自分にぴったりの走れちゃうパンプス、それこそが今の時代の「シンデレラ体験」だ!
今、実はパンプスの売り上げがあまりよくないと言う。
ファッショントレンド的にも「ドレスに敢えてスニーカーを合わせて、今っぽく」なんていうキャプションが踊る、雑誌の見出し。
とは言え、会社やお仕事でスニーカーってわけにもいかない場合も多い。
以前、ヴィクトリアベッカムさんがインタビューで答えていたのが忘れられない。
「ヴィクトリア、あなたは以前、ハイヒールしか履かないって言ってたと思うのですが」(スニーカーを履いてでてきたヴィクトリア。確か彼女のファッションショーの後だったと思うが)
「ヘイ、見て。今私は子供もいて仕事もしているのよ!」
そう、働くなでしこにとって、“盤石な足元”は一番の願いなのだ。
ということで、探してきました、“私だけの一足”を。かくいうクロシマ、ワークスタイル的に打ち合わせ→移動→打ち合わせ→移動、を繰り返す毎日。
1日の平均歩数が1万歩を軽く超えるという移動人生(泣)。足に相当きます。
だけれども、なぜか市販の靴はどうしても左の親指が当たって爪が痛くなる、そして、右は前に滑りやすく、ヒールだと足指が必死に足底をつかもうと自然に努力してしまい、非常に疲れやすい、という悩みを長年抱えていた。(みなさんも何となくあるある、ですよね? わかってくださると思います)
なんか素敵だけど疲れない靴がほしーいぃ。
そんな時にふと思い出したのが、このお店が「リュウスケカワムラ」だった。
お店を切り盛りされている日置さんはhioというシューズブランドのデザイナー。そう、デザインにも定評があるのだ。
ということでまだ、春浅いとある日にお邪魔してきました。
たくさんの靴が並んでいる。
可愛いパンプスもたくさん並んでいるのですが、
どうしてもこのレースアップ的なシューズに惹かれてしまうクロシマ。(足がどうしてもパンプスを怖がっている今日この頃…)
まずは足の形を測定して見ましょう! とのことで…
このペデカルテの上に足を置いて、(何やら難しい鉄の塊の計測器で)正確に日置さんが計測してくださる。
出来上がり!
これをさらに仕上げて、細かなペデカルテが出来上がっていくのだ。
しかしながらここで、すでに日置さんより衝撃的な発言が! それもふたつ!
「あー、クロシマさん左足が0.5センチも右より大きいね。。。こりゃ靴選び大変だわ!」(やっぱり。。。。泣)
0.5といえば…靴のサイズは半センチきざみ。
ということは左と右で1サイズ別々に違うものを買ってもおかしくない程の差ということだ。
衝撃的な発言がもうひとつ。
「あー、クロシマさん指の付け根のぐるり(周囲)寸法が甲の高いところのぐるり(周囲)寸法より小さいかも!」。
つまり普通の人はパンプスを履いた時、足の指の付け根で靴をホールドするのだが、私の場合そこが薄いのでホールド仕切れず、前にすべってきてしまうのであった。。(やっぱり。。。。泣)
結局やっぱりパンプスみたいな形の靴には私の足は向かないということだ。
高校生くらいから苦節ウン十年…足の痛みや辛さ、だるさと戦い続けてウン十年。
こんな事実がいまやっと、判明する。。。
(なんで今まで計測してなかったんだろう???)
そう、痛くて靴を脱ぎすて、裸足で歩きたいと思った経験数知れず。
余計な力みで夜中にふくらはぎが攣りそうになった経験数知れず。
あの時間を返してくれーっ!!!
「クロシマさんのような方がたくさんいて、そういう人の為にオーダーシューズがあるんです。クロシマさんは自分でわかってるようにレースアップシューズとか、ストラップパンプスとか、足の甲でも支えることのできる靴を履きましょうね!」
優しく慰めてくれる日置さん。
チクショー、高いお金払って買ったブランドパンプスたちめ、今日帰ったら全てメルカリしてやるーっ。心に誓うクロシマ。
何やら色々難しい計測をして、色々数値をカルテに書き込む日置さん。
それ以外にも色々私の足を触り、「ふむふむ、少しX脚気味。。。内側を高くだな。。」などと呪文を唱える日置さん。笑
「チャーチみたいなレースアップ欲しい」というもともとの欲求を満たすとなると、やっぱりこのシリーズ。
この3つをモデルに、自分の好みを日置さんに伝える。
一番の本命、革についてはたくさんある大きな台帳から選ぶ。
えーっ! 難しい! と思いきや、日置さんが好みを聞いてくれるので意外とスムーズ。
ひねくれ者の私は黒ではなく敢えてコンを選んでみた。
(真っ黒だと意外と色がキツイ印象に。コンだと少し柔らかい印象になる気がするの)
そして私からの希望は「コバは敢えてベージュの皮、そして少し外にはり出させて、モードっぽく主張」。
コバ、靴の底周りからヘラのように飛び出してる部分ですね。
ワクワク!!!!
あとはもう一度仮縫い!
自分の作業が終わり、ふとあたりを見回すと…
圧巻の壁面。靴箱が並んでいる。
実はこの中に黒のストラップパンプス。なんと、同じ靴がサイズ19センチから。足幅も様々。同じ形のバリエーションが何十通りとストックされているのであった!
同じ人間のものとは思えない。。。
そう、ここにいらっしゃるお客様の悩みは、数知れず。。
来店されたお客様は、皆ほとんどがスニーカー。
新しい自分にあったパンプスを手にして、ドタっとしたスニーカーファッションから抜け出て、すっきりと。
おしゃれにもどんどんトライできるようになって喜ぶ姿が一番嬉しいと、日置さん。
特に若い方々の来店が増えてるとか。
さて、1ヶ月後。
「仮縫いの準備ができました」と日置さんからメールが入った。
早速お邪魔する。
私の木型が出来上がっていた(これはセミオーダーなので、もともとある木型に色々私のための修正を貼り付けている)。
そして、ゴタイメーン!
おぉ。もうほとんど靴だ。
よくよく見ると底などはまだないのです。
しかし、細かい作業。靴って何パーツからできているんだろう?
職人さんの大変さが伝わります。
「履いてみて、ここで気になることを全て言ってね。何でも直すから」
と日置さん。
うーむ。試着して歩いてみるが、これがなかなか何が良くて何がダメなのかわからない。。
感覚って難しい。
真剣に自分の足と対峙する。。。
甲がまだ少し当たるかな??
私の左の親指、まだ少し当たってる気がする。。。
意外と自分の足の最高レベルってわからないものだ。
普段から靴を買う時、外側、ミテクレばかりで選んでいるのがバレバレだ。でも、いつまでも悩んでいられない。
細心の注意を払って、自分の足指と会話する。
「これでいい?」
さて、カルテ完成!!!
あとはまた1ヶ月ほど待つのみ。
「クロシマさん、できました!」
1ヶ月半ほどしたある日、その連絡は来た。
日置さんが大事そうにボックスから取り出してくれたのは。。。
できたーっ。
素直に嬉しい♡
もともと店内にあったものと比べる。
はい、コバ(靴の底の飛び足してる部分ね、)でてますね。
あともう一つ、クロシマ的コダワリは、紐。
紐は平らなグログランがいい、とお願いしていたのだが、やっぱり、ミテクレいいじゃん!
ソールはこの通り革でまっさら。
マッケイという手法ですが、縫い目が見えないように上から革が張ってある、ヒドゥンマッケイ。
すーてーきー!!!
何より履いた時の違いは、足の裏とかかとだと思う。
足の裏が”ぺったりとソールにくっついている。そしてかかともずっと動きについてくる。
今までの、足を置いている。靴が付いてくる、感が一切ないのだ。
私の行動範囲はこれでもっともっと広がる!
靴が自分だけのものになるだけで、こんなにも、気持ちも希望も広がるんだ。
よくよく周りを見回すと、この頃…
”Made to measure”
“Make your own”
そう、フルオーダーとは言わなくとも、自分だけのちょっとした修正、ちょっとした変更、を加えるサービスが今、とても増えている。
(こないだテレビでもダウンタウン松本さんが自分にぴったりのフルオーダーのブーツを作る話を特集してたけど、なんと80万円!そして松本さん、靴は今までクロックスしか履いてなかった、ってのも笑えた)
大量生産の洋服や雑貨にちょっと飽き飽きした人たちによる反動だ。
今だったら、ゴム草履の鼻緒だけ色や形を変えるとか、バッグのストラップだけ数種類の中から自分で選ぶ、みたいのもそう。
ちょっと前に比べて、「みんなが持っている」とか「みなと同じ」がもう嫌、な自分の個性を大切にする現代の人たち用のマーケットの動きだ。
そんな「せっかく買うんだったら、自分の気持ちと体にぴったりなものを。そして長く大事に」という気運がまた皆の中で高まってきている。
それも今回のセミオーダーくらいだったら、ブランド品のお靴を買うよりずっとお安くできるわけです(そしてあなたのペデカルテはずっと残る)。
自分のため、を考えたらこっちの投資の方がずっとお得?
ところでシンデレラのお話、魔法使いは一瞬でシンデレラにぴったりの靴を作ってくれたわけだ。
すごい! 速い! まるで魔法!(あ、魔法だった)
現代版のシンデレラ。もう少し時間はかかるけど、でも「私にぴったりの靴」、その魔法は今の時代にも存在する。
そして「私だけの靴」を履いたシンデレラ、彼女たちの翼はもっと拡がり、もっと軽やかに踊るように、世界中を走り回るのだ。
自分用のぴったりの走れちゃうパンプス、それこそが今の時代の「シンデレラ体験」。
皆様もぜひその選ばれた「シンデレラ体験」してみてください!
【編集後記】
本当はクロシマ、こんなの履きたいなぁ。
トウのところをキルティングとかにしてもますますマダムっぽくて良いのに。ヒールも各種選べます。
(前段読んでもらうとわかるけど、クロシマのパンプスへの夢はついえましたが。。。。泣)
次は真っ白のエナメルかシルバーの革で、靴、作ろう!
#靴が合わないと頭まで痛くなる
#ルブタンとかチュウとかより全然安い
#足裏がフィットする感覚って、多分みんな味わったことがないと思う
#オーダー万歳
初出:しごとなでしこ
黒島美紀子 MKシンディケイツ代表
消費家・商業マーケティングコンサルタント
アパレル、セレクトショップ・百貨店を経て独立起業して早や10年余。数々のお買い物の実践と失敗を繰り返し、ファッション、ビューティ、グルメ、ライフスタイルの動向を消費者目線で考察。また、世界各地の商業スペースやブランドをチェック、消費活動を通じたマーケティングを行い、企業と消費者を結ぶ。