【働く私にMusik】韓国を中心に世界で再ブレイクした『さくらんぼ』が「どこまで転がり続けるのか見守り続けたい」
◆Guest Musician:大塚 愛
おおつか・あい/1982年、大阪府出身。15歳から作詞・作曲を始め、2003年9月10日にシングル『桃ノ花ビラ』でメジャーデビュー。同年12月にリリースした2ndシングル『さくらんぼ』が大ヒットしてブレイク。’04年には日本レコード大賞最優秀新人賞受賞、NHK『紅白歌合戦』に初出場する。シンガーソングライターとしての活動のほか、〝AIO〟名義で楽曲提供なども行う。’19年からは本格的に油絵の活動をスタート。現在、最新オリジナル・アルバム『LOVE POP』が好評発売中。
TikTokに本格参戦の理由は、求められるものを素直に受け取れるようになったから
サッシャさん(以下、S):2020年に韓国で『さくらんぼ』がリバイバルヒットして以来、TikTokでもバズっていますよね! さらには自身のTikTokも開設して、24時間で再生数のトータルが約220万回に達したことも話題になりました。その辺はSNS時代を意識して発信されているのでしょうか?
大塚さん(以下、O):ありがとうございます。特に時代を意識してということはなくて、楽しんでやらせてもらっています。「元気をもらえた」と言っていただけることが素直にうれしいと感じるようになったのも大きいですね。昔は自分が笑顔で表に出て歌うことで、「元気印」みたいな印象をもたれることに疲れてしまった時期もあったのですが、今は一周回ってそういうことを届けられるってすごいことだ、と思えるようになって。だいぶ丸くなりましたね(笑)。
S:すごく元気をもらっています! 大塚さんも自身のTikTokで曲に合わせて踊ったり、弾き語り動画をアップしたり、旅先でオリジナル曲に合わせながら街ぶらする「散歩シリーズ」が大人気だったり、本格的に参戦していますよね。
O:でも、「大丈夫? イタくない?」って、娘に確認しながらの作業です(笑)。
S:娘さんがチェック機能に!?
O:迷ったら娘に写真や動画を見てもらって、「大丈夫?」って聞くんです。そうすると「ちょっとあざといかな」とか、率直な感想を言ってくれて(笑)。
S:仕事に関する話も親子でするんですね。
O:そうですね。でも、娘には私の仕事のことを外で言っちゃいけないとか、窮屈な思いをさせていることも多くて。それに関しては申し訳ないと思っているんです。でも、小さいころから大人がたくさんいる現場について来ているからか、自分は今どうすべきかということを彼女なりに考えることができるようになっていて。
S:大人のように客観視できる娘さんなんですね。でも、そういう視点から言ってくれるアドバイスはすごく信頼できそう。
O:そうなんですよ。曲ができたときも、まず娘に聴かせて「こうだったらいいと思う」とか「あんまりパッとしないな…」とか意見をもらいます。それで考え直すこともあったりして。逆に「よかったんじゃない」って言われたときは、「あ、そっか、よかったか」と自信に繋がったりもします。
S: 二人三脚で素敵な関係性ですね。
O:娘から言わせると『さくらんぼ』だけじゃなくて、いい曲いっぱいあるのにねーって感じらしいです(笑)。
S:さすが、わかってらっしゃる(笑)! ちなみに、自身の曲がたくさんの人にカバーされたり、海外で聴かれてムーブメントになったりするって、どういう感覚ですか?
O:『さくらんぼ』だったり『プラネタリウム』が先導を切って、海外にまで転がっていってくれて。過去の曲たちもどんどんカバーされて。韓国で『さくらんぼ』がブームになっていると聞いたときは、いよいよ面白い感じになってきたなって!
S:大塚 愛がこれからどうなるのかって、ワクワクしますよね!
O:そうなんです! どこまで転がってくれるか、ずっと見守っています。
大ヒット曲『さくらんぼ』はデビュー曲が売れなかったから誕生!? 20周年目前に振り返る、ブレイクまでの道のり
S:そんな大塚さんですが、来年でデビュー20周年を迎えられますね。改めて、デビュー当時を振り返っていかがですか?
O:とにかく「早めに売れないと!」と、焦っていたのを覚えています。特に事務所からプレッシャーをかけられていたわけではなく、完全に自分の中だけで「一曲目で売れなかったら無駄… というか、かわいそうな曲が生まれてしまう」と考えていたので、いち早く大勢の人たちに曲を聴いてもらえる環境をつくらなくてはと焦っていました。
S:実際にデビューして、その手応えはいかがでしたか?
O:デビュー曲の『桃ノ花ビラ』がドラマ(『すいか』日本テレビ系)の主題歌に決まって、「やった! もう大丈夫だ!」って思いました(笑)。
S:それは手応えアリでしたね!
O:「コンビニに行くのも変装したほうがいいのかな?」って、一瞬、調子に乗ったんですけど、蓋を開けてみたら全然売れなくて…。「ドラマはすごくよかったのに、主題歌が売れないって、なんなんだ…」とだいぶ焦りました。それで、2曲目を予定していた曲から『さくらんぼ』に変更してくださいって頼み込んだんです。
S:『さくらんぼ』は、もっと別のタイミングで出そうと思っていたんですね? それは思いも寄らなかった!
O:『さくらんぼ』があまりにも個性が強いので、イメージを固められる可能性があるから、早々に出すのはあまりよろしくないと言われていて。確かに勘違いされやすいかもしれないけれど、私の中では売れるほうが先だと思いました。
S:そうしたら大塚さんの狙い通り『さくらんぼ』は大ヒットしたわけですね。
O:でもリリース当初は『さくらんぼ』も全然売れなくて… あっ終わったな… と。それがちょうど年末で、肩を落としながら大阪に帰省したのを覚えています。私がそんな暗〜い年末年始を過ごしていた最中も、レコード会社の人は諦めないで、ずっと営業を頑張ってくれていたんです。私はもう諦めていましたけど…。そうしたら、「やったよ! タイアップ取ったよ!」という報告をいただいて。すごくうれしいかったですね。
S:そこからじわじわ人気に火が付いたんですね。『さくらんぼ』ヒット後は、どういう気持ちの変化がありましたか?
O:次は一発屋にならないためにはどうしよう、という作戦が始まります。当初はメディアに出ていなかったので、どのタイミングで露出するかとか、どのターゲット層に向けて売り出していくとか、戦略を練っていきました。
S:一見するとネガティブに思えますが、実はそれが反動になって前に進めているような気もしてきます。デビュー当初からただ用意されたものをやるというよりも、ご自身でプランニングを考えていらしたんですね。
O:とりあえず5枚目までは、みなさんに知ってもらうためにも知名度を上げていこうと。自分のやりたいことをしっかり見せるのは、その後だと思っていて。アルバムごとに自分自身を深掘りしていく感じにできたらと考えていました。
S:アルバムで自分の真の姿を見せようと。
O:そうですね、アルバム5枚でやっと最初の自己紹介が終わった気持ちです。
S:今でもそういうプロデューサー目線はあるんですか?
O:そっちのほうが強いかもしれません。
S:自分を客観的に見て、こういう風にしたいっていうのが常にあるということですか?
O:自分のことを常に俯瞰で見るクセはあるもしれないですね。さっきのサッシャさんとの撮影でも、モニターの写真を見ながら、この角度はよくないなって思ったり。
S:他人任せじゃないからこそ、こうして長く第一線でいられるんですね。仕事をする上でも、何事も自分ごととして考えることって大切な気がします。
<→Vol.2へ続く:ピアノが下手だから始めた曲づくり! 大塚 愛「質より量で勝負」で自分の居場所を>
【Information】4年ぶりのオリジナル・アルバム『LOVE POP』が好評発売中!
テレビアニメ『フルーツバスケット』の第2クールOP曲『Chime』、ラッパーのあっこゴリラと共作した『あいびき』、前向きで力強いギターポップナンバー『GO』などを含む、全11曲を収録。/¥2,970(通常盤) エイベックス
毎年恒例のアニバーサリー&バースデーライブ 大塚 愛『LOVE IS BORN ~19th Anniversary 2022~』
デビュー日が9月10日、自身の誕生日が9月9日であることから毎年9月にライブ『LOVE IS BORN』を開催。そんな毎年恒例の『LOVE IS BORN』を今年は3年振りとなる日比谷野外大音楽堂で開催。WOWOWプラスでも生中継されることが決定!/公演日:9月11日(日) 開場:16:00、開演:17:00
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【大塚さん衣装】すべて私物
【サッシャさん衣装】
ジャケット¥308,000(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン〈イザイア〉) Tシャツ¥4,180・チーフ¥880・パンツ¥10,780(ベルベルジン) その他/スタイリスト私物
【協力社リスト】
イザイア ナポリ 東京ミッドタウン:03-6447-0624
ベルベルジン:03-3401-4666
撮影/山根悠太郎(Tron) スタイリスト/久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/KUMI(lodge coop/大塚さん分)、塩田勝樹(Sui/サッシャさん分) 構成/竹市莉子・宮田典子(HATSU)