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2017.09.12

「福山雅治さんの色っぽい顔が撮れました」【是枝裕和監督インタビュー前編】映画『三度目の殺人』

現在公開中の映画『三度目の殺人』が話題の是枝裕和監督へのスペシャルインタビューをお届け。

今年最大にして最高の「問題作」に秘められた「謎」とは?

1995年の『幻の光』で映画監督としてデビューし、『ワンダフルライフ』(1998年)、『花よりもなほ』(2006年)、『歩いても 歩いても』(2008年)、『海街diary』(2015年)など、公開されるたびに話題となる作品を生み続けている是枝裕和監督。

2004年公開の『誰も知らない』では、主演の柳落優弥さんが第57回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞、2013年公開の『そして父になる』は、第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞するなど、今や国際的に名を馳せる日本人のひとりとして、映画界においてなくてはならない存在になっています。
そんな是枝監督の最新作は、現在公開中の『三度目の殺人』。
『そして父になる』で主演を務めた福山雅治さんと再びタッグを組み、名優・役所広司さんを共演に迎えた今年最大にして最高の“問題作”に秘められた“謎”を、少しだけ、解き明かしていきましょう。

【謎_1】
映画『そして父になる』で主演した福山雅治さん。今回再び、福山さんを主演に迎えた“謎”とは?

では、まずひとつめの“謎”から解き明かしていきたいと思います。なぜ今回の作品で福山雅治さんを起用されたのでしょうか?

是枝:福山さんはね、映画『そして父になる』の撮影をしていたとき、“相性がいい”って思ってたんですよね、たぶんお互いに。監督として、役者として、本当にやりやすかった。

で、すぐに「次どうしましょうか?」っていう話題になって。数年間、企画のやりとりのキャッチボールをずっと続けて、この作品に着地したんですよ。だから……“起用”というよりも、企画の段階から一緒に考えてくれた“同志”っていうのかな。まぁ、そういう感じ。

相性が良いというのは、互いに似ている部分があるからだと思うのですが、似ている点を挙げるとしたらどんな部分ですか?

是枝:うーん。似ていると思う部分はまったくないなぁ。福山さんはとても爽やかでいい男だけど、僕はジメっとした陰湿なタイプ。福山さんみたいな爽やかな人をイジメたくなるんですよね。こう……窮地に追い込みたくなるというか。いい男が追い詰められて顔をゆがめる。それを撮るのが、今回の最大の目的だったりします。

とくに福山さんの場合、追い詰められるとすごく色っぽくなるんですよね。で、そういう色っぽい顔を撮りたい!! って思い続けて、今回の映画が出来上がった感じです。今回は役所広司さんとの共演もあってか、福山さんのとても“色っぽい顔”が撮れました。

役所広司さんと福山さんの対決は、本当に見ごたえがありますね。キャスティングする際、どのような点を重視されたのでしょうか。

是枝:役所広司さんは、福山さんとはまるでタイプの違う役者さんで、対決させて熱くなっていっても、まったく温度が違う。それが面白いと思ったんです。役所さんは例えるなら赤く燃える炎で、福山さんは青い炎って感じ。赤同士だと暑苦しくなって疲れちゃうし、青同士でもダメ。赤と青と、タイプが違うからこそ、別の炎が生まれて面白い。そう思ってキャスティングしました。

【謎_2】
“食べる”シーンが印象的な是枝作品。しかし今回の作品では、どことなく無機質な感じに……?

映画『海よりもまだ深く』(2016年)の冷凍したカレーで作るうどんや、『海街diary』で4姉妹が食卓を囲む場面など、“食べる”シーンを丁寧に印象深く描いてきた是枝監督ですが、今回も食べるシーンは多いものの、ずいぶんと印象が違いましたね。

是枝:いつもホームドラマを作るときには、何を食べるか、誰と食べるか、ということをすごく大事にして、何かの記憶を呼び起こすように、物を食べさせる、ということを意識していたんです。でも、今回は、“食に興味がない男”という設定だったので、ウィダーインゼリー、カロリーメイト、牛丼……と、グルメとは少し離れたものを食べさせました。食事なんてどうでもいいと本人が思っているので、あえて無機質に描いてみています。

着ているものはすごく良い服で、住んでいる部屋もいいマンション。でも、食には興味がない。彼は本当に“ついで”に食事をしているんですよ。食べたくて食べるわけじゃない。本当に“ついで”なんです。そういう無関心さを、食を通して描きたかったんです。

【謎_3】
登場人物についての“説明”が多いのが映画の常。しかし『三度目の殺人』では、バックボーンはあまり語られません。その理由とは……?

本作品では、あえて「多くを語らない」という手法を取られていると思うのですが、理由をぜひ、お聞かせください。

是枝:映画に登場する人物は、見終わったときに立体化できれば、それでいいと思うんです。最初に全部説明しようとすると、前に話が全然進まなくなっちゃうんですよね。それを避けるために、かなり説明を省いていると思います。ギリギリまで余計なものをそぎ落とした感じかな。

一瞬たりとも、見逃せませんね。

是枝:そうなんだよね~。ほんと、観るときは作品にしっかり集中していてくれると嬉しい! その点に関しては、結構攻めました。普通の映画だったら、回想シーンが入ったりしてね。犯人の子ども時代とか。……そういうの全部、止めましたから。(笑)

変わりに、主人公と一緒に考え、謎を解く、そんなスリルが味わえますね。

是枝:僕は「考えること」が一番のエンターテインメントだと思っているんです。映画という世界の中で、主人公と一緒になって、考え、悩む。それが今回の狙いなんです。映画を観ている人間にも、ほぼ主人公と同じだけの情報量しか与えない。主人公がいつの間にかすべて知っていて「実はね……」って最後に謎解きを披露するのではなく、観客が主人公以上の情報を得てしまって「そうじゃないのに!」ってハラハラするのでもなく、「え? いったいなんなんだろう?」って、主人公と一緒に悩んでいく。主人公と同じ“変遷”を、観ている人が辿る……そういうつもりで作ったので。

脚本作りは、相当苦労されたんじゃないですか?

是枝:はい。今回は素直に言います。本当に苦労しました。この作品は、セリフひとつも本当に難しかったですね。

【是枝裕和監督インタビュー】映画『三度目の殺人』に隠された謎とは?(後編)
>> インタビュー後編へ

是枝裕和(これえだ ひろかず)
1962年 東京都生まれ/早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。ドキュメンタリー番組の演出を経て、1995年に「幻の光」で映画監督デビュー。2014年に独立し、制作者集団「分福」を立ち上げる。映画やのCM制作、ミュージックビデオ作品の演出、若手監督のプロデュースなど、さまざまなアプローチから精力的に“映像”に携わっている。

文/和栗 恵 写真/小嶋淑子

映画『三度目の殺人』公開中

監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:福山雅治 役所広司 広瀬すず 満島真之介 市川実日子 松岡依都美 橋爪功 斉藤由貴 吉田鋼太郎
配給:東宝 ギャガ

是枝監督 公式サイト
三度目の殺人 公式サイト

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