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LIFESTYLE

2020.12.26

2021年こそ身につけたい習慣のスタートに!【書評家・石井千湖さんおすすめ】

書評家の石井千湖さんが、テーマごとにおすすめ本を紹介してくれる人気連載。今回は、サクッと読みやすい短編集の紹介。

切れ味のいい文章、飽きのこないアンソロジーで時短読書

移動の合間、喫茶店で、旅先で、サクッと読めるけれど、心に残ったり、深く考えさせられる良質な本って?

おひとりさま社会学者の旗手が下着と性の謎を解く

『スカートの下の劇場 ひとはどうしてパンティにこだわるのか』

暑い夏の読書は、短い時間でサクッと読めるけれど、本の世界に〝ぐっ〟と没入できるものがいい。

まず、おすすめしたいのは、豊富な図版を用いて下着と性にまつわる謎を解く『スカートの下の劇場 ひとはどうしてパンティにこだわるのか』。東京大学入学式の祝辞で注目を集めた社会学者にして、「おひとりさま」のパイオニアである上野千鶴子が30代のときに書いたベストセラーの新装版だ。切れ味の鋭い文章で読みやすいのに、深く考えさせられる。

30年前、本書が書かれた当時は、女がシモネタを語るのはひんしゅくを買うことだった。だから売れたとも言われたらしい。しかし、上野さんは下着という身近なものを糸口に、だれにとっても大事なセクシュアリティとジェンダーの問題を論じているのだ。

たとえば『鏡の国のナルシシズム』という章。日本のポルノグラフィーのワイセツさは、「男の性的な妄想を増幅することによって生じる」という指摘から始まって、現実の肉体より下着に性的な興奮をおぼえる人々がいるのはなぜかを考察し、女性の身体イメージについての話にたどり着くところがスリリングだ。

「異性に選ばれない自分に価値はない」という思い込みから、自由になるヒントが得られるはず。新装版の巻末に収められた上野さんによる「自著自解」も必読だ。初版刊行から年を経て変わったこと、いまだに変わっていないことが検証されていて、若い世代に向けたエールにもなっている。

『スカートの下の劇場 ひとはどうしてパンティにこだわるのか』(河出書房新社)
著/上野千鶴子
人いつごろから下着をつけるようになったのか? 旧約聖書のアダムとイブの話からパンティの起源、現代の下着コレクターの実話まで、世界の下着の歴史を紹介しつつ、女と男の非対称性を描く。セクシュアリティとフェミニズムの入門書としても読める名著。

バラエティ豊かで飽きない猫だらけのアンソロジー

『猫のまぼろし、猫のまどわし』

うだるような暑い日に長時間集中力を保つことは難しい。いろんな話が入っていて飽きない本が読みたいという人に最適なのが、アンソロジーだ。東雅夫が編纂した『猫のまぼろし、猫のまどわし』は、なかでもユニークな一冊。さまざまな国、さまざまな時代の小説、エッセイから「猫」と「お化け」をキーワードに編を選りすぐって収録している。

全体が3つのパートに分けられているのだが、特にパートの『猫町をさがして』が楽しい。主人公が猫だらけの町に迷い込む萩原朔太郎の名作『猫町』と共通点のある作品を並べてあるのだ。かわいかったり、恐ろしかったり、不思議だったり。猫だらけの別世界で遊んでいるような気分が味わえる。夏の旅のお供にどうぞ。

『猫のまぼろし、猫のまどわし』(東京創元社)
著/東雅夫
飼い主とそっくりの口調でしゃべる猫、密室にいつのまにか入り込む猫、美青年に化けて女のところへ通う猫、粉ひき屋の息子を貴族に仕立て上げる長靴をはいた猫……。古今東西の猫にまつわる奇妙な話を21編収める。各話の扉に描かれた猫の絵もおしゃれ。

2019年Oggi8月号「『女』を読む」より
撮影/よねくらりょう 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部

TOP画像/(c)Shutterstock.com

石井千湖

いしい・ちこ/書評家。大学卒業後、約8年間の書店勤務を経て、現在は新聞や雑誌で主に小説を紹介している。著書に『文豪たちの友情』、共著に『世界の8大文学賞』『きっとあなたは、あの本が好き。』がある(すべて立東舎)。

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Oggi12月号で商品のブランド名に間違いがありました。114ページに掲載している赤のタートルニットのブランド名は、正しくは、エンリカになります。お詫びして訂正致します。
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