SNS疲れしていませんか?心を支える言葉に触れてみて!
「こうした方が、いいね! を押してもらえる」、「逆に、炎上して注目してもらえる」この考えこそ、心が漏電し、エネルギーが消耗する原因かもしれません。SNS全盛時代にこそ、心を支える言葉の必要性を考えてみましょう。
そこで、「100年後まで残したい日本人のすごい名言」(アスコム)を上梓された明治大学文学部教授、齋藤孝先生におすすめの名言をお伺いしてみました。
◆名言は普遍的で、言葉にリズム感がある
名言は、実用性に優れた贈り物です。人間だから、心が折れそうなときもあれば、悩むときもある。自分に自信が持てないときもあれば、道に迷うこともある。そんな時は名言を使おう。名言はあなたの心の支えにも、一生の宝物にもなるのです。
名言は本質的です。本質をついた言葉だから、国や時代を超えて人の心をとらえ、名言として残っています。また、言葉としてもキレの良さ、リズムの良さも秀逸です。
「これは」と思う言葉に出会ったら、その場で声に出して何回か読み、言葉の持つリズムと共に、身体で覚えようとすること。そうすれば、名言が心の砦となり、雪崩のように心が崩壊するのを食い止め、漏電のように常にエネルギーが消耗されていくのを防ぎます。
◆齋藤孝先生おすすめの名言3
1.これでいいのだ(赤塚不二夫)
その場その場の状況における自分の態度を明確にし、「これでいいのだ」と行動を加速していくすごさ。こんなに断定し、肯定し、突き進む日本人が他にいるでしょうか。
本当にバカボンパパのような人がいたら迷惑です。大人がめちゃくちゃなことをして、全部「これでいいのだ」と言っていたら困った人です。
ただ、ちょっと思い切ったアクションを起こしたり、何かチャレンジをしたりして、「これでいいのだ」と肯定する強さを身につけることができれば、心が折れそうなときにパワーを発揮してくれるはずです。
2.自分の感受性くらい、自分で守れ ばかものよ(茨木のり子)
「ぱさぱさに乾いてゆく心を/ひとのせいにするな/みずから水やりを怠っておいて」から始まり、「気むずかしくなってきた」こと「苛立つ」こと、「初心消えかかる」こと、それから「駄目なことの一切」を自分以外の何かのせいにするな、といい、最後にバシッと「自分の感受性くらい、自分で守れ ばかものよ」と言うのです。
この詩には、人の考えそうな愚痴の、だいたいのことが書かれてあります。感受性とは、自分で守るものだったのか。やたらと傷つきやすいものだと思っていたけれど、自分で守ればよかったのか。そういう感慨を持った人も多いのではないでしょうか。
3.自分自身でおありなさい。(中原中也)
情のある元恋人へ誠実に書き綴った言葉なので、深い優しさが感じられます。
FacebookなどSNSで自分を発信するとき、「いいね!」やフォロワー数を増やすためにあれこれ写真を撮って載せるのは、この正反対です。「いいね!」を狙うと、周りがいいというものに自分を合わせていることになります。自分を見失っている状態です。
何かの表現をしたいと思いながら、迷っている人にとって最高の励まし。今の時代、誰もが表現者であると考えれば、すべての人に通じる名言です。
歴史上の偉人たちも、みんな言葉に支えられていた
フラフラと動きやすく折れやすい心だから、支えてくれるものが必要です。それが名言であるというのが、私の近著『100年後まで残したい日本人のすごい名言』の趣旨です。名言は、読んで「なるほど」と言って終わらせるのではなく、心の支えとして使うべきなのです。
日本の歴史をつくってきた西郷隆盛や芥川龍之介などの偉人たちも、名言に支えられていました。昔の日本人は、言葉を心の支えにすることを当たり前にやっていました。けれども、音読・暗唱文化が縮小していくとともに、名言の良さは忘れられていきました。しかし、近年また名言に注目が集まっているように感じます。それは氾濫する言葉の中で「よりどころ」を見つけるのが難しくなっているからかもしれません。
『100年後まで残したい日本人のすごい名言』では、名言を30個選んでいます。日本人なら、この30個は暗唱できるようになってほしい。言葉があふれ、言葉の価値がますます不安定になっていく時代だからこそ後世に語り継いでほしい、という言葉たちです。全部覚えていただければ、30個の心の砦ができるわけです。
時代を超えて日本人の心をとらえ続ける名言から、いまの時代を反映して生まれた言葉までそろっています。
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お話を伺ったのは… 明治大学文学部教授・齋藤 孝先生
1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学大学院教育学研究科学校教育学専攻博士課程等を経て現職。
専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。
代表作のひとつである『声に出して読みたい日本語』(草思社)は、毎日出版文化賞特別賞を受賞し、ベストセラーに。
『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)では、第14回新潮学芸賞を受賞した。
文化人としてテレビをはじめとする数多くのメディアに出演し、明治大学の教え子であるTBSアナウンサーの安住紳一郎氏とも共演を果たした。
最新著書「100年後まで残したい日本人のすごい名言」(アスコム)が好評発売中。