大変だった2020年に開店したカレー名店特集
2020年も残りわずか…。前回に引き続き、2020年のカレー業界を振り返ります。
2020年、自粛期間を経て、個人的に思ったことがあります。僕は外食が大好きです。個人的な話ですが、僕は飲食店で働いていた経験があり、調理師免許も所得しているので自分でもカレーを作ることはできます。しかし、自分で作ったカレーは物理的にではなく、精神的に美味しくないのです。
他の人が作ってくれたカレーこそ美味しいのだとは、カレー作りを日常的にしている多くのシェフが異口同音に発するところですし、僕もその通りだと思います。
またテイクアウトして家で食べるカレーもそれに近い感覚です。味は自分で作ったものよりも確実に美味しいのですが、自宅で食べるとどうしても味気なく感じてしまうというか、何かで補完できない物足りなさがあるのです。好きなお店は、味のみならず、そのお店の雰囲気、そしてお店へ行くまでの道のりまで含めて好きなのだと、改めて感じる一年でした。
この混乱の2020年に、十分な感染防止対策をした上で足を運んだニューオープンのお店の中から、特に印象深かったお店をいくつか紹介します。
◆【神保町】ビストロべっぴん舎 神保町
神保町の人気店「ビストロべっぴん舎」。ついにミシュランビブグルマンも受賞し、その実力に確かな評価が加わりました。そんなべっぴん舎が本店のすぐ近くに2店舗目を出したのはまさしくコロナ禍による影響でした。
元々、現在の本店がある場所は、オリンピック後に再開発予定となっているエリアであり、移転場所を探していた所にやってきたコロナ禍。
移転場所を現在の2号店の場所に決めたところにオリンピック延期も決まり、再開発の話も先送りとなってしました。ちょうど自粛期間だったこともあり、大々的に宣伝もしにくいので、「だったらもうどちらのお店もやってしまおう」ということでスタートしたというお店です。
人員不足により安定的な営業がまだできていないものの、その味の素晴らしさは本店同様。特に僕のお気に入りは牛スジカシミール。店主さんが修業していた柏ボンベイのカシミールにアレンジを加え、ここにしかないオリジナルカシミールとなっています。デリー系のカレーが好きな方なら間違いなくハマる美味しさですよ。
▲牛スジカシミールカリー
◆【東京】恋とスパイス 新宿中村屋
2020年は大きな駅の構内、あるいは隣接した場所にカレーのお店ができるという流れがありました。その中でも僕が最も注目しているのが東京駅にできた「恋とスパイス」。こちらはJR東日本と、日本で最初にインドカリーを提供したことで知られる老舗「新宿中村屋」のコラボでオープンしたお店です。
新宿中村屋のカリーをベースに、トッピングで今どきのスパイスカレー的な雰囲気を演出。女性向けに作られたおしゃれな店内。男性向けのメニューもちゃんとあります。
本来ならもっと人気が出てしかるべき場所であり、味だと思います。東京駅直結ということもありますから、何かのついでに立ち寄ることもできるので、もっと多くの方に老舗の新たなる挑戦を味わって欲しいです。
▲恋のチキンカリー(恋盛り)
◆【上板橋】スパイスフォース
業態変更でカレーを出すお店も増えた2020年。こちらのお店は元々肉バルだったのですが、夜の営業が厳しくなり、ランチにカレーを作り出したところから店主さんがカレー作りにハマり、カレー専門店に業態変更したお店です。
行く度に味のレベルが上がり、さまざまなカレーも味わえて最高で、特にビーフカレーの中に含まれるコーンビーフカレーが絶品で、個人的には今年一番のヒット作だと思えるような美味しさであり、何度も通いました。
しかし、大変残念なことに2020年12月末で閉店が決まってしまいました。第三波の影響と、店主さんの体調が芳しくないことが理由とのこと。「しばらく休んで、元気になったらまた何かやりたいです。」と語ってくれましたので、未来に期待しつつ、今のうちに行ける人はぜひ味わってみてください。ただ、体調が芳しくないので不定休となっております。詳しくはお店のSNSで情報を確認してください。
個人的に、今年一番開店してくれて嬉しかったお店であり、今年一番閉店してしまって悲しいお店でもあります。この味をもっと多くの人に知って欲しいです。
▲全種盛
◆【神奈川・戸塚】喫茶ネゴンボ
コロナ禍においても快進撃を続けているのが埼玉のネゴンボ33。新宿ゴールデン街にもお店を出し、埼玉川越にもお店を出しています。その中でも新業態として神奈川の戸塚に出した喫茶ネゴンボがとても面白いと感じました。
朝から夜まで通し営業の喫茶店としてのネゴンボ。ネゴンボ33は、本店の隣に自営のコーヒー専門店も開いていますから、カレーのみならずコーヒーが美味しいのも知る人ぞ知る所。そんなネゴンボの喫茶店なら間違いはないのです。
駅から離れた場所にあるショッピングモールの一階にあるのですが、開放的な空間で居心地も良く、BGMもこだわりの選曲。カレーもコーヒーもスウィーツも美味しい。もし地元にこんなお店があったら週3で通うだろうなと思えるようなお店です。新業態ということで、今後この形のお店が各地に増えて行く可能性もあります。まずはその最初の一歩、体感してください。
▲3種盛カレー
◆【恵比寿】THAI THAN
中目黒で人気のタイ料理店「SOI7」の姉妹店として、炭火焼の料理に力を入れた、こちらのお店が開店したのが2020年の6月。SOI7同様に本格的でありながら名シェフのオンさんがオリジナルのアレンジも加えたタイ料理の数々が最高に美味しい上に、創作系の炭火焼メニューもたまりません。
つくねなど、タイにはない料理も。オーナーの及川さんがお酒好きということもあり、お酒を飲めるタイ料理店という形で新たに準備したところでコロナ禍が巻き起こってしまったというわけです。
料理も美味しく、駅からのアクセスも良く、居心地も良くてお酒も飲めるお店。通常ならもっと人気が出ていてもおかしくないはずなのですが、ゆっくりお酒を飲むというのも憚られるご時世ということもあって、なかなか難しいようです。
お酒は軽く一杯か二杯、炭火焼のつくねをつまみ、最後にカレーでしめれば長時間滞在せずともすみますから、恵比寿界隈の方はぜひ行ってみてください。テイクアウトも対応していますし、事前に予約すればメニューに無いマニアックなタイ料理も注文できます。
▲ゲーンペッ
◆【新宿】極哩
新宿駅直結の地下街にオープンした極哩。こちらは元々、飯田橋の間借りカレーとしてスタートし、一時期は間借りカレー店でありながら都内各地に4店舗も展開する程の人気店でした。しかし、コロナ禍で飯田橋1店舗にまとめました。そんな中、逆にコロナ禍で普段はなかなか空かない新宿駅直結の場所が空いたところに入ったのがこの新店です。
期間限定で2021年3月までの営業の予定ですが、極哩のみならず新宿御苑前のミルリトンカフェも一緒に間借りという形なので、ミルリトンカフェのスパイススウィーツやカフェラテもいただけます。
また、せっかくなので面白いことをやっていきたいということで、全国各地のカレー店とのコラボも積極的に行っています。なかなか旅にも出れないご時世ですが、タイミング次第で大阪や長野など各地のカレーを食べられるチャンスもあるのでSNSをチェックしてみてください。
もちろん極哩のオリジナルカレーも美味しいです。欧風カレーとスパイスカレーの間を行くような絶妙なバランスであり、場所柄もあってカレーマニアではない常連さんも増えているそうですよ。
▲極哩カレー
◆【八丁堀】Wacca
最後にご紹介するのは、この原稿を執筆している時点ではまだ開店していないお店です。大阪から東京は八丁堀に、12月末移転オープンするWacca。大阪のカレーマニアが真っ先にチェックするという某誌において、創作カレー部門でグランプリを受賞した実力店です。
2020年12月頭に池袋の東武百貨店で開催されていたイベントでは、同じく大阪の人気店である旬香唐とコラボし、テイクアウトに特化した蟹出汁キーマ弁当を提供し話題となりました。
この弁当、本当に面白くて、一見蟹弁当に見えて食べてみると確かにカレー。冷めても美味しく、温かくてももちろん美味しいというもの。僕のようなマニアが食べても美味しく、あまりに美味しかったので、普段カレーを食べ慣れていない母にもテイクアウトして食べさせたのですが、「美味しい、美味しい」と喜んでいました。
そんなWaccaの開店が年末に待っているということは、苦難の2020年において嬉しいニュースでもありますね。ちなみに場所は東京都中央区八丁堀2-19-7。2020年12月27日開店予定とのことです。
▲蟹出汁キーマ弁当、ポテトサラダ(旬香唐&Waccaコラボ)
色々と大変で、この大変さがもう少し続きそうな気配もしていますが、どんなことがあっても生きて行かねばなりませんし、生きていれば良い事もまたきっと起こります。
生きていくためにも美味しいものを食べるということは本当に重要なことです。特にカレーは食べることによって免疫力が上がったり、幸せホルモンが分泌されるという学説もあります。このような時期だからこそ食べるべき料理だとも言えるのです。
2021年はもっと楽しくカレーを食べられますように!
AKINO LEE カレーおじさん\(^o^)/
ヴォーカリスト、パフォーマーとして自身の活動の他、様々なアイドルの作詞作曲振付プロデュースを担当。ヴォイストレーナーとして後進の育成にも力を注いでいる。
音楽ライターとしても各種雑誌、ムック本などで執筆を担当。また、カレーおじさん\(^o^)/としても知られ、年間平均1000食以上のカレーを食べてきた経験と知識を活かしてTVや雑誌など各種メディアにおいてカレーについて語っている。
http://www.akinolee.tokyo/