クズエピソードが書籍化!? 家族のひとつの幸せのかたち
お笑いコンビ、2丁拳銃のボケ担当・小堀裕之さん。4人の子供がいながらも、家にはめったに帰らない、給料は渡さない、大酒飲みで浮気者。その言動からつけられたあだ名は「ヘドロパパ」。テレビや雑誌などでも、そのクズっぷりが話題になっています。そんな彼の嫁から言われた名言・迷言が「ヨメイゲン」として書籍化されることになりました。書店に並んでいる夫婦円満本とは逆行した内容になっていながらも、なぜか最後には、ほっこりするような一冊になっています。
◆小堀さんが愛される理由
「ヘドロパパのヨメイゲン クズ夫に放つ嫁の名言&迷言」を読ませていただきました。感想はひと言で表すと、ズルい! 読み始めは、小堀さんのクズっぷりと奥さんの名言&迷言を期待したのに、最後の「30年後の嫁とぼく」で感動するなんて(笑)。こんな風に思えるのは小堀さんの人柄なのかなって思います。
まずは、どんなきっかけでこの本を出されたのでしょうか。
もともと本を出したいっていうのが、夢だったんです。いろんな芸人さんが本を出してますが、僕も芸人として出したいと思っていました。普段小説やポエムっぽいもの、歌詞も書いたりしていて、割と書くことが好きなんですよね。それで、今の僕はヘドロパパってテレビでも言われているし、本の企画として出せるんじゃないかって。誰もクズの小説を読みたないですもんね(笑)
テレビなどで「クズ」「ヘドロパパ」と言われていますが、ご自身ではどう思っていますか。
正直クズの自覚はないし、あったら生活できないと思うんですよね。素直に生きてたら、みんながクズって言うてくれるんで。自分で言うのも違いますが、ピュアなんだと思います。僕はパンクバンドもやっているんですが、ヘドロパパってドブネズミやと思ってて。それこそブルーハーツのリンダリンダの世界だと思うんです。本当にパンクが好きでやってるバンドマンは、見た目とか怖いけどみんなピュア。だから「俺の何が悪いねん、どこがクズやねん」って叫んでるって感じです。
僕は父さんが大嫌いで。ずっと反面教師のような環境で育ったんです。それもあって家族に対しても、父親の立場となったときに、逆に僕の父さんのようになっておいた方が、立派な人間に育つやろなって思ってるんです。これもパンクに通じてるんかな。
この本もそうですが、舞台の脚本も書かれたりしていて、マルチに活動されていますね。ネタはどんなところから生まれてくるのでしょう?
シリアスな場面でも、日常生活でも、リアルな場面で出てくる本当の言葉を大事にしています。ネタ探しって意識的にしているわけではないですけど、そういう場面を切り取るというのは、自然と芸人として身に付いていますね。
この本に出てくる嫁の名言・迷言もそうです。当時のエピソードを含めて、覚えているんですよね。だからいろんな人から言われます。「よく覚えてるな」って。
奥様は働かれてるんですか?
働いてないですね。給料を渡さないとか言われてますが、あれはたまたまだったんですよ。テレビで特集されたとき、給料が少なくて、今月は我慢して欲しいって続いたところにロケが入ったんです。だから払えるときは払ってますよ(笑)。
しかも「今月は多く渡すわ」って給料を渡すと、「え、どうしたん?」って機嫌が良くなったり。僕結構ズルいんですよ(笑)
この本には奥様からのお話も掲載されていますが、最初から期待していないとおっしゃってますね。
そうですね。周りの人からも「なんであんな人と結婚したんだ」って言われたらしいし(笑)。でも、僕自身クズだからかもしれないですが、誰に対しても初対面からノーガード。お高くとまろうとしてません。もちろん嫁にもそう。おそらく、嫁はストレスなく生活していると思うし、言いたいことを言ってるから我慢もないと思います。それがあってか、楽なんですって。着飾らなくていいから。
お話を聞いたり、本を読んだりしても、なんだかんだ仲が良いと思うんですが、長く続く喧嘩はないですか?
ないですね。基本、僕が謝ろうとしてるので。「そこはちゃうやんけ」とか言いながらも、言いたいことは言わせる。それで最後は謝らなあかんのやろなと思ってます。散々なことやってますしね(笑)
嫁は嘘をつけない人なので、腹立つことがあったら言うんです。ストレスを貯めることが一番よくないって、お互いわかっているので、受け止めなあかんなとも思っています。だから、この本のようにズバズバと鋭いこと言われるんですが…。
クズエピソードを読んできたのに、その優しさはズルい(笑) この本は奥さんを通して、小堀さんの人柄が出ている気がします。
ありがとうございます。作戦通りです(笑)。本の冒頭で、嘘みたいな家族写真が出てくるんですけど、一度読み通して、再度家族写真を見てください。最初の印象とは違って作り物ではない、嘘じゃない家族のかたちがあるんだなって思えます。子供たちもたくましく映るはずです。
インタビューを終えて、もう一度本を読み直してみました。初対面からノーガードだった小堀さんの人柄を感じた上で、どんなことを思うか試したかったから。結果、どうしてもクズでした。でも初読と違うところは、奥様の名言&迷言が優しくて、幸せな家族の様子が見えてきたんです。不思議です。これは小堀さんへの期待値が低いから? 度量の深さを感じたから? 彼のズルさにはまってしまった? きっとみなさんもクセになります。ぜひ味わってみてほしいです。
「ヘドロパパのヨメイゲン ~クズ夫に放つ嫁の名言&迷言」2丁拳銃・小堀裕之著(小学館刊)/¥1,000(税抜)
よしもとの芸人コンビ、2丁拳銃。ボケ担当の小堀裕之。家にはめったに帰らず子ども4人も作っといて一度もおしめを替えたこともなく給料は家に入れず大酒飲みで浮気者。小堀と高校生のときからつきあい始めそのまま結婚してしまったという残念な小堀ひと筋人生、その絶望から放たれる名言&迷言。4人の子ども達の座談会と、嫁へのインタビュー、小堀が渾身の力で描き下ろした「30年後の嫁とぼく」も。笑って泣ける(はず)家庭内夫婦漫才エッセイ。購入はこちら