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LIFESTYLE

2020.01.22

本に学ぶ【いかなるときでもチャンスを逃さない人】とは?

書評家の石井千湖さんが、テーマごとにおすすめ本を紹介してくれる人気連載。今回のテーマは「チャンス」。

チャンスを引き寄せる人たちは、自分を信じてあきらめない

仕事も恋愛もなんだかパッとしない。同期のあの子がどんどんチャンスを手にするのを横目に、悶々とする日々…。そんな自分を打破したいなら、この本を手に取ってみて!

1『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説 世界をごきげんにする女のメモワール』
逆境を跳ね返したコメディエンヌの自伝

家柄や容姿など、もって生まれるものはだれも選べない。ただ、人生の初期設定がハードモードだったとしても、そこで終わりではないのだ。ティファニー・ハディッシュの『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説 世界をごきげんにする女のメモワール』を読むと、チャンスをつかめるかどうかは自分次第だと思える。グラミー賞にノミネートされた、アメリカのコメディエンヌによる自伝だ。

著者であるティファニーの生い立ちは壮絶すぎる。継父の仕かけた交通事故によって脳に障害を負ってしまった母に虐待され、さまざまな施設や里親の家を転々としながら育った。また、中学3年生ごろまで文字が読めなかったという。家でも学校でもバカだと言われ続けた彼女が、高校の演劇部の先生に読み書きを教えてもらい、学校の人気者になるまでの過程にはワクワクする。しかも、そこには崇高な目的があったわけではなく、ただただ「彼氏がほしくてがんばっていた」というところがいい。

人気はあったけれど問題児でもあった高校時代、ソーシャルワーカーにすすめられて通ったコメディー教室で「ステージの上に立つ人間が、誰よりも楽しんでいないといけない」と助言されたこともティファニーの意識を変えた。それから彼女はどんな過酷な状況に置かれても全力で楽しむことを心がける。常に前向きな姿勢が幸運を引き寄せたのだと思う。

また、ティファニーは結婚や仕事にまつわる痛い経験を包み隠さず語る。リアルな痛みを面白おかしく話すことによって、自分と他人を救うのだ。転んでもタダでは起きないたくましさと、同じようにつらい思いをしているだれかに対する優しさ。両方もっているから成功したのだろう。

『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説 世界をごきげんにする女のメモワール』
著/ティファニー・ハディッシュ 訳/大島さや CCCメディアハウス
37歳のとき映画『ガールズ・トリップ』に出演し大ブレイクを果たしたコメディエンヌで女優の著者。少女時代に受けたいじめから、障害のある男性との忘れられない恋、ストーカーとの泥沼結婚生活、ショービズ界に入って遭遇したセクハラまで赤裸々に語る一冊。

2『楽少女通ります 私の履歴書』
恋愛小説の名手が語る人生の楽しみ方

田辺聖子の『楽少女通ります 私の履歴書』も読むと元気が出る。恋愛小説の名手として知られる著者の半生記だ。

タイトルの通り、田辺さんは戦争でさまざまなものを失っても、お金がなくても、好きな小説を書く夢をあきらめず、楽天的に暮らす。焦ったり、落ち込んだりしているとき、人間は絶好の機会があっても気づかない。極端に視野が狭くなるから。

田辺さんのように「自分の身内に力の潮がみちてきたとき、必ずその卵は孵る」と信じて待つことも大切なのだ。

『楽少女通ります 私の履歴書』
著/田辺聖子 角川春樹事務所
町の写真館に生まれた女の子が、戦火をくぐりぬけ、亡き父の代わりに家族を支えながら、作家として成功するまでの物語。38歳で急死した友人の夫「カモカのおっちゃん」と結婚することになる経緯も面白い。女の生き方にまつわる名言にあふれた著者の半生記。

2019年Oggi5月号「『女』を読む」より
撮影/よねくらりょう 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部

TOP画像/(c)Shutterstock.com

石井千湖さん

いしい・ちこ/書評家。大学卒業後、約8年間の書店勤務を経て、現在は新聞や雑誌で主に小説を紹介している。著書に『文豪たちの友情』(4月13日発売予定)、共著に『世界の8大文学賞』『きっとあなたは、あの本が好き。』がある(すべて立東舎)。

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Oggi12月号で商品のブランド名に間違いがありました。114ページに掲載している赤のタートルニットのブランド名は、正しくは、エンリカになります。お詫びして訂正致します。
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