新進気鋭の映画作家・堀江貴大さんが手がけるオリジナル作品は「不倫」をテーマにした新たな夫婦映画
脚本・監督を務めるのは、ドラマ『高嶺のハナさん』(BSテレ東)でも監督を手がける新進気鋭の映画作家・堀江貴大さん。ご紹介する『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、映像クリエイターと作品企画の発掘プログラム「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2018」で準グランプリに輝いた作品の映画化です。
劇中では佐和子が描く「不倫」を題材にした漫画を通じて、どこまでが現実でどこからが創作なのか、徐々に境界線が曖昧になっていき…。夫婦間で繰り広げられるスリリングな展開からは目が離せなくなり、観る人の数だけ答えがある衝撃のラストも必見。そんな本作の魅力に迫っていきます。
今回は、この映画の宣伝を担当している向井 渚さんに、見どころをうかがっていきます!
人気漫画家・佐和子が漫画に込めた思いとは? 物語が展開するにつれ、現実と妄想の世界がボーダレ
長期連載の作品が終わったばかりの漫画家・佐和子は、早くも新連載の話を持ちかけられる。テーマに迷う佐和子だが、不倫をテーマに書くことを決意。ある日、その漫画の下書きを盗み読みした夫の俊夫は、自分たち夫婦のことが描かれていたことに驚愕!
佐和子の担当編集者・千佳との不倫を思わせる展開も描写されていて、俊夫は「ばれたかも!」と焦り出す始末。漫画が仕上がるにつれ、今度は自動車教習所へ通い始めた佐和子と若い先生の仲までも疑いだすようになって…。
「不倫を題材にしていますが、まったくドロドロしておらず、どこか爽快感すらある仕上がりに、きっとビックリ&満足していただけると思います。夫婦の〝ウソとホンネ〟が交錯するスリリングな心理合戦、だれしもが身に覚えのある男女感のズレがユーモラスに描かれていて、結婚5年目夫婦の〝あるある〟も大きな見どころのひとつです」(向井さん)
さまざまな表情を見せる魅力的なキャラクターたちが、爽快感のある不倫という、新鮮な見応えを与えてくれる!
激しい感情は外には出さないけれど、沸々とたぎるものが随所に感じられる佐和子。そんな黒木 華さんの繊細な演技で、スリリングさが助長された本作。「不倫」を軸に、さまざまな表情を見せる魅力的なキャラクターたちも見どころのひとつです。
「堀江監督は、佐和子の怖さや何を考えているか分からないミステリアスな魅力を演出したいと考えたそうです。あまりセリフの多いキャラクターではありませんが、だからこそ自身が思っていることを生業でもある〝漫画〟に落とし込んでいくことで、夫に対して復讐しようとする本作の物語としての魅力が強調されました。
黒木さんはその辺りを本当にうまく表現してくれたと振り返っています。黒木さんには、劇中劇となる佐和子の漫画の実写パートの撮影時に、夫の俊夫に見せる顔とは違う部分や印象をのぞかせることを意識してもらったそうです。声のトーンを上げたり、佐和子の行動を少し積極的に見せたりするなどのニュアンスが加わっています。
個人的に印象深かったキャラクターは、佐和子の夫・俊夫とその不倫相手の千佳です。主体性がなくどうしようもない俊夫ですが、柄本 佑さんが演じるととてもチャーミングなんです。妻の不倫を疑い、居ても立っても居られなくなり教習所に乗り込むシーンや千佳が佐和子の実家に押しかけて来てしまい、慌てふためく姿はぜひご注目いただきたいです。また、奈緒さん演じる千佳のあっけらかんとした雰囲気も本作の爽快さにひと役買っていると思います」(向井さん)
不倫をテーマにしているのに、どこか滑稽さが漂う! 堀江監督が作品に込めた想いとは?
最後の最後まで、何が本当で嘘なのかがわからないまま進み、佐和子の夫である俊夫がどんどん追い詰められてゆく様は、どこか滑稽にも感じられます。
「堀江監督は本作を構想する上で、ご自身が結婚したこともあり、夫婦モノをつくることに興味をもち始めたそうです。以前から別ネタで考えていた〝自動車教習所の先生と逃避行するストーリー〟に〝復讐〟というテーマを織り交ぜ、シリアスだけどコメディ色もある不倫モノを描くことを目指していらっしゃいました。〝不倫〟をテーマにすると、物語や展開がシリアスになってしまいがちですが、〝漫画で不倫を描いていく〟という、不倫に対して距離をもった見つめ方をすれば、もしかしたら喜劇になるのでは… という考えがあったそうです。
また、佐和子の恋の相手として登場する、金子大地さん演じる新谷先生の王子様っぷりにもぜひ注目していただきたいです! 監督曰く、『金子さんは瞳の揺れ方が特徴的。佐和子の漫画の中に出てくるキャラクターという抽象化された存在に人間味を持たせる上で、視線や瞳の動かし方が重要だと思っていたんです』とのこと。漫画家夫婦の一風変わった夫婦喧嘩の行き着く先はどこなのか。ニヤニヤ、ヒヤヒヤしながら楽しんでご覧いただけるとうれしいです」(向井さん)
真実がどちらともつかないまま、物語は衝撃のラストへ!
ぜひ、映画館に足を運んでみてくださいね!
【information】
『先生、私の隣に座っていただけませんか?』
脚本・監督:堀江貴大
出演:黒木華/柄本佑/金子大地/奈緒/風吹ジュン
劇中漫画:アラタアキ 鳥飼茜
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
9月10日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
©2021『先生、私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会
取材・文/宮田典子(HATSU)