ジワジワと男役から離れた感覚のあるこの1年。新たな“明日海りお”として新たな『ポーの一族』をお見せしたい
2018年に宝塚歌劇団花組にて上演され、2021年には梅田芸術劇場制作で再演される『ポーの一族』。宝塚公演では、萩尾望都先生が描くミステリアスで美しく、そして悲しいバンパネラ(吸血鬼)のマンガの中の物語が、そのまま現実の世界に出てきたよう! と話題になりました。
主人公・エドガー役として圧倒的な存在感を発揮した、当時花組トップスターの明日海りおさん。2019年に宝塚歌劇団を退団したものの、今回もまたエドガーに! あの、この世のものとは思えないほどの(物語の中ではこの世のものではないのですが)、妖しく麗しい姿を観られると大きな注目を集めています。
Oggi専属読者モデル・オッジェンヌの力丸莉帆さんは元タカラジェンヌ。実は、明日海さんと同じ花組に所属し、男役として活躍していた後輩(芸名:桜舞(おうま)しおん)でもあるのです。明日海さんより一足先に退団したのですが、現役時代は明日海さんのお手伝いをしていたこともあったのだとか。そんな力丸さんが、直接明日海さんにお話をうかがいました。
顔を合わせた途端、張り詰めていた撮影の空気感から一転、「りほちゃーん!」と優しい笑顔になる明日海さん。インタビューすることは力丸さんから直接、明日海さんに連絡していたものの、実際に会うのはとても久しぶりなのだとか。それでは、インタビュー開始です。
花組公演時代の『ポーの一族』秘話
力丸さん:せっかくですので、ご一緒させていただいた花組の『ポーの一族』のお話からうかがいます。ずばり、なにか裏話があれば教えてください。
明日海さん:うーん…、何があったかねぇ?
力丸さん:写真を見返していて思い出したのですが、あの頃は毎日のように「りほちゃん、前髪がのびないんだよー」とずっと言われていました(笑)。
明日海さん:そうそう、お稽古場でも役に近い髪型にしたくてパーマをかけたんだよね。そしたら傷んでしまって髪がのびなくて苦労していたなと…、うん、今思い出した(笑)。れいちゃん(現花組トップスターの柚香 光(ゆずか・れい)さん)は髪をのばしていて、男役としてはちょっと長めだったよね。
力丸さん:そうですね、首の半分くらいまでありましたもんね。
明日海さん:私を含め、お稽古場でもみんな学生っぽい服を着ていたよね。ブレザーを着て胸元にリボンをつけて…。懐かしいね。
力丸さん:はい。エドガーとアランがいるウインザーの学生時代の場面で私もご一緒させていただきまして、明日海さんと同じ仲間の役を演じるということがあまりなかったので、とてもうれしくて楽しかったです。
明日海さん:楽しかったよね。私は役柄的に妖しい雰囲気というか人間じゃないから、みんなと違う世界にいるような差をつけなければならなくて。(バンパネラだから)何十年も生きていて、(学生仲間の)みんなのことを軽く見ているというか。みんながキャッキャしているのを「にぎやかだな」と眺めながらも、実は楽しんでた(笑)。
『ポーの一族』再演に対する意気込みとは…?
力丸さん:タカラヅカを卒業されてもう1年と少し経ちますが、今後の明日海さんの抱負を教えてください。
明日海さん:1年くらいかかってやっと「そうか、退団したのか」とふんわり思う程度で、自分の基本は何も変わっていないんですよね。でも知らず知らずのうちに、感覚がジワジワと男役から離れているのを感じていて。女優として普通に女性の役を演じるだけでなく、またこうして“男性の役をやること”は、タカラヅカの男役をやっていたからこそいただける仕事もあると思うから、可能性が一気にワイドになったなとうれしく感じます。プラスに捉えつつマイペースに、マイペースだけどちゃんと前に進んでいきたいなと思います。先に卒業した先輩を見ながら、ね(笑)。
力丸さん:頑張ります(笑)。私は今度の『ポーの一族』を観る側として、前回の“男役・明日海りおさん”と、今回の“女優・明日海りおさん”がどう違う表現をされるのかとても楽しみです。
明日海さん:私もまだ未知なんだけど(※編集部注 取材日は10月初旬)、いい意味で前回と全然変わっていないと言ってもらえるのもうれしいし、新しい感覚で進化したエドガーだなと思ってもらってもうれしい。よりよい方に転ぶように稽古を頑張りたいし、絶対に満足していただけるものにしたい。だって、イヤじゃない? せっかく演じさせていただくのだから中途半端になるのは。
力丸さん:はい、心待ちにしています!
明日海:ぜひ観にきてね。このような形でお話ができて、本当にうれしかったです。
一緒にお稽古に励み、苦労や喜びなどを分かち合ってきた関係性だからこそのお話、いかがだったでしょうか? 上演が迫った『ポーの一族』。宝塚歌劇で観た人も、今回が初見の人も、きっとあの独特な世界に引き込まれるはず。大阪、東京のほか、名古屋公演も追加に。待ち遠しいですね!
ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』公演情報
◆Story
イギリスの片田舎、森の奥に捨てられた幼い兄妹エドガーとメリーベルは、老ハンナに拾われて育てられる。老ハンナたちポーの一族は、永遠の時を生きる吸血鬼〝バンパネラ〟の一族であった。正体を見破った村人たちに取り囲まれたとき、一族で最も濃い血をもつ大老ポーは、一族の危機を救うためエドガーを無理矢理仲間に加えてしまう。こうしてエドガーは、妹メリーベルも一族に加え、ポーツネル男爵とその妻シーラを養父母として長い時を生きることとなる。時は流れ、4人は新興の港町のブラックプールに姿を現す。そこでエドガーは、トワイライト家の跡取りアランと出会い、運命の歯車が動き出す――。
◆Information
[大阪公演]
日程:2021年1月11日(月祝)~1月26日(火)
場所:梅田芸術劇場 メインホール
[東京公演]
日程:2021年2月3日(水)~2月17日(水)
場所:東京国際フォーラム ホールC
名古屋公演
日程:2021年2月23日(火・祝)~2月28日(日)
場所:御園座
ほか
ライブ配信実施
お問い合わせ:
大阪公演 06-6377-3800(10:00~18:00)
東京公演 0570-077-039(10:00~18:00)
名古屋公演 052-222-8222(平日10:00~18:00)
◆原作コミックスの最新作もCheck!
▲『ポーの一族 秘密の花園』 著/萩尾望都 ¥682(小学館)
『ポーの一族 春の夢』『ポーの一族 ユニコーン』に続く第3弾。19世紀末、旅の途中のエドガーとアラン。眠り続けるアランのため、エドガーはある貴族に助けを求める。
撮影/石倉和夫 明日海さんスタイリスト/大沼こずえ(eleven.) 明日海さんヘア&メイク/山下景子(KOHL) 構成・文/淡路裕子