仕事と並行して、他部署の仕事を体験!「社内インターン」制度を取り入れている団体って?
日本のODA(政府開発援助)を一元的に行う実施機関として、世界各地の開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)。言葉だけ聞くと、なんだか〝お堅く〟感じてしまいがちですが、働き方への考えが非常に柔軟でたくさんの女性がグローバルに活躍している職場なんです。最近は「働き方改革」にも力を入れていて、まだ一般的に広く取り入れられていない制度も積極的に導入しています。
そんなJICAで今盛り上がっているのが、「社内インターン」という研修制度。自分が担当してる仕事と並行して他部署の仕事を体験することができる… というキャリアプログラムの一つです。名前はときどき耳にするけれど、実際に経験することで、働き方や仕事への考え方にどのような変化が生まれるのか…? 「Oggi読者のみなさんが、自分自身のキャリアパスを考える際の参考になるはず!」ということで、JICAの社内インターンについて〝本当のトコロ〟を聞いてみました。
JICAで実施されている「社内インターン」ってどんな制度?
そもそもJICAで行われている社内インターンとはどんな制度なのか? まずは、人事部の下谷小百合さんに概要をお伺いしました。
「社内インターン制度」はいつから取り入れられているんですか?
下谷さん:2017年度に試行的なスタートを切りまして、2018年度から制度として本格的に始まりました。2020年度で4年目を迎えます。スタート当初は「社内インターンって何?」という状態で(笑)。ほとんど知られていませんでしたが、3年たった今では制度の名前も内容もかなり浸透してきていますね。制度を積極的に活用する職員もいればそうでない職員もいますし、制度への関心の高さは人それぞれですけれども、キャリア形成や仕事の方法についての〝選択肢のひとつ〟としての認知度はかなり高いように感じています。
▲「この数年ですでにインターンに2回参加した〝リピーター〟もいます」と下谷さん。(〝リピーター〟の方にも取材済み。その内容もまた後日お届けします!)
この制度が始まったきっかけとは? 機構内から声が上がったんでしょうか?
下谷さん:立ち上げ当時の人事部関係者に確認したところ、機構内でヒアリングをしてみると「仕事をするうえでの専門性を高めたいと思っていても、自分ではキャリアパスを選べない」という悩みを多くの若手職員が抱えていることに気がついたそうです。その課題をうけて、若手職員がキャリアパスを自分で考えて実行できる機会をもっとつくろうとスタートしました。実際は、40代後半の職員も参加していたりと年次の区分は設けず、広く活用してもらっています。期間や内容も、インターン先の部署によって様々で、1週間通して短期間集中でやるものもあれば、週1回くらいの活動の頻度で半年近くかけて取り組むようなケースもありますね。
キャリアは自分でつくっていく… そんな前向きな気持ちに応えたい
「行きたい部署、やりたい仕事があっても、必ずしもそこで働けるわけではない…」仕事をしていく上で、どうしてもつきまとう問題ですよね。
下谷さん:JICAは慣例的に約3年ごとに部署異動が行われるんです。とはいえ、教育や環境、水資源など取り扱う事業は多岐に渡りますし、また、総務や人事といった組織を支えている部署も多数あります。さらに、拠点も国内だけで15か所、海外には約100か所ありますし… 人事部として本人の希望を最大限尊重できるように努力してはいるものの、職員全員の人事希望を叶えるというのはやはり難しい。〝人事異動〟という枠組みの中だけでは、動ける範囲が限定的になってしまうので、そこをもっと柔軟にできたらな、と。
▲「3回目の部署異動では、海外事務所を経験してもらうことが多いです」とJICAならではの人事エピソードも。
下谷さん:「自分の専門性を高めたい」「関心分野の業務にもっと積極的に携わりたい」という声にも、「部署異動までは希望していないけれど、今携わっている業務に付随する分野をインターンで学んで今後にいかしたい」という声にも、さまざまなキャリアパスへの想いを受け止められる制度になっていけばと思っています。この制度があることで「キャリアは自分でつくっていける、つくっていく」という気持ちで仕事ができて、今以上に活躍する職員が増えていってくれたら嬉しいですね。
個人のキャリアに対してだけではなく、JICAという〝組織〟がこの制度から得られる効果も多そうですね。
下谷さん:そうなんです。そのひとつに、組織内の風通しが良くなるという点がありますね。JICAに限らず、一般企業でも同様だと思うんですが、ひとつの事業に対して、事業そのものを表立って動かしている部署もあれば、その裏側でお金の流れを管理している部署もある。同じ組織にいるはずなのに、お互いの業務内容をよく理解していないがゆえに対立してしまった…なんてことが起こることもあると思うんです。それも社内インターンの制度を活用することで解消されていったらいいなと。
それに、個人の能力や専門性をどんどん高めてもらうことで、組織のパワーも事業の質も向上していく。職員それぞれのキャリアに向けた制度ではありますが、最終的には組織の成果最大化につながってくれると思っています。JICAの社内インターンは公募制で、基本的には、インターンを受け入れる部署が「うちの部署ならこんな経験が積める、こんなことを学べる」と体験できる内容を提案して、それを見て職員が応募をする… という形式をとっています。組織全体として人材を育てていく、人材を育てる文化を醸成していくという側面があるんです。とはいえ、経験したい社内インターンの内容を職員自ら提案してもらうという〝逆指名〟も叶うシステムになっているので、その新しいアイデアをもとにさらに人材育成に対する議論が活性化することも。制度そのものも、現在進行形で成長中です!
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受け身ではないキャリアプログラムだからこそ、参加した職員の満足度がとても高いことも大きな特徴なのだそう。次回からは、実際に社内インターンに参加している女性を直撃! 取り組みの具体的な内容、仕事や働き方への考え方などを深堀りしていきます!
協力/JICA
撮影/トヨダリョウ ヘア&メイク/塩田勝樹(Sui) 構成/旧井菜月