【中村うさぎのお悩み相談室】
「彼とテンションが合わないんです!」
DH 僕はゲイで、6年付き合っている彼がいるんですけど、テンションの差で悩んでます。最初の付き合い始めた頃はイケイケだったのに、今はなんか……。
元々すごく寡黙な口数の少ない方なんですけど、僕のテンションが朝からこれ(高い)なので、「いい加減にして」とか「朝は黙って」とか。2人で街を歩いてても、いきなり黙り出すんですよ。
どうしたの?って聞くと、「今、省エネ中です」とか(笑)。疲れてるから喋らないし、歩く速度も遅くなるし、みたいな。それがずっと最近は続いていて。
中村 そうなったのは、どれくらいから?
DH 付き合って8ヶ月くらいかな。
中村 じゃあ、もう5年くらいテンション低いのね(笑)
DH そうなんです。もう、合わせようがないというか……
中村 向こうに「ちょっと朝は黙ってて」とか「省エネ中」とか言われた時、Dさんは傷つくの?
DH 最初はすごい傷つきました、やっぱり。彼は僕より12歳上で、僕38歳で彼50歳なんですけど。最初はすっごい僕と付き合いたい付き合いたいって言って、毎日僕の職場に迎えに来るみたいな感じだったんです。
中村 ああ、グイグイだったんだ。
「付き合う前の自分は、なかなかすごくて…」
DH そう、すごいグイグイで。僕そんとき8股かけてて、それを、残りの7人には全て「君だけだよ」って言ってて、今付き合ってる彼にだけは「今、あなたを含めて8人と付き合ってます」っていうのを言っていて。だから本当に最悪なことしてた。月曜日はこの人、火曜日は、誰々っていうふうな……
中村 ちょっと待って! 8人もいたら一週間じゃ足りないじゃん(笑)
DH そうなんですよ(笑)。それで、時間があいたときだけ彼と会ってたんですよ。だから本当にパパッと会って、そのあとは月曜日の子とご飯、とか。火曜日だったら、火曜日の子とご飯食べたあとに、今の彼氏と会うとかをやっていて。僕、すごく性的にも朗らかというか(笑)
中村 (笑) オープンなのね。
DH そう。でもある時、3Pをした後に急に虚しくなって、彼に泣きついたんですよ。ブラジル人のカップルにナンパされて3Pをしてきたんだけど、カップル同士とはチューをするのに、僕とはしてくれなかった。まるで塩胡椒みたいに扱われて……
中村 ああー、スパイスみたいに(笑)。要はあなたは2人のセックスの味付けだったのね?
DH そうそう(笑)それで、当時33歳くらいだったんだけど、泣いちゃったんですよ。彼の前で。
「もう3Pなんかするべきじゃない」って。すごいショックで。そのときに彼はもう、全部聞いてくれたんですよ。だからそのときに僕、なんて心の広い人なんだろうと思い、付き合うことを決めたんですよ。
中村 いい話じゃん。
DH で、あとの7人にお別れを告げて、今の方とお付き合いしましょうって言って。まぁ、その時点で、出会ってから10年くらいは既に経ってたんですよね。行きつけのゲイバーが一緒だったんで。
で、その頃の彼はよく喋ってくれてたんですよ。「Dちゃんは何が好きなの?」とか「Dちゃん、じゃあ次は何しようか」って。
でも付き合い始めて8ヶ月くらいでセックスもなくなったんですけど、それとほぼ同時期に「僕は僕、君は君」ていうスタンスがハッキリ出てきて。
だから、「僕は喋らないし、僕は疲れたら休むし、あなたのテンションには合わせられません」みたいな様子が、そこからずっと続いて。
中村 なるほど。毎日職場に迎えにきてくれてたのは、いつの頃? 付き合い始めてから?
DH 付き合う前くらいです。
中村 8股の頃か。
DH そうです、そうです
中村 それはね、あなたが8股かけてたからだよね(笑)
DH そっか。だからか。
中村 そう。求愛期だったわけですよね。ライバルが8人もいるし。あとの7人に負けたくないから、自分がナンバー1になりたいっていう一心でやってたんだと思うの。
でも、もう自分のものになっちゃったからね。他の7人と別れてあなたひとりにしましたって言われたら、じゃあ別に毎日迎えに行くほど必死にやる必要もないか、みたいな……
DH 目標達成しちゃったみたいな?(笑)
釣った魚に餌はくれない!?
中村 そうそう、男ってそうじゃん。キャバ嬢とか狙ってる時はさ、やらしてくれるまでは100万とか普通に使って、やらしてくれたらもう店にも行かなくなるみたいなさ。
DH うんうん(笑)釣った魚には餌やらない?
中村 餌はちょいちょいやるんだけど、そんなご馳走はやらなくていいのかな、みたいな。
DH なるほど
中村 だから最初の8ヶ月くらいは、彼も一生懸命だったと思うよ。あなたが8股かけるような人だから、いつ逃げて行くかわからないじゃない?
たぶん彼は元々「君は君、僕は僕」のマイペースな人だったんだと思うんだけど、ライバルがいる間はすごく無理してたんだと思う。たぶんその当時の彼は、本来の彼らしくなかったんじゃないかな?
DH そうかも。
中村 そうなのよー。すっごく無理してたんだと思うのね。で、なんとあなたが自分のものになったと。でもやっぱり8ヶ月くらいは油断できないから、付き合ってすぐにマイペースを発揮したら「やっぱりつまんない」って他の男に行っちゃうかなと思って頑張ってた。で、8ヶ月くらい経って安定感出てきて、ようやく安心したんじゃない? もう自分らしく振舞っていいのかなって。
それってさ、愛がなくなったっていうより、あなたを信用したっていう解釈もできるよね?
「彼の中で関係が一段あがったんだよ」
DH あー、そっか。
中村 自分が自分らしくいても、この人は離れていかないかも、みたいな。
毎日迎えにきた頃とか、その高いテンションに付き合ってくれてた頃とか、Dちゃんは何が好き? どこ行きたい? とか言ってくれてた頃は、彼なりに頑張ってたけど、やっぱり彼らしくなかった、無理してたんだよ。それがようやく自分らしくしていいのかなって感じなんじゃないかな。
それはね、愛がなくなったとか愛が薄れたとかじゃないのよ。むしろ、安心して自分をさらけ出せる相手として、一段階上がったんだよ、あなたの存在が。
DH でもね、僕は朝から本当にこのテンションなんで「あ、おっはよん♪」とか言うんだけど、彼、ずっと目を瞑って、僕が見えないようにするんですよ。
中村 (笑)
DH それで、「なんで目閉じてんの?」って聞くと、「僕は今、何も見えてません」とか言って、すごいシャットダウンみたいな。
で、旅行とか行ったときも、僕はずっとアクティブに動きたいのに、彼は「ちょっと足が痛いから横になります」みたいな。「ちょっと! 着いたばっかりじゃん!」ってなるんですけど、まぁしょうがないなと思って結局1人で遊びに行ったりしたら、帰ってきてから「どこ行ってたの?」とか聞かれるんですよ。僕、大概ジムに行ってるんですけど。
中村 ああ、ゲイが集まりそうな?
達観したゲイカップルにありがちな愛の形?
DH そうそうそう。スペインとか、結構出会いがあったりとかして、ムフフとかもあったりするんですけど、それはもちろん彼には言わずに、「あ、なんか、今日いい感じ」とかって言ってやると、「あ、へぇ、ふーん」みたいな。全く興味がないわけではないと思うんだけど、べつにすごい興味がありそうでもなく……
中村 いや、それはさ。そりゃそうだよ。だって、ちょいちょい浮気してるわけでしょ? スペインだけじゃなくて。
DH 僕ですか? 僕は…はい!(笑)
中村 だから彼も、うすうす分かってるんでしょ?
DH うん、多分そう思うんですよね。で、もうセックスレスだから、彼はそこは多分目をつぶってる気がするんですよ。
中村 ゲイカップルにありがちなパターンよね。
DH そう、ありがちなアレです、アレなんですけど……(笑)
でも、もうちょっと一緒にあちこち行きたい。一緒に街を歩いてても「充電中です」とか言って座っちゃったり……
中村 ああー。でも、それはわかるっていうか、私も体力ない方だからさ。やっぱり友達と旅行とか行って、いい加減にしろよ、お前ら元気すぎるわって思って、「私はひとりでお茶を飲んでるから勝手にどっか行ってきて」なんてこと、しょっちゅうあるよ。夫とかと香港行ったりすると、すぐ足が疲れちゃうの、私。みんなは元気でさ、「次はどこ行きましょう」とか言ってるんだけど「お願い、疲れたの」みたいな感じで。ひととりでホテルに帰っちゃうこともあるしね。ホテルに帰って少し寝たい、みたいな。
DH なるほど、ああ。
「仕方ないよ。無理ができないだけで、悪気はないからさ。人間衰えるもん」
中村 みんなの体力に付いていけない、みたいな。こればっかりは本当に怒ってるわけでもなんでもなく、体力の限界っていうのが人それぞれ違うから。彼氏、今はもう50歳だっけ?
DH 50です
中村 その年じゃ、やっぱり若い時みたいに遊びまわったりとかできなくなるのよ。みんな40代半ばくらいからね、ガクッと体力の衰えを感じて……
DH そうなんだ
中村 私も2丁目長いじゃないですか。20年くらい前はもうみんなで「イエーイ」みたいな感じで、次の日の朝とか昼くらいまで、転げ回ってたのに……
DH あ~やってた~。
中村 なのに、その頃20代後半から30くらいでめっちゃ元気だった子が、今は50とか40代後半だったりするじゃない? その子たちは軒並み、なんであの頃あんなに元気だったんだろう、みたいになってるよ(笑)。
あんなバカみたいに朝昼まで、全然寝ないでガーガー飲み続けて、大騒ぎして。今とは別人みたい。個人差はあるんだけど、40代半ばくらいにもうガクッと体力落ちちゃって、前のテンションじゃ遊べなくなってくるから。
人間はね、衰えるんですよ。
DH そうなんだー
中村 だから、8年前はまだついていけたかもしれないけど、もうその頃からちょっとさ「Dちゃん若いな、ふぅ」みたいに思ってたんじゃない?
DH そっかぁ。思ってたのかなぁ
中村 うん、で、今では本当に無理して付き合おうにも、無理ができない。だから自分はホテルに帰って寝てます、みたいな。でも別に嫌いなわけでも興味がないわけでもないから、部屋帰ってきたら、今日どうだった?って。本当に私もそうよ。香港とか行って、無理だから帰るってタクシーで帰るじゃないですか。1人で寝てて晩御飯の前くらいに夫とか友達がぞろぞろぞろって帰ってきたら、ベッドの中から「どこ行ってたの?」って一応聞くしさ。で、ここ行ってあそこ行ってって言われたら、いいなぁとは、思うの。思うけど、絶対自分は無理だったな、と。
DH そっかー。ふーん。そうなんだぁ。
中村 だから本当に悪気ないと思うんだ。体力に関しては。すぐ充電モードになってホテルで寝てるとか、年を考えれば仕方ないよ。
Dさんに興味がないんじゃなくて、体力が続かないから。やっぱり自分が足ひっぱっちゃうと悪いからさ、だから自分は自分でマイペースで、ここで休んだり寝たりしてるから、行きたいところがあったら行っていいよっていう……それは「勝手にしとけ」って意味じゃなくて、悪いなと思ってるんだと思うのよ。悪いなって思うから、遊んできていいよって言うし、帰ってきたら、どうだった?って、気を使ってるんだと思うの。でも、そこであんまり根ほり葉ほり聞いて、浮気の話聞かされても嫌だからさ(笑)
DH そうなんだ、そうね(笑)
「あなたに興味がないわけじゃないよ。聞かないっていうか…」
中村 だから、「どこ行ってたの?」とは聞くけど、あんまり詳しくも聞かない、みたいな
DH 聞けないのか(笑)。それ、あるかも。
でも、彼は、僕がすごく臆病だと思ってる節があるんですよ。2人で海外に行って、彼は日本に帰るけど僕は仕事で残りますって時に、わざわざホテルから「Dちゃんの行く会社まで電車でどうやったらいいか僕が教えてあげるね」みたいな。いや、行けるし、英語喋れるし大丈夫って言っても、僕は心配だからって言って「ここを何番線に乗って、この出口で出て、この道を行くとDちゃんの行く会社だからね」みたいな。はい、知ってますってなるんですけど。でも、彼は彼なりの優しさなのかなって思うから、僕は拒絶するのもなんだから、最初はありがとうってやってたんですけど、毎回そうなんです。僕が1人で海外行くとかなると「Dちゃんは臆病だから、もっと海外見た方がいいから、ゲイバーに行ってきたら?」とか、「どこどこを見てきた方がいいよ」とか言って、行き方教えてあげるって、日中に誰もいないゲイバーとか連れて行かれて「1人でこここれる?」みたいな。
中村 (笑)
DH それくらいすごい心配性な面もあって優しいところもあるのに、街歩いてるときに自分が疲れた瞬間の「省エネモード」って……お前ルンバか、みたいな。ルンバ勝手に充電器の中入るじゃないですか…
中村 まぁ、それがDさんにとって不満というか、やっぱり自分と同じくらいのテンションで体力もあって自分と同じように遊びまわってくれる人の方がいいと思うんだったら、それは彼には悪いけど、そういう相手を探すしかないのかな。
彼は彼なりに精一杯付き合って、そして精一杯気を使って、でも自分の限界をDさんにちょっとわかってほしいな、くらいの気持ちだとしてもね。
これから先、50歳をもっと過ぎて行くわけじゃん。付き合い続けていけば、どんどん歳はとり続けるわけだし。
DH そうそう、そうなんですよね。
中村 Dさんがようやく体力落ちてきたらね、2人で縁側でお茶でもすすってりゃいいかもしれないけど、そうなるまでにまだまだ時間がかかりそうだから、その間にもしかしたら、Dさんの方が、こんなジジくさい人より一緒にワイワイ遊べる友達といる方がいいみたいになっちゃうかもしれないよね。
「ワニ元気?」事件
DH かもしれないですね。なんか、やっぱりないものねだりってあるじゃないですか。僕の彼氏とかって一緒に旅行行ってても、僕の父親と間違われるくらい見た目の差があるんですよ。
うちの彼氏も言葉にはしないけど、「お父さんですか?」なんて言われるとちょっと不機嫌にはなるみたいな。やっぱりそれはそれで本人傷ついてるんだろうなっていうのも分かるんですよ。それって愛おしいところでもあるんだけど、でも僕からしてみたらやっぱり、お父さんみたいな見た目の人と付き合ってる自分もちょっと引け目を感じるっていうか、
中村 引け目って、世間に対して?
DH そう。キラキラしてないなっていうか。
みんな彼氏とどこどこ行ったぜイエイイエイ、みたいな感じの写真をインスタグラムとかにあげてるけど、僕、絶対彼氏の写真はSNSにあげないし
中村 あげないのは、やっぱりお父さんみたいに見えるから恥ずかしいの?
DH ていうか、彼がもう少し見た目に気を使ってくれたらいいんですけどね。ユニクロ、クロックスみたいな。僕の友達がラインで僕の彼氏のことを、ワニのスタンプで送って来るんですよ。クロックス履いてるから。「ワニ元気?」みたいな
中村 (笑笑笑)
DH やめろよ、ワニじゃねーし、みたいな感じで。1回、彼のクロックスを全部捨てたんですよ。
中村 え、なんで? ひどくない(笑)?
DH 本当もう履いて欲しくないと思って、全部捨てて靴全部変えたんですよ。そしたら、何も言わずに、二週間後にクロックスが6足届くんですよ。
中村 買ってるんだ、ネットで(笑)。クロックスが楽なんだよ
DH そう。楽なんですよ、多分。分かるんだけど、もう少し気を使えっていうか。お出かけする時は、もうちょっとね。そういう細かい不満は僕もやっぱりあるし、彼ももちろんあると思うんですけど、そんな50歳と38歳。
たぶんホモの世界だと、僕、今が一番いい時なんですよ。40代を迎える上で脂も乗って仕事も頑張ってて、お金の余裕も出て来て。そんな中で、こんなすぐ疲れる、歩きたくない、すぐ充電する、で、見た目もまぁまぁおじいちゃん。常にクロックス。なんか、このまんまでいいのかな?っていう悩みもすごく、あったりする。
「ゲイ界で1番いい時を、このまま過ごしてていいのかな?って…」
中村 なるほど。どう考えてもあなたの方がモテるだろうから、彼氏よりね。誘惑が多いと思うから。でも今まで色々とずっと一緒にいてくれてありがとうっていう気持ちはあるんだろうし、だからと言って義理立てして、もっといい人が現れたのに、我慢する必要もないんだけどさ。せっかく8年も一緒にいて、築き上げた関係みたいなのをまた1から赤の他人と育てるのも大変じゃない?
DH そう、できないですよね
中村 だから大抵のゲイのカップルは、知り合いでも、どんどんセックスレスになり、家でもあんまり会話しないみたいになっちゃって。
DH そうそうそう
中村 ちょいちょいお互いに、こっそり浮気なんかしてるんだけど、それは礼儀として、それを言わないのも、愛なの。わざわざバレるように浮気して相手を傷つけるのもなんだし、そこは愛情があるから、傷つけたくないから。
だからまぁ、気がつかれない程度に、ちょいちょい浮気して、それでガス抜きをして。で、ガーッと集中した恋愛感情みたいなのはないけど、落ち着いて一緒にホッコリしてる時間は心地いい、みたいな相手として彼をキープしておいて。
その一方でほかの相手とたまにはすごい恋愛しちゃうかもしれないけど、決してそっちには行かない、みたいな。そういう人が多いよね、ゲイは。
DH そうですよね。僕も本当そうです。
中村 ゲイで長続きしてる人は本当にそういう、使い分けみたいなのが上手で。これがノンケの夫婦だとそんなこと許してくれないから。
DH ですよね。離婚とかになっちゃいますもんね
中村 うんうん。ちょっとガス抜きしてきましたって何だよ、ふざけんなって話になるよね。ゲイのすごいところは、自分もガス抜きしたいから、相手のガス抜きも許しましょうっていうギブアンドテイクっていうか、暗黙の了解があってさ(笑)
DH そう。「行って来て」みたいな。確かに
中村 ノンケは男女の場合、主に女性が、自分はガス抜きなんかしてないのに、なんでお前ばっかり外でガス抜きしてるんだよって話になり、ガス抜きしてる主婦もいるんだけども、男は男で自分はしてるくせに、女房がガス抜きって、何? みたいな。そこでやっぱり男性観、女性観みたいなのが露わになっちゃうけど、ゲイは男同士だからさ。お互いにガス抜き必要だよね、みたいなところが暗黙の了解みたいになるのがすごいなって。
一世一代のガス抜き!?(暗黙の了解)
DH それ、ある。僕それでドバイまで行きました
中村 ドバイ? ドバイに何しに行ったの?(笑)
DH ネットで出会った人が、すっごいイケメンで〝オショックス〟って僕ら言うんですけど、お食事してセックス。オショックスして、めっちゃ僕が好きになりそうって思って。で、それがドバイに住んでるアメリカ系チャイニーズの人で。
僕、彼氏に「ちょっと別件の仕事で出張があって」って嘘ついて、3泊だけドバイに行った。で、フラれました(笑)
中村 ありゃ、振られちゃったんだ
DH で、やっぱり彼氏だなって思って(笑)
中村 これ、もしうまくいってたら、ドバイ行ってたかもしれない?
DH そう、かもしれない。
僕、2回しか会ってないのに、すごい人生計画考えて、ドバイで僕に何の仕事ができるんだろうと思って、日本のこういう会社がある、とか全部調べて。履歴書とかも全部英語で用意して、
中村 そこまで本気で
DH そう、でも、こっぱみじんに(笑)
中村 でもまぁ、それでよかったのかもね
DH そうかもー。今の人がいいかもしれないですね
中村 今はね。
DH (笑)
「やっぱり、彼かな♪」
中村 今んとこね、ドバイも短く終わったし、その後は彼氏捨ててでもって思うような人は特に現れないんだったら、本当に出会い系サイトでワンナイトっていうか一夜限りの関係とか、そういうのは続けてても、ずっと一緒にいるのは彼みたいな路線でいいんじゃないかなと思うんだよね。
DH そうですねぇ。
中村 ただ、大切に思われてないとか、愛されてないっていう解釈は、違うと思う。
DH なるほど…。もう、本当にありがとうございます。ちょっと今日は彼をハグしてあげようと思います。
中村 うん、優しくしてあげて。いい彼氏だと思うもん。
DH それは、そんな気がする。頑張って今の人ともうちょっと一緒にいようと思います。
中村 うん。まぁ、そのうちまたドバイ並みのが現れたら。
DH ねー(笑)
中村 それはわかんないからね、誰にも。じゃあ、そのときもう一回悩んでください。
DH はい、ありがとうございます。
撮影/深山徳幸 撮影協力/シューパレード
中村うさぎ
小説家・エッセイスト。OL、コピーライターを経て作家へと転身。ベストセラーとなったデビュー作『ゴクドーくん漫遊記』を皮切りに活躍を続ける。その後、自身の実体験を赤裸々に綴ったエッセイがヒット。『女という病』『私という病』『狂人失格』『セックス放浪記』『プロポーズはいらない』など多数の人気著書を手がける。
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