俳優・戸田恵梨香さんインタビュー
薄れてしまった自分への関心を取り戻して、自分自身を大切に。それが、私にとっての〝自立〟です

《Profile》とだ・えりか/1988年生まれ、兵庫県出身。主な出演作に、ドラマ『ライアーゲーム』『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ、『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』シリーズ、『大恋愛〜僕を忘れる君と』、NHK 連続テレビ小説『スカーレット』、『ハコヅメ〜たたかう!交番女子』、映画『駆込み女と駆出し男』、『母性』など。2026年1~3月放送の日曜劇場『リブート』でも話題に。
薄れてしまった自分への関心を取り戻したい
「子供のときから、早く大人になりたいという思いがありました。自立への憧れが強くて、仕事を始めた10代からずっと、人生イコール仕事、がむしゃらに働き続けてきました。そして、仕事だけではなく、〝人生の充実〟を考えるようになった30代は、想像していた以上の充実感です。家族が増え、住む環境を整え、一生ものを少しずつ買いそろえながら、人生のフェーズが変わっていく。そのプロセスを楽しんでいます。
それでも、小さいときから抱いている〝死への恐怖心〟を、ぬぐうことはできなくて。むしろ、子供をもってから、より怖さが増した気がします。この幸せな瞬間を失いたくない、ずっと続いてほしい――と。でも、夢中でお芝居している最中は、不思議と恐怖心がなくなるんです。ということは、生きること自体にもっと夢中になれたら、怖さは払拭できるのではないか。そのためには、子供への関心が強くなりすぎたぶん、薄れてしまった自分への関心を取り戻し、自分自身を大切にする。それが、今私が目指している〝自立〟の形です」
こうした変化を戸田さんは、「〝今を生きるスイッチ〟が入った」と表現する。ただいま37歳、仕事だけではない、人生そのものの自立を考えるときを迎えている。

恐怖を感じて、顔の筋トレを始めました
今から60年ほど前。戸田さんと同様に、いやそれ以上に〝人生の自立〟を渇望したひとりの女性がいた。それが、Netflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』で戸田さんが演じた占い師・細木数子だ。
「今でこそ、女性総理大臣が誕生し、多くの人が仕事をもっているけれど、細木さんが生きた戦後は、女性の自立なんて考える余裕のなかった時代です。そんななか、細木さんは次々と商売を立ち上げていき、『嫌われてもいい』という思いで道を切り拓いて、自信あふれる姿勢を貫きました。賛否はあったけれど、その語り口調には強い説得力とエネルギーもありました。のちに大金を得て、派手なジュエリーを身につけ、威勢がよかった一方で、実は大きな孤独を抱えた人でもあったのだろうと感じます。それがよく表れていたのが、ドラマでの『本物の涙は、人知れず流すものよ』という言葉。物語のなかでの細木数子は、涙を武器に使うことはあっても、本物の涙は人前で見せなかった。人は複雑な生き物で、ひとことで言い表せるものではないということも、実感させられました」
ドラマのなかで戸田さんは、10〜60代の細木数子を演じる。潑剌とした10代から、貫禄あふれる50〜60代まで、外見や話し方、そして生き様は、完全に細木数子だ。彼女が活躍した時代を知らない世代にとっても、そう見えるのが不思議なところ。
「年代ごとの説得力を出すにはどうしたらいいか。私がもっていない覚悟や図太さ、ドシッと生きてきた面構えを、どうやったら表現できるか。岩下志麻さんの作品(『極道の妻おんなたち』など)を観て要素を取り入れたり、試行錯誤しながら監督とセッションを繰り返したり。それはとても充実した時間でした。そして、60代を演じるときは特殊メイクの力も借りました。出来上がった顔を見たとき、『私は将来こうなるのか』と、ちょっと恐怖を感じて、焦って顔の筋トレを始めました(笑)」

ピラティスでも始めようかと思っているところです
ドラマ終盤、細木数子はある人物に、「自分の人生に後悔はないですか」と問いを向けられる。その答えはドラマで確かめてもらうとして、さて戸田さん自身が答えるなら――。
「後悔はないし、いつも最良の選択をしてきた自信はあります。でも、そのときの感覚だけで進んでしまったこともあるし、必死すぎて覚えていないこともある。だから、残りの人生は選択する物事ひとつひとつに、ちゃんと意識を残したいなと思っています。自分の子供を見ていると、うらやましくなるんです。この子は自分の意思と力で人生をゼロからつくっていけるのだから。私自身後悔はないけれど、今からでも生きることにもっと夢中になりたい。
人生、いつ何が起こるかわからないし、実はもう人生が半分過ぎている可能性だってあります。そう思うとちょっと焦ったりもします。でも、不安を感じていても前には進めません。この先をどう生きるか悩むより、まずは〝今〟どうしたいか。それを見つけていたいと思います。ここ数年おざなりにしていた自分の体もしっかりケアしながら。今、ピラティスでも始めようかと思っているところです」

不安になったとき、頼るのも答えを出すのも自分。占いも好きでチェックはするけれど、戸田さんの受け止め方は、あくまでも「ひとつのエンターテインメント」だという。
「占いに頼ってしまうのは、うまくいかなかったとき何かに責任を転嫁したいからだと思うんです。それだけ、私たちは弱い生き物なんだということを、このドラマで改めて思い知らされました。だから占いは、私にとって生きるヒントを探す手段のひとつです。このドラマでも少し描かれていますが、頼りすぎたり距離感を誤ったりすると、危険なこともありますから」
Netflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』

独自に編み出した六星占術をうたい、占いブームを巻き起こした細木数子。二十歳そこそこでナイトクラブを次々と成功させて銀座の女王と呼ばれ、その後占い師として一世を風靡するが、一方で黒い噂も絶えなかった。17~66歳までの半生を戸田恵梨香が演じ、そんな女傑の素顔を明らかにしていく。Netflixにて世界独占配信中。全9話
【戸田さん衣装】靴[参考価格]¥140,800(ザ・ウォール ショールーム〈ネオス〉) その他/スタイリスト私物
2026年Oggi6月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/山根悠太郎(TRON) スタイリスト/影山蓉子(eight peace) ヘア&メイク/Haruka Tazaki 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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