【北海道・小樽おひとり様旅】宿泊は歴史的建造物をリノベーションしたUnwind Hotel&Bar(アンワインドホテル)
何もかもがうまく行かなくて、むしゃくしゃする時。そして時間だけを持て余している時。
あなたなら何をしますか?
私は飛行機に飛び乗ることにした。
小樽までは新千歳空港から車で約1時間
到着したのは新千歳空港。目的地は小樽。
レンタカーをピックアップし、車の窓を開けて走らせる。
まだ少し冷たい空気に車内がキリッとするけれど、空気を吸いたい。胸いっぱいに。気ままな旅は始まったのだから。
高速道路はびっくりするくらい空いていた。
誰もいない。
世界に一人だけ取り残された気持ちになって、ちょっとぞわぞわする。
ぼーっと走っているつもりなのに、まだまだ都会から引きずってきた緊張感が抜けきらない。
アクセルを強く踏んでいる自分を見つけ、おっと、、踏む力を敢えて弱めてみたりする。
私が目指していたのは、小樽。
古い歴史がそのままに取り残された街。街そのものがどこまでもアンティーク。
そして目的地は、突然視界に現れた。何の違和感なく街にすっかり溶け込んで。
「新しくできた素敵(らしい)ホテル」というふれこみだけで、“行きたい! 行きます!”と、宣言。
実際に訪れてみたら、それは美しい歴史的建造物をリノベーションしたホテルだった。
アンワインド=心のネジを緩める瞬間
アンワインド=心のネジを緩める瞬間。今の私にぴったりだ。中に入る前から、もう“来て良かった”と確信している自分がいる。
外国人専用ホテルとして昭和六年に建築され、戦時中は将校クラブとして陸軍が利用したという歴史ある建物。
何年も放置されていた、かつての高級ホテルをリノベーションしたのが「Unwind Hotel&Bar」なのだ。
90年以上前の建物を活かしつつも、新しさを感じるエントランス。天井は3.7mもあり、コンテンポラリーとクラシックが程よく融合したくつろぎ感。スタッフのこだわりは、夕方から灯されるキャンドルの炎に宿る。
「何年も使われていなかったホテルに初めて足を踏み入れた時は、調度品はすべてそのままで、古いベージュの四角いパソコンなんかも放置されていたんです。こんなに美しく蘇るなんて、スタッフとしても感激です」
答えてくださったのは、札幌と小樽を行き来しながらスタッフ育成に励むエリカさん。
早速お部屋を案内してもらう。
クラシックモダンな雰囲気あるゲストルーム
どの部屋も華美な装飾は一切排除されたシンプルなインテリア。大理石の優しいひんやりとした感触、窓越しの鈍い採光、やわらかな壁紙やベッドカバーのカラーのレイヤー。真鍮のにぶい光がすっきりとした重厚感を部屋に添える。
波佐見焼のカップ、ラッセルホブスのケトル、いい匂いのするファブリックフレッシュ。そしてテレビの代わりにアマゾンを使ったプロジェクター。
個人的に、密かにこだわっている、“バスとトイレが別”であるというのもポイント高し。
夜はバー「IGNIS」へ
ホテル&バーと名乗るその理由は、エントラス脇にあるバー「IGNIS」の存在。
ホテルのバーというと、重たい扉を開けて…と格式が高すぎて躊躇しがち。
でもここのバーは、バー利用だけのビジターも多く、隣同志に座れば自然と会話が生まれ、新しいコミュニティが。
17時〜19時のハッピーアワーはワインが無料!
ところで。
このホテル、何が素敵ってホテルゲストは17時から19時まで、ハッピーアワー! 北海道産を中心にワインが無料で飲めるんです。
こんな配慮が人の心を熱くさせる。素敵だ。
ディナーはダイニングルーム「The Ball」で
夕食はというと、正直、悩む…。だって外に魅惑的な選択肢がたくさんあるんだもの(海の幸を中心にね)。
でも、今回は敢えてこの素敵なダイニングルームを選んだ。
まだ、オープンしたてで、静やかなダイニングルーム「The Ball」。
奥の暖炉に冬は火が灯る。そして、一番に目を引くのが素晴らしいデザインのライティング。
真鍮の直線とぼんぼりのようなライトの丸みのコントラストががコンテンポラリーアートのよう。
部屋といい、このダイニングルームといい、ホテル全体に流れる真鍮、柔らかなトーンのファブリック、そしてシンプルな直線、曲線のリズム。まるで海外にいるような錯覚に陥るほど、洗練された空間。オーナーとスタッフの細部に至るまでのこだわりが感じられる。
北海道の食材を使った魅惑のフレンチ
全てが北海道という地のものにこだわったお料理たち。
北海道はずるいね。だって酪農、農業、水産、どれをとっても一級品だもの。美味しくないはずがない。
お腹いっぱい! ここにして良かった!
ホールスタッフのサーブがまだ少し頼りないのはご愛嬌。1人旅の私にとっては、北海道弁が抜けきらない接客トークが優しく心地良い。
お楽しみは翌日の朝食“モーニングハイティー”!
朝が来た。
気持ちをさらに浄化させるにはランニングが一番!
そして、朝ラン後の私を待っていた朝食はというと…。これまた絶品!
実はホテルのステイ料金には朝食が含まれているんです。なぜって?
それはもちろん、目玉だからです!
見てください! この豪華な朝ごはん。英国のアウタヌーンティー、ハイティーから発想した、モーニングハイティー。かつての外国人専用ホテルとして利用されていたという歴史 をさりげなく感じさせる演出…。
素敵♥ そしてアガる!
選りすぐりの北海道産コーンを使ったスープで、まずは体を温める。甘じょっぱいクリーミーな味わいがラン後の私を癒してくれる(ここでのディナーを食べる機会を失ってしまっても、朝食でリカバーできる仕組みになっているのね!)
朝見るダイニングルームは外の朝日を受け、かつてから遺っていたステンドグラスが誇らしげに輝いていた。
おなかもいっぱい、心もいっぱい。
名残惜しい気持ちを小樽に残したまま、帰路に就く。ゆったりとした時間、もう少し味わっていたかった。
でも、新千歳空港へと向かう高速道路ではたと気づく。
アクセルを深く押す、そんな気ぜわしい自分がもう、いなくなっていることを。都会でささくれ立った気持ちがすっとなくなっていることを。
ほんの16時間くらいの滞在。自然の力。歴史の力。建築の力。
そして細部までの徹底したこだわりの内装。サプライズ感のある華やかな朝食。
そして無骨ながらも温かいサービス。
こういったものは指数やパーセントやらでは測れない。でも確実に旅人の心を捉えるはず。
目に見えない物やことを発信する力。それを信じてここまでこだわっている「Unwind Hotel&Bar」。
ネジを緩めに(アンワインド)また、ぜひ戻ってきたい場所。
札幌の「Unwind Hotel&Bar」も要チェック!
飛行機の時間まで、少し余裕があったので、札幌でいったん車を止める。エリカさんが教えてくれた、札幌のUnwind Hotel&Barへ。
都会の中にたたずむホテルは、小樽とはまた異なる趣き。
冬山の小さなコテージ風。至るところに薪が積まれている。
ファイアープレイスも。寒い冬に外から帰ってきて、みんなでホットワインを片手に囲みたい。
小さなタイルを無数に並べて作られた、エントランスの床。ブラウン&ワインのカラーが心を落ち着かす。
オープン間近! ”ペンドルトンルーム”
写真でお見せできないのが残念ですが、ペンドルトンのネイティブアメリカンなテーストにあふれた部屋がもうじきオープンするとか。
「あと、一つだけ、そう一つだけ変えたい場所があって、まだ公開はしてません」
それがコンプリートするまでは世に出せない。納得いくまでこだわるからこそ、また訪れたくなるというもの。
そして札幌の「Unwind Hotel&Bar」も、小樽同様にHotel&Barならではのおすすめポイントが。
夏はビアテラスとして利用できるルーフトップバー
それはルーフトップバー。全てがネイティブアメリカンを意識した雰囲気で統一。
ここは夏場はビアテラスとして夜も解放。札幌っ子に人気のスポットだそうです。
夏の北海道のステイ先ももう、「Unwind Hotel&Bar」に決めた私です。
黒島美紀子 MKシンディケイツ代表
消費家・商業マーケティングコンサルタント
アパレル、セレクトショップ・百貨店を経て独立起業して早や10年余。数々のお買い物の実践と失敗を繰り返し、ファッション、ビューティ、グルメ、ライフスタイルの動向を消費者目線で考察。また、世界各地の商業スペースやブランドをチェック、消費活動を通じたマーケティングを行い、企業と消費者を結ぶ。