共感度100%なのは、まるで「私たち」の物語だから。映画『花束みたいな恋をした』
『東京ラブストーリー』、『最高の離婚』、『カルテット』など、数多くのヒット作の脚本で知られる、脚本家・坂元裕二が、今を生きるすべての若者へ向けて書き下ろした初の映画オリジナルストーリー。『いま、会いにゆきます』、『ハナミズキ』などの作品を手がけた土井監督とは、ドラマ『カルテット』以来の再会、映画では初タッグとなります。菅田将暉と有村架純の共演も話題の今季期待値ナンバーワン作品の魅力に迫ります。
今回は、この映画の宣伝プロデューサーを担当している中野朝子さん(ヨアケ)に、見どころをうかがっていきます!
急速に盛り上がるふたりの恋! 平凡だった日常に幸せな時間が流れ出す
東京・京王線の明大前駅で、偶然同じタイミングで終電を逃したことから知り合った大学生の山音 麦(菅田将暉)と八谷 絹(有村架純)。好きな音楽や映画がほとんど同じだったふたりは、あっという間に恋に落ちていく。その後、互いに大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始め、日々の現状維持を目標にふたりは就職活動を続けるのだが…。
「『20代の本気の恋愛』を経験したことのある人にとっては、その時の甘さや苦さがすべて刻まれたラブストーリーなので、観ていると、過去の恋を思い出して、号泣必至です。ティーン向けのキラキラ系ラブストーリーとは全く違うので、私と同世代のOggi読者の皆さんには全力でオススメします!
主人公を演じるふたりの演技が素晴らしく、とても自然体なので、だれもが自分自身を重ねてしまいます。また、普通の大学生がとても気の合う相手と出会い、恋をして、学校にも行かずにひたすらふたりだけで過ごして。ふたりでいるのが当たり前になったころ、なぜか同じだったはずの価値観が少しずつズレてきてしまう。そんな、まるで自分自身の話に置き換えられるようなリアルな『恋のはじまり』と『恋の終わり』が描かれていて、共感が止まりません。
今作においては、ぜひ『私たち自身の物語』をふたりに重ねて鑑賞してみていただけたらと思います。ふたりが紡ぐかけがえのない時間に、きっと胸がいっぱいになります。劇場を出ても思い出してまた涙が出るし、観賞後は映画の感想はもちろんですが、過去の恋バナで超盛り上がるので、友人と一緒に観にいくのもオススメです!」(中野さん)
坂元裕二が伝えたかったことを代弁するかのような、Awesome City Clubによるインスパイアソング「勿忘」が話題!
「映画は向いていないからやりたくなくて、一生ないと思っていたんです」と語る、坂元裕二が本作を通して、今を生きる人に伝えたかったこととは…。また、劇中に実在のバンドとして登場する、Awesome City Clubによるインスパイアソング「勿忘」の制作秘話に迫ります。
「坂元さんはオフィシャルインタビューで『21歳から26歳の登場人物を描くということは、必然的に社会に出ることになるけど、その困難さを描きたかったわけではなく、どんな時代であっても20代というのは、本人たちにその自覚がなくても美しい時期だと思う』と語っています。
社会に出てうまく折り合いをつけている人たちも含めてすべてが美しい、と。そのメッセージは大人になった私たちの胸に深く刺さるものだと思いました。本作の主人公のふたりも、悩みながら自分たちなりの答えを出しますが、それがどんな結果であれ、社会の中で生きようとした彼らの美しさはとてもまぶしいです。
また、劇中では主人公のふたりが聴いている実在のバンドとしてAwesome City Clubが登場します。ふたりがよく行くファミレスの店員役でボーカルのPORINさんがPORINさんとして登場するのも見どころです。もちろんライブリハーサルのシーンもありますし、MV映像も登場します! インスパイアソングは、映画完成後に本作を鑑賞したAwesome City Clubの皆さんが、宣伝のために新たに書き下ろしてくれました。本作に対する贈り物であり熱いエールであると感じています!」(中野さん)
ソーシャルディスタンスが叫ばれる今、好きな人との心のディスタンスを近づけて
コロナ禍で、人との接触が制限され、恋愛に対する後ろめたさを感じる昨今。以前よりも恋愛に対するハードルが上がってしまったように感じることも。それでもふたりのような素敵な恋愛をしたいと思う人も多いはず。この矛盾にどう立ち向かっていけばいい!?
「コロナ禍であっても恋愛は難しくならないと感じます。心の距離が近づけば恋は濃度を増していき、逆に心の距離が離れていけばいくら同じ部屋に暮らしていても遠い存在になってしまう。コロナ禍の今だからこそ、心のディスタンスを限りなく近づける『恋』で、人と繋がる喜びを感じることが出来ると思います。世相に臆することなく恋をして欲しいと願いますし、そのことの大切さがこの映画には描かれていると思っています」(中野さん)
偶然出会ったふたりが恋に落ち、まるで花束のような、美しい思い出が詰まった最高の5年間を過ごしていく。恋する月日のすべてがていねいに描き出され、恋愛をしたことがある人なら、共感すること間違いなし!
【information】
『花束みたいな恋をした』
監督:土井裕泰
脚本:坂元裕二
出演:菅田将暉 有村架純
清原果耶 細田佳央太
韓 英恵 中崎 敏 小久保寿人 瀧内公美
森 優作 古川琴音 篠原悠伸 八木アリサ
押井 守 Awesome City Club PORIN
佐藤寛太 岡部たかし
オダギリジョー
戸田恵子 岩松 了 小林 薫
2021年1月29日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか、全国公開。
配給:東京テアトル、リトルモア
(c)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
取材・文/正木爽(HATSU)