築地場内市場の豊洲移転予定まで2か月半余となりました。
以前にも書きましたが、場内の一大商店街=魚がし横町の店は豊洲市場に移転します。
ところが場内には、魚がし横町以外の場所で営業している飲食店が2軒あります。そしてこの2店は残念ながら、豊洲移転とともに閉店することが決まっているそうです。今回はそんな2店を訪ねてみました。
まずは知る人ぞ知る名店「市場の厨房」。
朝日新聞社の向かい、築地市場正門を入り右に折れてすぐ、築地市場警備本部棟の1階にあります。
梅雨明けして間もなくの7月下旬、友人たちと現地待ち合わせ。
初めて訪れる人にとっては、「え?こんな場所に本当に居酒屋があるの?」と思ってしまうような立地です。実際、友人のひとりは門を入ったところでその奥に歩を進めるのを躊躇ってしまったとのことでした。
18:30に入店。夕方は17:00からの営業ですが、もうすでに会計を終えて店を出ようとしている人もいます。店内はほぼ満席。おそらくほとんどが予約客でしょう。予約しておいたので、店内最奥の席に通されました。さあ、宴会スタートです。
名物料理はいくつかありますが、代表的なのが、いかにも築地ならではという感じの「本マグロの食べ比べ」。
赤身、中トロ、脳天、ほほ肉、うらあご、の5種類です。
赤身から食してみましょう。うーん、さっきまで冷凍だったというのとは少々違う、生のマグロの微妙な味わいがあります。
そして中トロ、脳天の順に。脳天は脂がのっていて大トロに近い食感です。ここまでは、ワサビでいただきます。
そして、ほほ肉はショウガで、見た目、馬刺しのようなうらあごはニンニクで。この食べる順序と薬味の使い分けはお店の方が教えてくれました。
次に登場したのが、マグロのカマ焼きです。当たり前ですが「大きい」。4人で分けても食べ応えあり、です。もみじおろしポン酢がおすすめですが、店によると、ほんのり塩味がついているので「レモンとワサビだけというのもあっさりしていていいですよ」とのこと。なるほど、異なった味わいが楽しめます。
ほか、写真はありませんが、金目鯛の煮つけ、穴子の天ぷらなど、十分に堪能してこの日は終了。料理はコースでもアラカルトでもOK。閉店前にぜひ一度、食してみてください。
もう一店ご紹介するのが、晴海通り沿い、勝どき門を入ってすぐ左の築地市場厚生会館1Fにある「魚四季」です。
この店も市場移転とともにここでの営業は終了予定とのこと。ランチに寄ってみました。
土曜日の11:30。すでに満席。席が空くのを待つことにしました。この日オーダーしたのは、刺身五種盛り定食、1500円。刺身はどれも新鮮で旨い! 他に焼き魚や煮魚の定食が10数種、850円ほどからあります。夜はまだ行っていませんが、昼同様の人気でしょう。
実は以上の2店は、同系列だそうです。
ホームページを見ると、芝浦に「牡丹」という料亭があり、その姉妹店として「市場の厨房」「魚四季」が紹介されています。プラス2店が紹介されており、ひ とつは銀座2丁目にある江戸切りそばの「笑笑庵」、そしてもうひとつが築地4丁目にある貝料理の「築地の貝」。「築地の貝」は昨年11月オープンなので、 おそらくは豊洲移転を見越した出店なのでしょう。
「市場の厨房」「魚四季」とも、今ある場所からは消えますが、たぶん場外のどこかに出店するのでは、というもっぱらの噂です。ただ、現在の、ある意味「ディープな」立地が味わえるのはあと少しの時間。市場散策から少し足を延ばしてみることをお勧めします。
初出:しごとなでしこ
T.KOMURO
編集者。主として男性向け情報誌の編集長を歴任。2015年5月、住居を築地に移し、愛犬の悟空とともに週末TSUKIJIライフを楽しんでいる。