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LIFESTYLE

2024.05.07

俳優・北村一輝さんの孤高の仕事道「自分に自信をつけることが他人への優しさにつながる」

自身初のミュージカルとなる『王様と私』に出演する北村一輝さん。自分に厳しく、納得がいくまで突き詰めるのは、ストイックなだけでなく、自分に自信をつけることが他人への優しさにつながるとわかっているから。それは、他人に完璧さを求めて失敗を責めるような、ギスギスした世の中への挑戦でもある。そんな北村さんの次なる挑戦とは。

自身初のミュージカルに挑戦! 俳優・北村一輝さんインタビュー

好き嫌いも反対意見もはっきり言います

「5年後10年後にどう成長できるか、何をやっていたいか、いつも考えます。それは、1本の映画のように頭の中でストーリー立てされて、客観的に見ている自分がいて。

30代の僕が描いていたストーリーは、過去を振り返らず、自分の足元さえも見ず、ひたすら走り抜くというもの。自分を見つめ直したり、振り返ったりするのは、40代、50代になってからやればいい。

北村一輝さん

よく聞く“素敵な大人”になるには、30代でたくさん間違えて、恥をかいておくことが必要だと思っていたのです。そうすれば、人の失敗や間違いも許せるようになるし、自分で納得した道を歩む限り心に余裕もできる。

僕の場合は、ですけどね。他人に完璧さばかりを求めて失敗を責めるような、ギスギスした世の中への挑戦でもあるのです」

気をつけているのは“会話の中で否定をしないこと”

北村さんが30代で出演した作品は、映画・ドラマ合わせて100本近く。主演作品も増え、「ぐんぐんと波にのっている」時期だった。

「作品数は多いけれど、実は同じ監督やプロデューサーとの仕事がとても多いですね。それを狙ったり、気に入られようとしてやっているわけではありません。どちらかといえば、好き嫌いも反対意見もはっきり言います。

北村一輝さん

ただひとつ気をつけているのは、会話の中で否定をしないということ。それが自分も楽しくいられて、結果、人に優しくできるとわかったのです。そして…間違ったらあとで謝る。それだけです」

自分中心で生きていると言いながら、その眼差しはいつも他者へ向いている。北村さんと「また」仕事をしたいと思わせる理由だ。

自分にできるのか、本当に大丈夫なのか

“ミュージカル”という新たな挑戦

前だけを見ていた30代を過ぎ、40代・50代で変わるのかと思いきや、今も失敗を恐れてはいない。むしろ、より強くなっている。ところが、昨年は新たな挑戦を前に立ち止まり、悩む日々があったという。

「僕にとって初めてのミュージカル『王様と私』出演にあたり、何度も自問自答しました。自分にできるのか、本当に大丈夫なのか。悩んだ末にやることを決めたのは、ひとつは、かつて一緒に声楽を習った仲間だったプロデューサーが勇気づけてくれたこと。

ミュージカル『王様と私』

ミュージカル『王様と私』/1951年のブロードウェイでの初演以降、日本でもヒットを続けてきたミュージカル。1860年代のシャム(現タイ)で国の近代化を図る王(北村一輝)と、イギリスから来た家庭教師アンナ(明日海りお)を中心に、芝居・歌・ダンスを華麗に繰り広げる。4月9日 東京・日生劇場を皮切りに、大阪でも公演。詳細は『ミュージカル 王様と私』公式ホームページまで。

もうひとつは、ミュージカルの捉え方を自分なりに再確認したこと。ミュージカルというと、歌で内容を表現することが多いけれど、僕の主戦場はやっぱり芝居。芝居と歌を分断させることなく、芝居をメインに、その延長線上に歌があるというスタンスで。

それなら、自分なりの王様役をつくれるのではないか。過去に何人もの俳優がこの作品を演じてきたけれど、それをなぞるのではなく、まったく新しいものを。だから王様のビジュアルも、これまでと少し違います。──

ハードルを上げたらストイックにそれを超えていく

──チャレンジだし、賛否両論があることも理解しつつ、それがどんな評価になるかわかりませんが、今は気にしていられない。期待していてください。満を持してお引き受けしたわけですから、やるならハードルを高くしておいたほうが、いいんです(笑)」

自身でハードルを上げたら、それを越えるべく、ストイックなまでに準備を重ねていくのも、また北村さんの信念。ミュージカル出演が決まったときから、体のためにお酒は控え、生活リズムを整え、ボイストレーニングを始めた。

北村一輝さん

「週に1回、ボイストレーナーのもとで練習をして、時間があればひとりカラオケで歌って。1か月ほど続けたら、キーを下げて歌っていたB’zの曲も、原曲のキーで歌えるようになりました。

でも、うまくなったと思ってもまた落ち込んだり、ということの繰り返し。それでも成果が見えるのは楽しいものです。体調管理をしながら、あとは本番までにもう少し体を絞ります」

北村さんの思う『王様と私』の王様像とは

ミュージカル『王様と私』の開幕は目前。体は王様らしい風格を備え、それに伴って「気持ち」のほうも王様にシフトしてきている。

「大国に国交を迫られるシャム(現タイ)の国王は、威勢はあるけれど孤独で、葛藤していて、とても“人間らしい”。もしも、の話ですけど、僕が実際に一国の王になるなら…やっぱり“人間らしい”ことが最優先。

子供やお年寄りに優しく、目先の対策ではなく、5年先・10年先を見据えて国のシステムをつくる。そのために風通しよく、意見交換ができる国が理想です。それを貫くのは、並大抵のことではないでしょう。

でも、その過程で何かを失ったとしても、今の僕ならきっと取り戻せる。それくらいの覚悟は、これまでの経験で身についている気がします」

***

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⚫︎この特集で使用した商品の価格はすべて、税込価格です。

2024年Oggi5月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/石倉和夫 スタイリスト/櫻井賢之(casico) ヘア&メイク/松本幸子  構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部

北村一輝(きたむら・かずき)

1969年生まれ、大阪府出身。1990年にドラマ『キモチいい恋したい!』で俳優デビュー。近年の出演作に、舞台『欲望という名の電車』、映画『カラオケ行こ!』『ゴールド・ボーイ』など。待機作品として映画『陰陽師0』(2024年4月公開)、4月スタートドラマ『366日』(フジテレビ系・月曜21時〜)に出演予定。

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Oggi12月号で商品のブランド名に間違いがありました。114ページに掲載している赤のタートルニットのブランド名は、正しくは、エンリカになります。お詫びして訂正致します。
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