからね、巷では有名ですよね(笑)。せっかくだから挑戦できたら面白いですよね。
力丸さん:共演者の方も豪華ですね。くみ(※)さんもいらっしゃって。(※芽吹幸奈(めぶき・ゆきな)さん。瀬戸さん・力丸さんと同じ花組で、瀬戸さんと同じ90期。2019年に宝塚歌劇団を退団)
瀬戸さん:くみさんは今、曲を作ったり、振付や演出をしたり、作った曲をYouTubeに上げたりと、いろいろな形で頑張っていて同期として誇らしいです。今はなかなか会えていないのだけど、いざ会ったら瞬時に昔の関係に戻れるじゃない、同期って。だから、今回のように初めてづくしの中、そんな存在がいてくれることがとてつもなく心強い。全力で甘えようと思ってます(笑)。
力丸さん:おふたりはもう、話さなくてもお互いになにを考えているかわかるでしょうし(笑)。
瀬戸さん:そう。「あ、この子、今お腹空いているな」とか空気でわかる。そんな顔を見て、ごはんをあげたくなっちゃうの(笑)。
力丸さん:スペシャルゲストの真琴つばささんと真飛 聖(まとぶ・せい)さんについてもうかがいたいです。
瀬戸さん:元月組トップスターの真琴さんは私が憧れてやまない方で、真飛さんは私の在団時に花組トップスターとして組を率いていらした方のひとり。真琴さんに対してはファンである私、真飛さんに対しては花組の組子(メンバー)である私と、おふたりに対してそれぞれ瀬戸のポジションが違うんですよ。真琴さんには「ひゃーーーーー!」って感じで、真飛さんには「ゆうさーん、あのときは○○でしたね」と、懐かしさを覚える感じ。だから、それぞれの回でまったく違う自分になるんじゃないかと思っています。おふたりに出演を引き受けていただいたことがなによりも幸せで胸がいっぱいですし、実際にお会いして作品を一緒につくれる時間があるのだと思うと震えるよう。細胞レベルで楽しんで、全部記憶しておきたいと思います。
力丸さん:真琴つばささんが、瀬戸さんは「愛され続けている」と、コメントされた記事を見ました。
瀬戸さん:そのようなことをマミさん(真琴つばささん)に言っていただけて、本当に光栄だなと思います。私も愛しています、永遠に!
力丸さん:いろいろ熱い思いをうかがいましたが、意気込みをお願いします!
瀬戸さん:男役を卒業して歩き出し、どんな化学変化を起こして、どんな新しい自分に出会えるのか。“ひとりの女性”である面を意識して研究したりつくったりすることは今までなかったのですが、今ちょうど意識を切り替える段階。今しかない、その変化の第一歩をこのコンサートでお見せできるのではないかと思います。不安もあるのですが、変化していく自分を見てみたいし、お客さまに感じていただくのも楽しみ。
力丸さん:昨年11月の『Greatest Moment』を鑑賞しましたが、あのときは退団したばかりのかずやさんでしたから、きっとまた違う魅力が感じられそうですね。
瀬戸さん:全力で頑張ります。
力丸さん:真琴さん、真飛さん、それぞれ違う種類の化学変化が起こりそうですよね。
瀬戸さん:そうですね。自分でもその差にびっくりするかもしれない。「私、こんなことになってる…!」ていうくらい(笑)。新たな瀬戸かずやが見え隠れする気がします。
◆仕事もファッションもヘアスタイルも、ぐんと可能性が広がった!
力丸さん:『Oggi』は働く女性をターゲットにしている雑誌なのですが、かずやさんはこれからどのように仕事と向き合っていきたいですか?
瀬戸さん:「これをしたい」という大きな目標はまだ見えていないんです。でも、タカラヅカを卒業したからこそ、なんでもできる。自分で選んでいかなければならないことは怖くもあるけれど、可能性はたくさんあるんだと思ったらやっぱり楽しみです。なんでもやってみたいし、いろいろなことに挑戦してみたいと考えていて、そのひとつがもうすぐ本番を迎えるコンサートですね。男役の引き出ししか持っていない私がなにかを表現することで発見があり、そして「こんなことにチャレンジしたい」という明確なものを見つけたいなと思っています。先のことはまだ漠然としているけれど、今はとにかくコンサートに向けて全力で取り組み、そこからまた新しいものに触れていきたいな。
力丸さん:かずやさんは不思議です。現役時代はめちゃくちゃゴリゴリにカッコよくて、誰よりも男役だったじゃないですか。なのに今お会いするとなんかこう、違和感なく柔らかい雰囲気に変わっていて。男役から女性へ変わるのって難しくないですか?
瀬戸さん:難しいよ?
力丸さん:全然、そんな感じしないです。女子力が高いのかな…。
瀬戸さん:あはは。女子力は必死なんですけどね(笑)。突然、この年齢で世の中(タカラヅカの外の世界)に出て、女性としての作法をなにも知らなかったんですよ。大学にも行っていないし社会人として経験を積んできたわけでもないし、タカラヅカのことしか知らなかった自分に焦りました。こんなときはどうしたらいいのか、こういうときの服装はとか、とにかくいろいろ調べて。でもファッションは嫌いじゃなかったから「こんなのに挑戦できる!」と、ジャンルが広がって楽しいです。
力丸さん:選ぶものは今までと全然違いますか?
瀬戸さん:まだ買い物に行けていなくてもっぱらネットなんですけど。今までずっとメンズ服しか着ていなかったんですよ、サイズ的にも。今、レディースのサイズ選びが難しいの。「フリーって書いてあるけどフリーじゃないでしょ!?」みたいな。各部位の長さを絶対に見ないとダメ。フリーサイズは安易に買えない(笑)。
力丸さん:そうか、かずやさんはスタイルがいいからそんな苦労があるんですね。
瀬戸さん:でも面白くなってきてね。このブランドならこのサイズが入るんだとか、ここだと丈が短めだなとか、いろいろわかってくるの。
力丸さん:ネットだと返品できるところが多いですもんね。
瀬戸さん:そうそう、サイズが合わなかったらすぐに返す(笑)。もうちょっと世の中が落ち着いてゆっくり街を歩けるようになったら、ショッピングに行くのが楽しみです。
力丸さん:今日のものは衣装ですが、いつもはどんな服装をされているんですか?
瀬戸さん:いつもはもうスカートをはいているんですよ。
力丸さん:えー! 見たい!
瀬戸さん:楽ちんでびっくりしてる。パンツしかはいてこなかったから、ここ20年。
力丸さん:楽ですよね。ワンピースは着ましたか?
瀬戸さん:スポン! 完成!、ってなる(笑)。
力丸さん:楽屋着の状態ですもんね。
瀬戸さん:そうそう。スカートもいろいろな形や丈やテイストがあって、自分に似合うもの似合わないものがある中で、失敗して学んでいくんだろうなと思っています。もちろんパンツスタイルもいいしね。
力丸さん:パンツもはき方が変わってきますよね。合わせるものとか。
瀬戸さん:靴選びがすごく難しいの。現役時代は、26cmのゴツめのメンズシューズを履いていました。爪先が余っていたけど、バランス的に足元が大きい方がよかったんですよ。でもレディスの服とはそういう靴がまったく合わなくて。足元だけ急にゴツいのがおかしいの。女子の場合は逆で、足元が華奢じゃないですか。こんなにもバランスが変わってしまうんだとびっくりしました。持っている靴が意外に使えなくて、その打開策がまだ見つかっていないの。うまいこと使えたら面白くコーディネートできそうだなと思っているので。
力丸さん:かずやさんチョイスの着こなしを見るのが楽しみです。髪の長さでも洋服のバランスが変わってきませんか?
瀬戸さん:はやくのばしたくてー。なっち(元花組娘役の更紗那知/さらさ・なちさん)、また短くなってたね。何年もロングをやってきた娘役の子たちは退団したら短く切り、ずっとショートだった私たち男役は長い髪に憧れる(笑)。反動がすごいんだと思います。
力丸さん:くみさんもボブですもんね。ロングのイメージしかなかったのに。
瀬戸さん:徐々に短くなっていってるよね。髪が長いと大変だけど、ちょっと味わってみたいじゃない?
力丸さん:なびく髪を。
瀬戸さん:そうそう。今のこの髪の長さですでに初めての経験なので、対策に困ることもあるけど(笑)。でもそんな変化を楽しみながら、日々生きています。
力丸さん:かずやさんが魅力を感じる女性はどんな方ですか?
瀬戸さん:そうだなぁ…、自分の信念をもって走り続けている人。ブレない人。自分自身がブレブレだから、カッコいいと思う。そうあり続けることは大変だと思うけれど、だからこそ素敵だから憧れます。まだ女性1年生だからね(笑)。
力丸さん:世間の人が思っている以上に、男役が女性に戻るのって大変ですよね。
瀬戸さん:私自身が“女性”に戻ったとしても、ファンの皆さんのイメージがそのスピードに追いつかず時差があると違和感をもってしまうと思うので、その感覚が難しいですね。急にスカート姿になって「女子になりました!」というのもちょっと違うかもしれない、でも私自身は変わっているからそれを受け止めてほしい気持ちがあったりもする。でも、「やるときはやるよ」(イケボ)と男役の引き出しはすぐに取り出せるので、まぁ、模索しているところではあります。本名の自分と芸名の瀬戸かずやとが寄り添ってきて、ひとつの軸になれたら新しいものが見えてくるかもしれない。いい頃合いの“瀬戸かずや”として、私らしいあり方を見つけられたらいいなと思っています。
力丸さん:楽しみです。
瀬戸さん:私も(笑)。
力丸さん:ここで、某花組生からの質問です。「背中で語れる男役になりたいとよく言われてきましたが、退団後の新たなキャッチフレーズをつけるとしたらなんですか?」だそうです。誰からの質問かわかりましたか?
瀬戸さん:○○○?
力丸さん:正解です、すごい! それにしても無茶振りですよね。
瀬戸さん:えー、なにがいいだろう…。「女だって背中で語る」。背中で語る女にどんな魅力があるかわからないけど、骨格は変わらないので(笑)。背中美人になります!
力丸さん:見返り美人という言葉もありますもんね。退団したら生活がガラッと変わるじゃないですか、時間の流れとか。それはもう慣れましたか?
瀬戸さん:今、懸命に「これでいいんだよ」と言い聞かせています。現役の頃のように「なにか足りていないんじゃないか」「あれやならなきゃ」とすぐに動き出しそうになるのですが、「今日の予定はひとつだよ、ゆっくりしていいんだよ」と体のいろんなところに伝えて。それでも1日に密にレッスンを入れてしまったりするんですけど、それはそれでいいかなとも思っています。
力丸さん:急に時間の流れが変わっても、自分はそんなに変えられないですもんね。
瀬戸さん:そうですね。一度ゆっくり休んでみようかと思ったのですが、動かないと体がおかしくなってしまうから。ある程度動いていた方がいいし、今はコンサートに向けて鍛えたり。今踊れっていわれたら、無理じゃない?
力丸さん:(即答で)絶対無理です。たぶん開脚すらできないです。
瀬戸さん:無理だよね(笑)。だから今、筋肉を目覚めさせているところ。本番に向けて、きちんと体をつくっていきたいなと思っています。
力丸さん:あの…、かずやさんの手があまりにも女性らしくなっているんですよ。へちょんへちょんの研1のとき、かずやさんたち90期が新人公演の長の期で。かずやさんは新公の主演(『麗しのサブリナ』)もされていて、いちばんお忙しい中、つきっきりで教えてくださったんですよ。『EXCITER!!』のプロローグの場面とか。私は体も小さくて手も小さくて、でもかずやさんが「ここで見せるしかないよ、りほちゃん」と言ってくださって。手の甲の筋の出し方を「こうやってやるんだよ」って教えていただきました。
瀬戸さん:指を開いて力を入れ、手のひらをへこませるんですよ。
(ここで瀬戸さんが実践! 男役らしい手の甲の筋を出してくれました。手のひらを見ると、ボールが入るくらいへこんでいました)
瀬戸さん:私は親指を手首の方に寄せないと、力強いパーにならないの。これ、久々に出したね(笑)。
力丸さん:この手に憧れて、私も男役をやってきたことが思い出されます。筋が消えてなだらかになり、今はとっても女性らしい手です。
瀬戸さん:それ、ネイルをやり始めたからかもしれない。男役のときはとにかく開け!、って感じだったけれど、指をスッとのばしてまじまじと見てみると「自分はこんな手だったんだな」と思います。
力丸さん:はい、とってもキレイな手だと思います。男役の頃のかずやさんの手も、今のしなやかな手も。コンサートの見どころとして、手など細かい部分にも注目したいです。
瀬戸さん:そうですね、使い方が変わってくるかなと思います。
力丸さん:新しいかずやさんが拝見できることを心待ちにしています。今日はありがとうございました!
* * *
撮影中に力丸さんが「かずやさん、穏やかな表情になってます。目が違うのかな」と声をかけたところ、「黒のアイライナーが使えなくなった、強すぎる気がして」と今のメイク事情を明かしてくれるひと幕も。まずはファーストコンサート。男役の代表のような男役だった瀬戸さんが新たな魅力を身にまとい、化学変化を起こしていく姿が楽しみです!
(瀬戸さん衣装)
ワンピース¥59,400・パンツ¥42,900(M〈UJOH〉) スタッズネックレス¥37,400・プレートネックレス¥63,800・イヤリング¥35,200・バングル¥41,800・リング¥14,300(e.m.青山店) 靴/スタイリスト私物
【問い合わせ先】
e.m.PRESS ROOM 03-6712-6798
M 03-6721-0406
撮影/小倉雄一郎 スタイリスト/綾部秀美 ヘア&メイク/沖山吾一 構成・文/淡路裕子
Kazuya SETO 1st concert『The ALSTROEMERIA –アルストロメリア–』開催
■出演:瀬戸かずや
三井 聡、芽吹幸奈
笙乃茅桜、井上弥子、大場陽介、中島康宏
真琴つばさ(スペシャルゲスト 東京:5/1(日) 13時、大阪:5/7(土) 13時出演)
真飛 聖(スペシャルゲスト 東京:4/30(土) 13時、17時出演)
■構成・演出・振付:ANJU
■日程・会場:
【東京】2022年4月29日(金・祝)~5月1日(日) サンシャイン劇場
【大阪】2022年5月6日(金)~5月7日(土) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
■一般発売:2022年3月26日(土)
■料金:
【東京】S席10,000円、A席6,000円
【大阪】全席10,000 円
(全席指定・税込み)
■公式HP
■お問合せ:梅田芸術劇場(東京)0570-077-039、(大阪)06-6377-3888
■企画・制作・主催:タカラヅカ・ライブ・ネクスト 梅田芸術劇場
オッジェンヌ 力丸莉帆
福岡県出身。9年間宝塚歌劇団に所属していたという華やかな経歴の持ち主で、退団後は不動産関連会社で主に広報を担当。いちばんの趣味は舞台鑑賞!
インスタグラムはこちら:@riho.r0911