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WORK

2020.10.02

書籍化決定!『働く女子に明日は来る!』著者・中澤日菜子に聞く、ココが読みどころ!(後編)

好評のうちに終了した連載『ブラックどんまい! わたし仕事に本気です』が、装いも新たに単行本化します。タイトルは『働く女子に明日は来る!』。イマドキのお仕事問題に果敢に立ち向かう七菜の奮闘ぶりには共感しきり。働く女子の背中を押してくれる、令和のお仕事小説決定版、その創作秘話を、著者の中澤日菜子さんにインタビューしました。今回はその後編です。

9月16日刊行の、『働く女子に明日は来る!』。この作品は、好評のうちに終了した連載『ブラックどんまい! わたし仕事に本気です』が、装いも新たに単行本化したもの。一見ブラック企業かと思えるような過酷な状況下でも、くじけることなく前向きに仕事に取り組む主人公・七菜の奮闘ぶりに勇気づけられること間違いなし! 創作秘話や読みどころを聞いた、著者の中澤日菜子さんへのインタビュー、その後編です。

インタビュー前編はこちらから

「働くことは、生きること」。働くすべての人に送る、熱いお仕事小説が誕生!

◆『ブラックどんまい! わたし仕事に本気です』改め、『働く女子に明日は来る!』の内容をおさらい!

31歳の時崎七菜は、テレビドラマ制作会社のアシスタントプロデューサー。

不器用だけれど真面目で一途。パワハラ、モラハラ、働き方改革……。精一杯頑張る七菜は、イマドキのお仕事問題の数々を、どうサバイブしていくのでしょうか?

働く全ての人に送りたい、励まされ、心温まる小説です。

<中澤日菜子「ブラックどんまい!」連載記事一覧はこちらから

著者の中澤さんがストーリーの着想を得たきっかけは?

――へこたれることなく頑張る七菜に、これでもか、というくらい次々に試練が訪れますね。

中澤:たくさん(試練を)用意しちゃいました(笑)。小説として、たくさんの山がある方が、読んでいただける方にも楽しんでもらえるのではないかと思って。そこが小説の醍醐味かなと思うんですよね。七菜の奮闘ぶりが、皆さんへの励ましになるように願いつつ、(七菜には)辛い思いをさせましたが頑張ってもらいました。手抜きをせず、一緒に走り抜こうね、と七菜に呼びかけながら書き進めました。

――そんな数々試練の中に、ハラスメントとも言える問題も起きますが、もしそんな場面に遭った場合の立ち向かい方はどうしたら良いものでしょうか。

中澤:デリケートな問題ですが、ただ怖がっていても萎縮してしまいますよね。「これはおかしい」、と思ったら、多少自分が消耗しても声を上げるべきなのではないかと思います。

ハラスメント的な状況がもし訪れたら、「傷つく人、気にする人がいるかも」と思うきっかけになる。

私は、自分が正しいとはみじんも思いませんが、「これはハラスメント的発言か」と考えるきっかけになれば、と思って、敢えて「イヤな石」になりたいというか。スルーすることもできるけれど、ちょっとしたひっかかる石となることで、「こういう見方もあるんだな」というふうにお互いに視野を広げるきっかけが作れれば、良い関係が生まれるんじゃないでしょうか。難しいですが、面と向かって伝えることの大切さも感じますね。

――なるほど。七菜の置かれている環境は、「ブラック」といってしまえばそれまでですが……?

中澤:働き方だけを見たら確かに「ブラック」かもしれません。勤務時間が深夜になったり早朝になったり、その他にも挙げたらキリがない。そこで、「ブラック企業」と、「一見ブラックに見えるけどそうでない企業」ってなにが違うんだろうと考えたんです。最終的には、働く人本人が望んで働いているかどうか。外から圧力をかけられて働かされているか、働きたくて働いているか。そこだと思うんです。

――七菜は、自分で望んで働いていますよね。とはいえ、限りなくブラックに近い職場で奮闘していますが。

中澤:七菜の勤めているテレビドラマ制作会社の場合は、繁忙期が過ぎれば自分の時間が持てたり、代休も取れます。過酷な時期が終われば充電期間があり、バランスが良い。(ブラックというより)「明るいグレー」くらいの会社のつもりで描きました。強制されて働かされていたり、病気になるほどの環境だと、企業を糾弾する方向になるので、書くにあたっては自分の仕事にやりがいと楽しみを見出している女性を描きたかった。仕事を「やらされている感」よりも「やってやるぞ感」を全面に出したいなと思って、設定を考えました。

――「できるかできないかじゃなくてやるかやらないかだ」というセリフが響きます。

中澤:何かあると、すぐに立ち止まってモヤモヤ悩んでしまいがちなもの。行動しないと結果はついてこないので、とにかく動いてみることが大事だと思います。すごく大変そうだと思っても、一歩踏み出すと、意外に方向性が見えてきたりするものです。できるかできないかで悩むより「とりあえずやってしまえ」、そのほうが物事が進むんじゃないかな。水かきと一緒で、ひとかきすれば浮くのでもうひとかきができて、そのひとかきが浮いたらまたもうひとかき。その連続で人生は進んでいくんじゃないかな、と思うんです。その思いを言葉に込めてみました。

――踏み出さないことには何も始まらないですものね。

中澤:一歩踏み出すのはすごく重いけれど……、踏み出すことが大切。ジョギングでも走り出すまでは面倒だったりしますが、ある程度走っていくとかえって体が楽になるものですよね。とりあえず手を動かすことで、気持ちや脳が追い付いていったりもする。偉そうなことを言うようですが、これは自分にも言い聞かせていて、「悩むな、動け!」と仕事場の机の前に貼っているくらいなんです。「とにかく書け、最後まで」という標語とか(笑)。目の前にあると刺激になるんですよね。

――「やれることをやれ、目の前の仕事に全力で取り組め、そうしているうちに、動かないと思ったいたものが動き出したりするんだ」というセリフも、心に刺さります。

中澤:目の前のことをとにかくやる。その重要さですよね。私の場合、どうしても書けない時は、別なことでもなんでもいいからとにかくやってみよう、と切り替えます。発想の転換をするのが大事だと思っているんです、それがきっかけで頭が回りだしたりするので。ひとつのことだけしていると能率も悪いし、頭が焦げ付いてしまう気がするんですよね。全然関係ないことをやると本業にリターンがあるという気がするので、この考え方は色んな仕事の方にも当てはまるのではないでしょうか。

――参考になります。ところで、七菜に訪れる人生の岐路とも言えるシチュエーションとして、「仕事と結婚」について悩むシーンがありますが、同じように選択に悩む読者に向けて背中を押す言葉はありますか?

中澤:私の場合の大きな岐路は、会社を辞めて、物書き専業になるかどうかでした。その時ちょうど30歳だったのですが、会社員として仕事を続けていれば安定はしている、フリーランスになるとうまくいかなかった時にみじめだし……、などとずっとモヤモヤ考えていたんです。そんな時に、自分の人生の残りの時間を思い描いてみて、「今辞めなかったらこのあときっと後悔するだろう」と強く思ったんです。人生の残りの時間を逆算してみて、「やってみよう」と。

60歳、70歳になってから、「やっぱりあの時挑戦しておけばよかった」と思うのは嫌でしたし、ダメだったらやり直せばいい。ダメだった経験も含めて次のステップになるだろう、と考えて、始めてみました。
それがどんな岐路でも、自分の残りの人生設計を考えてみて、30年後の自分が今の自分を振り返った時にどう思うかを描いてみると良いのではないでしょうか。

他人や身近な人のアドバイスも重要ですが、自分の人生は自分で背負っていかなくてはならないので、「未来の自分が今の自分を見て何というか」、ということを想像してみると、決断した方が良いかどうかイメージしやすいのではないかな、と思います。

――とても心に響きます。実践に生かしていきたいなと思いますね。

中澤:「仕事を辞めて新しいことへ挑戦しなさい」と言っているわけではまったくなくて、将来の自分が後悔しないように、ということだけを強く思っているんですよね。決めたら前に進むしかない、と思える気がするんです。

――七菜も、そういう覚悟を持っている女性ですね。

中澤:七菜も、どこかでステップアップしなくてはいけないんです。ステップアップすれば違う道も見えてくるもの。仕事か結婚か選ぶのではなく、どちらも両立できる可能性もあきらめないでほしい。
誰もが、色々な可能性を秘めていると思うので。

――ハードな仕事の中で、頼子さんの作るロケ飯の描写が元気づけてくれますが、どんなことを伝えたかったのでしょうか。

中澤:美味しいものって偉大だな、という一言に尽きます。頑張ろうと思える、食は活力の源。

私が食べることが大好きなので、ご褒美として食は最大のパワーを持つんです。人によって違うとは思うのですが、みんなで同じものを美味しいね、と言えることは、連帯感が生まれて、距離感が縮まると思います。食べ物の持つパワーを伝えたかったですね。

――最後に、働く女子にダイレクトに響く、読者に伝えたいメッセージをお願いします。

中澤:たまに立ち止まりながらも、常に歩いてみてください。ずっと歩きっぱなしはしんどいので、
立ち止まって空を見上げたりしながら。とりあえず歩いてみる、迷子になったらなったなりに違う風景が見えてきて、迷っても損はない、ということを、この作品では特におすすめしたいです。

◆ここがイチオシのポイント! 書店員さんから寄せられたコメントを紹介!(後編)

ひと足先に作品を読んでいただいた、全国の書店員さんからの感想を紹介します。

「ハラハラドキドキ笑って泣けてお腹が空く! 栄養たっぷりの具だくさんおみそ汁のようなお仕事小説! 今、私はこういう本を求めてた! 探してた! と大興奮しちゃうくらいドンピシャな内容で心が飛びはねております(笑)。くじけそうになったり、あきらめそうになったときはこの本を読んでパワーチャージします。お守りにします!!」(BOOKSえみたす ピアゴ植田店 村上絵理奈さん)

「働くって、なんて刺激的で素敵なことなんだとひしひしと感じました。ついつい突っ走りすぎて、両立(仕事とプライベート)できず、折れていってしまう人も多いかと思いますが、この現場は、本当にいい! がんばりながら、成長していろいろなハードルを乗り越えられるようになった七菜さん! まぶしいです。この世の中のがんばって働く女子、すべてに読んでいただきたい!です。」(有隣堂藤沢店 佐伯敦子さん)

「大好きな仕事のはずなのに、なんでこんなに苦しいことばかりなんだろう。とささくれだった心の私は、読みながら何度本を抱えて泣いただろう。七転び八起きの七菜に心からエールを送りながら、七菜の失敗は自分の失敗のように心がざわつき、絶妙なタイミングで振る舞われる温かい食事に七菜と一緒にお腹も心も満たされて、心地の良い満腹感。働く全女子が泣く!! と言ってもちっともおおげさじゃないと思う」(明林堂書店ゆめタウン大竹店 船川梨花さん)

「(章タイトルを見ただけでお腹が鳴りました……)1本のドラマが世に出るまで、どのような人々が携わっているのか。この物語はきっとほんの一部の話ですが、ドラマ本編よりもドラマ的で、本編以上に魅力的なのではないだろうか」(紀伊國屋書店笹塚店 小川由起さん)

【著者・中澤日菜子(なかざわ ひなこ)プロフィール】
1969年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。2013年『お父さんと伊藤さん』で「第八回小説現代長編新人賞」を受賞。同作品は2016年に映画化された。また四作目となる『PTAグランパ!』はNHKによりドラマ化。2017年にパート1が、好評につき2018年にパート2が放映された。その他の著書に『おまめごとの島」『ニュータウンクロニクル』『Team383』『お願いおむらいす』、紀行文として『アイランド・ホッパー』がある。2020年10月『一等星の恋』(小学館文庫)発刊予定。

9月16日刊行予定!

働く女子に明日は来る!(小学館) 定価:1,600円+税/単行本/四六判ソフトカバー/352ページ(予定)

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Oggi12月号で商品のブランド名に間違いがありました。114ページに掲載している赤のタートルニットのブランド名は、正しくは、エンリカになります。お詫びして訂正致します。
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