フェミニンではかなげな見た目とは裏腹に、話しぶりはとてもストイック。雑誌『PINKY』のモデルとしてデビューし、レトロな「ココカジ」で人気を博した木下ココ。一時代を築いた雑誌のなかで木下優樹菜、佐々木希、鈴木えみとともに4大モデルと呼ばれた彼女が、今、彼女らしいフィールドで花開こうとしている。
それは、コンテンポラリーダンス。
化粧映えする顔立ちに、美しく均整のとれた背中や腕の筋肉や、しなやかに伸びた脚。今自分に課している週3~4回の夜のレッスンと日々のトレーニングが、細身でも躍動感ある身体をつくってきた。生活は今、ダンス中心になってきていると話す。
「ブランクを経て、24才のときに再び始めたんです。実は私の母もダンサーで、彼女の公演でまた火がついた感じで。レッスンは母のスタジオで、母に教わっているんです。親に習うのがイヤで高校くらいに一度ダンスを離れたけれど、昔はやらされていた感じだったのが、今はやりたくてやっている実感がありますね。小さい頃からもっとまじめに…と思うこともありますが、時期ってあるんでしょうね。先生としての母は、娘という感情が入ってくるぶんすごくむかつきますが(笑)、人一倍厳しくしてもらえて良かったのかなとも思います。
ダンスするようになってから食事制限をしなくてもよくなったり、嫌なことがあっても踊っていると余計なことは考えなくなって。とにかくその間は集中できるし、終わったあとはスッキリしている自分がいるんです」
今年34才。仲間のダンサーは彼女より年上も多いという。
「年齢を経ても体力重視ではなくて成熟した踊り方、その人なりの表現や見せ方ができるようになるんだと思うんです。踊りを教わるのって、先生のオーダーや注意を感覚的な部分でキャッチしなければいけないところもあるから、その感受性も磨かなければいけない。年齢を重ねたからこそできる部分もあるかもしれないと思います。動きを伝えるときの表現はすごく抽象的なんですよ。だから雰囲気ごとキャッチしないといけないし、踊り方もフリも自分でつかんでいかなくてはいけないんです。踊りって、人間性がすごく出てしまうものなんですね。踊りでその人のことが理解できる部分もありますし。
それに、自分らしさを出していくためには、一度なんでもマネをする作業が必要なんだなとダンスを通じて学びました。いきなり自己流ではできなくて、この人みたいになりたいと実践してみて、それから自分のものにしていったり、らしさが出せたりするのかなって。それは何にでも通じる気がしています」。
2年前の公演『~する女、される男~』ではビジュアルクリエイターとしても活躍。モデルとして培った経験から、照明が映える遊び心を取り入れた衣装を提案した。
「コンテンポラリーダンスは、踊り自体にもクリエイティブな要素も入れられるからそれも楽しい。衣装などのビジュアルを考えるのもとても楽しかったです」。
20代・30代になってから、たくさんの時間を捧げられるほどのめり込めるものを見つけた彼女。
「いいなと思うものに、尻込みしちゃうのはもったいないですよね。自分にリミットはつけなくていいし、いくつになっても、努力すれば誰でもある程度まではいけると思うんです。私ももっともっと、上達したいです」
取材・文/有馬美穂
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初出:しごとなでしこ
木下ココ
モデル。1982年12月24日生まれ、東京都出身。「PINKY」専属モデルを経て、「sweet」「美人百花」など数々の雑誌に出演。洋服やアクセサリーなど彼女のセンスを活かしたコラボ商品の販売は多数。ライフスタイルとしてコンテンポラリーダンスを行っている。https://www.instagram.com/cocot_chan/