ノスタルジーな不思議な感覚を体感するラグジュアリーホテル
滞在したのは、これまで体験したことのない感覚を味わった「ザ・ホテル青龍 京都清水」。それは“子供の頃の自分”が呼び起こされるような感覚。
これは、国内のみならず、海外のステイ先でもこれまでに感じたことのないもの。単純にノスタルジックな“気分”ならば、フランスの田舎町にあるシャトーホテルや、スイスの湖畔に建つ古い歴史的なホテルなどにあるが、それとは異なる。
自分の原体験を思い出すだけでなく、あの頃の自分にタイムスリップしたような感覚…。
豊かで穏やかな時が流れるホテル空間
「ザ・ホテル青龍 京都清水」は、明治2年に開校し、昭和8年に現在の場所に移転新築された元清水小学校の、歴史的価値のある校舎を活用。当時の意匠を継承しながら、現代にふさわしい快適性を併せ持つホテルとして2020年3月に開業したハイクオリティホテル。
ホテル内の至る場所に小学校時代の面影は感じることができる。中でも筆者が最も子供時代の自分を強く感じたのは、当時の段差をそのまま活かした階段。
黒光りする年季の入った手すり、子供の足でも容易に駆け上がることのできる低い段差の階段の光景は、小学生時代の自分がそこにいる感覚を呼び覚ます。かつての小学校に漂っていた空気感が確かにここにはある… と、きっと誰もが感じることができるはず。
このホテルに滞在中、筆者はこの階段空間が愛おしく感じられ、チェックイン時以外エレベーターを使用することはなかった。自分のステイする客室へと階段を上り、レストランやロビーへと下る。その度に湧き上がってくる甘酸っぱいような、むず痒いような感覚を味わいながら、子供の頃の自分の姿をこの空間に投影していた。
▲子供でも容易に上り下りができる低い段差の階段。
無論、階段以外でも小学校時代の面影を感じられる部分が無数にあり、この小学校の卒業生ではなくとも、懐かしい気分に浸ることができるのだ。
▲管理作業員室だった空間は、現在はエレガントなホテルのフロント・ロビーに。
▲小学校として使われていた当時の写真や資料などをアーカイブし、展示しているシックな空間。
▲客室フロアの廊下には、小学校当時の懐かしのダストシュートが残されていた。
▲階段から客室へ続く廊下のスペースには、クラシカルなインテリアとアートが配されていた。
教室は快適な客室へと見事な変身を遂げている
筆者が宿泊したのは敷地中央にある大階段に面した45.2平米のスーペリアキング。室内でくつろいでいる時に観光地とは思えない静寂さには驚くほど。
▲校舎の窓枠をそのまま活かしたクラシカルな雰囲気のスーペリアキング。
実際に宿泊した時に、アメニティや浴室なども細かに撮影したけれど、改めて紹介するのが野暮に思えるほど、手ぶらで訪れても問題ナシの充実ぶり。室内を細かに紹介するよりも伝えたいものがたくさんあるのがこのホテルの特徴かもしれない。
客室のバリエーションも豊か。広々としたテラス付きの客室や、眼前に法観寺の八坂の塔がある客室も。
▲136.3㎡のパノラミックスイートは、ベッドから八坂の塔を1日中眺められる贅沢なロケーション。
必ず立ち寄りたい宿泊者専用のゲストラウンジも素晴らしい
このホテルには魅惑的なゲストラウンジがある。軽食やアルコール類を含むドリンクを楽しめるだけでなく、実に面白い体験ができるのだ。。
▲たっぷり種類が用意されているアルコールに加え、軽食のレベルもハイクオリティ。軽食はセイボリーもスイーツも充実していて、スイーツの中には、京都らしく八つ橋や和菓子も用意されていた。
■海外からのゲストにも喜ばれそうな抹茶体験!
ゲストラウンジで興味深かったのが体験ブース。抹茶を自分て点てることができる他、自分で豆を挽きドリップして淹れるコーヒーなども。心得のあるスタッフが丁寧に教えてくれるので初心者でも問題なし。
▲ゲストラウンジにPCを持参し、しばし仕事。合間に、法観寺「八坂の塔」を眺めながら抹茶をいただいた。
▲四季折々の景色を楽しみながら寛げるゲストラウンジは、ソファ席、テーブル席、カウンター席があり、他のゲストが気にならない広々とした空間が嬉しい。
日中の疲れは風情ある貸切風呂で癒すこともできる
さらにホテル内には、宿泊者専用のフィットネスジムのほか、全3室のプライベートバスがある。小学校時代の講堂だったという空間は、3m以上の天井高という個性的なつくり。窓はなくとも非常に開放的な印象。
客室にあるバスタブもゆったりとしているので十分に寛げるが、家族利用などのゲストにプライベートバスは好評とのこと。
▲湯上がりにゆったりと寛げるスペースも。宿泊者専用、要予約。90分/¥6,000。
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語りつくせぬ魅力に満ちている「ザ・ホテル青龍 京都清水」。次回のレポートでは、このホテルの食の素晴らしさをお伝えします。
文/長谷川幸代