片づけられない人は、真面目で完璧主義
「片づけ本を買ったのに、難しすぎて実行できない」「物が捨てられない」などモノだらけの部屋で途方に暮れている人はたくさんいます。そういう人の共通点を西崎彩智さんに伺いました。
「片づけられない人というと、ズボラでだらしない人が思い浮かびますが、実際はそうではありません。真面目で完璧主義、自分よりも他人を優先し、何事も一生懸命な人が多いのです。
仕事や人付き合いに頑張って、家に帰ってきたら電池切れ。やっとのことでシャワーを浴びて歯を磨き、気絶するように眠ってしまうという女性も少なくありません」(以下「」西崎さん)
へとへとに疲れて帰ってきて、部屋が散らかっていると気持ちは沈みます。カビやホコリなどで睡眠の質が低下したり、ストレス過多になる可能性もあります。物量が多ければ、鍵や財布、通帳や印鑑などの貴重品など探し物に時間をかけてしまうことも。
「家が散らかっている人の中には、探し物のために月3~4時間以上、費やしている人もいました。
しかし、それより私が、重視しているのは心の問題。床が見えないほど散らかっている空間で生活していると、自分はいったい何をしているのか、どう生きたいのか、何をしたいのかを見失ってしまうのです」
散らかった部屋で見えなくなるのは、将来の希望
当然、自分を好きになれず、自信がなくなり自己肯定感も下がります。今後のキャリア、結婚についてなど、前向きに考えにくくなってしまうのです」
不安を打ち消すように仕事に邁進しても、いい結果は出せません。現実逃避をするかのように、ネットショッピングや“推し活”に夢中に。そこで、不要なモノやグッズ購入などに使ってしまい、ますますモノが堆積するという結果に。
「そういう人の気持ちが痛いほどわかるんです。というのも、それは私もかつて同じような部屋に住んでいたから。当時の夫がリストラされ、私も経済的背景から働きに出ていたのですが、仕事も家事も中途半端。
そうするうちに、夫婦関係どころか家族の仲まで悪くなり、ストレスで買い物を繰り返すようになりました。モノだらけの部屋で途方に暮れていたのです」
しかし、あるとき、「これではいけない」と、一念発起して片づけたら、霧が晴れるように、自分の理想とする将来像や、キャリアの方向性が見えてきた。それが、現在の活躍に繋がっているとのこと。
さて、「私もやってみたい」と思った人は、片づけに入る前に、あなたのタイプを診断してみましょう。
「これは私たちが1万人以上の「片づけられない人たち」からの切実な個別相談から分析しています。あなたはなぜ片づけられないのか……その原因を探ってみましょう。当てはまるものにチェックをしてください」
片づけられない「根本的な原因」を知るチェックシート
1.安い・無料・限定が好き
2.まず収納用品を揃える
3.「幸せになれるかもしれない」グッズが好き
4.片づけられないのを環境のせいにする
5.自己流でやろうとする
6.思いつきで行動する
7.モノを大切にする=取っておくと思っている
8.「忙しい」が口ぐせ
9.隙間を埋めるのが好き
10.モノの処分のタイミングがわからない
11.言い訳をすることが多い
12.決めるのが苦手
「さて、あなたはいくつ当てはまりましたか? 実はこのテスト、ひとつでも当てはまったら“片づけられない人”なのです。これらの質問の背景にあるのは、不安と心配、本末転倒、責任転嫁という3つの性分。
あなたはどの性分が多かったでしょうか。これを理解し、受け入れて、自分の中で消化することが大切。そこから片づけられる人になっていくのです」
ざっと解説すると、「1」はこれを逃すと損するのではないかという“不安”から買い物に駆り立てられています。「7」「9」「10」「12」も将来への“不安”や“心配”が根本的な原因。
「2」はモノの総量を減らしていないのに、収納用品を手に入れる“本末転倒”タイプ。これは「5」と「6」も同じです。成功していないのに、行動しても暗礁に乗り上げるだけです。
「3」「4」「8」「11」は“責任転嫁”が根本原因。自分の行動に対して責任を持たない思考を続けていると、人生が自分以外の誰かに乗っ取られてしまう可能性が非常に強くなるとのこと。
家が散らかっていると、恋愛も仕事もうまくいかない
さらに、家がモノだらけの女性は、モラハラの恋人への献身を続けてしまったり、報われない仕事を続けてキャリアアップができなかったりと、悪いことばかりが起きるそう。
それもそのはず、不安・本末転倒・責任転嫁という感情が、常に心に巣食っている人とは、なかなか向き合いたくないものです。
「思考が人間を作ります。ここまで読むと気付くと思いますが、片づかない人の共通点は“今の自分を生きていない”ということなのです。考えても仕方がない将来の不安におびえ、決断の責任を誰かに委ね、本末転倒な行動を繰り返してしまう。
私たちの受講生の中には、同じバッグを10個持っていた人や、冷蔵庫にバターが12個あった人など、枚挙にいとまがありません。そういうムダやロスを断ち切るには、まず、自分の手で部屋にあるモノを持ち、“今必要かどうか”を選択。
そして不要だったら家から出す。これを繰り返すことが心のセラピーに繋がっていき、人生全体にいい効果を心にもたらすのです」
でも私たちは、もったいない、モノを大切にしないと罰が当たる、せっかく買ったのだから……という教育を受けています。
「そういう人におすすめなのは、キッチンの片づけ。キッチンは家の中でも最も片づけやすい場所です」
後編では、西崎彩智さんにキッチンの片づけのやり方について教えてもらいます。ぜひ、実践してみましょう。
西崎さんの最新刊
『キッチン「から」片づければ、家は必ずキレイになる!』(小学館)1,430円
1万人の個別相談実績を持つカリスマ「お片づけ習慣化」コンサルタントに学ぶ、絶対にリバウンドしない片づけのメソッド。片づけを「人生をリスタートさせるはじめの一歩」ととらえ、まずは片づけられない原因を徹底解明。その上で「賞味期限により〈捨てる〉〈捨てない〉が明確」「大小さまざまなモノがあるので他の部屋にも応用可能」「なにより家族が変化に気付きやすい」という理由から、片づけのスタートをキッチンに置き、家全体に応用できる片づけノウハウを伝授。
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お片づけ習慣化コンサルタント・西崎彩智(にしざきさち)さん
株式会社Homeport代表取締役。1967年生まれ、岡山県出身。片づけを起点にママたちが自分らしくご機嫌な毎日を送るための「家庭力アッププロジェクト®」や、子どもたちが片づけを通して生きる力を養える「親子deお片づけ」を主宰。小中高と学校から講演の依頼も多い。昨今は、男性育休取得推進義務化の流れから企業による依頼も多く受け、「男性向け片づけ研修」の開催にも力を入れている。