香りの強い香水のように癖になるユ・アインの『チャン・オクチョン』
色気のあるセクシーな俳優がたくさんいる韓ドラ界でも、独特の魅力で深い沼とされているのがユ・アインです。韓流ナビゲーターの田代親世さんは、中でも彼が朝鮮時代の王を演じた『チャン・オクチョン』(2013)がおすすめだといいます。
「三大悪女」と強大な権力を持った王
『チャン・オクチョン』は、韓国で有名な三大悪女のひとりであるチャン・ヒビン(実名がチャン・オクチョン)を主人公としたラブストーリーです。
チャン・ヒビンは、その美貌で朝鮮王朝19代の強大な権力を持った王スクチョン(ユ・アイン)をたぶらかして権勢をふるった妖婦というイメージが定着しています。
しかし、キム・テヒさんが演じる、このドラマのチャン・ヒビンは低い身分にもかかわらず、自分で希望と夢をつかみとろうとした女性という新たな解釈。王を愛してしまったが故に、苦難の道を歩まざるを得なかった女性の生涯を描いています。
そして、王様役のユ・アインさんが、もう抜群にかっこいいんです。ユ・アインさんといえば『トキメキ☆成均館スキャンダル』(2010年)でたくさんの人が心を奪われました。私もその一人なんですが(笑)。あの時はちょっと素浪人っぽくて、やさぐれている役でした。
『チャン・オクチョン』では、若々しいし、凛々しいし、鋭い目とスッと引き結んだ美しい口元。微妙な心情変化を刻々と映し出すまなざしの演技が、もう絶品だったんです。
王としての仕事のシーンと愛のシーンで、ふたつの顔を見せます。朝鮮王朝の中でも最も強い王権を築いたと言われる19代王だけに、切れ者。政治の場では、冷酷で時に残忍でもあり、大臣たちともしたたかにやり合うすごみも感じられて、時々ブラックになるところにもしびれるわけです。仕事ではそんなふうにキレッキレの王が、ヒビンの前では甘く切ない。愛ゆえに苦悩しちゃうんですよ。そこがたまらなく素敵。
このドラマの前半は、少女マンガのようにキュンキュンする場面が盛りだくさんで、後半は宮中での権力争いが焦点になっていきます。そして、王という立場と、愛する女性を守ろうとするひとりの男という立場の間で葛藤するわけです。
ユ・アインさんはアーティスト系なので、くせのある役を演じることが多いけど、このドラマでは、ほんとに王道のかっこいい主人公を見せてくれます。
一筋縄ではいかなくて、香りの強い香水のようにくせになる
ユ・アインさんは、少年性をいつまでも残しているのも魅力のひとつです。そして、アーティスティックで、一筋縄ではいかない。
実際にお会いした際は、表現力豊かな人だなあと思いました。インタビューで「日本のテレビに出演されて、どんなお気持ちですか?」と聞いたことがあります。そうしたら、椅子にもたれてだーっとなるジェスチャーをして、「うれしくて、どうしていいかわかんない」っていう気分を、瞬時に全身であらわしたんです。
よくあるように「日本のみなさまにお会いできてうれしいです」と答えるわけではない。表情と身体で表現して、感心しました。
コメントを求められても、ただ当たり前のことは言わない。ある意味、自己顕示欲が強いといいますか、それが俳優としての彼を作っているのですね。優等生ではないし、そうでないのだと自分でもアピールしたい。
くせがあるので、香りの強い香水みたいにくせになってしまうファンも多いのです。
時代ものにも、現代ものにも必見が
韓ドラの時代劇とひと口に言っても、さまざまです。出演者にベテランが多くて、観るほうもおじ様たちという印象の、本格的大河ドラマもあれば、一方で『チャン・オクチョン』のように、フュージョンっぽい、少女マンガ的キラキラ時代劇もあります。時代劇は重たいと毛嫌いしないで、観ていただければと思います。
『チャン・オクチョン』で、時代劇モノのユ・アインさんにハマったというかたが、次に観るべきは、『六龍が飛ぶ』(2015)でしょう。少女マンガ的な時代劇といったら、もちろん『成均館スキャンダル』がおすすめです。
映画『ベテラン』(2015)などは、悪役としてイッちゃっていて、好き嫌いが分かれるかもしれません。観ておくべきなのは、『密会』。音楽の世界を舞台に、年上の女性と恋に落ちるストーリーで、独特のエロチックさと迫力があるドラマです。
TOP画像/(c)SBS
『チャン・オクチョン』U-NEXTにて配信中
取材・文/新田由紀子
田代親世/たしろ ちかよ
韓流ナビゲーター。テレビ・雑誌などで、韓流ドラマを紹介している。会員制韓流コミュニティ「韓流ライフナビ」を主宰。