【働く私にMusik】イヤなことがあったら、僕の曲に身を委ねてネガティブな感情を手放してほしい
◆Guest Musician:Ryohu
りょふ/1990年生まれ、東京都出身。ラッパー/トラックメイカー。2012年に幼なじみたちと共にヒップホップクルー「KANDYTOWN」を結成。’16年にはメジャー1stアルバム『KANDYTOWN』をリリース。翌年、ソロ活動を本格始動する。今までにBase Ball Bear、Suchmos、ペトロールズ、OKAMOTO’S、あいみょん、冨田ラボなど、さまざまなアーティストの作品に客演として参加。’20年には「AppStore」のCMソングに使用された楽曲『TheMoment』を収録した、ソロ名義の1stアルバム『DEBUT』をリリース。現在、2年ぶりの2ndアルバム『Circus』が好評発売中!
「いいよ、大丈夫だよ」と許せる心が欲しい。リード曲『Thank you』に込められた思い
サッシャさん(以下、S):少し話が戻るのですが、先ほどアルバムのために音楽をつくりたくないとおっしゃっていたじゃないですか。ここまでのRyohuさんの話を聞いて、それがすごく納得できました。というのも、今回のアルバムの中で『Thank You』がリード曲になっています。でも収録曲の順番でいうといちばん最後。アルバムでリード曲をラストにもってくるってあまりないですし、そこにRyohuさんの音楽観みたいなものを感じて。今回のアルバムの意図が見えた気がしたというか。。
Ryohuさん(以下、R):そうですね、リード曲は最初に入れることが多いですよね。『Circus』っていうタイトルにした理由なんですが、サーカスでいろいろな演者が登場した最後に座長が出てきて「ありがとうございました」って挨拶するイメージでした。実際にサーカスを観たことないのでわからないですけど。だから最後に『Thank You』をもってきて。
S:なるほど! MVはカーテンコール的な雰囲気もありましたね。
R:それも少し意識しました。ちょっと…『Thank You』について語ってもいいですか?
S:もちろんです(笑)!! むしろ聴きたい!
R:「ありがとう」って、色々な意味合いがあると思うんですけど、今回に関しては少し哲学的な意味合いをもたせました。単純に近くにいてくれる人に対して、「いつもありがとう」と言うことじゃなくて。それも大切ですけど今回はそうじゃなくて、「ありがとうの循環」に繋がる「許し」について考えました。
たとえば、だれかが僕に対してミスをして、それに対して自分がイライラするのってよくないなと思うんです。そこで「いいよ、大丈夫だよ」って許せる心の余裕がほしい。相手も自分が悪いことをしたのに許してくれて「ありがとう」って思ってくれたら、それがその人の心の余裕にも繋がるし、次に頑張るエネルギーになったらいい。いいことって、いつか自分に返ってくると思うんですよね。
S:悪いこともそうですけど、すべて自分に返ってくると思って行動することは大切かもしれません。
R:そうですよね。自分が何かをしでかしたときも、その人がもしかしたら助けてくれるかもしれないし。僕はそれに対して「ありがとう」って言うし、そういう循環が大切かなって。もちろん、本当に許せないこともあると思いますけど。
S:日常的に沸き起こるネガティブな感情に対して、「ありがとうの循環」があることを思い出すと、その後の行動が変わるかもしれないですね。どんな職場でも、こういう気持ちで人と接することって大切なんじゃないかって思います。
R:スポ根ぽい考え方かもしれないですけれど。両方ともバスケ作品になりますけど、映画『コーチ・カーター』とか漫画『スラムダンク』とかもそうで、やっぱりチームのだれかがやらかしちゃったりするんですけど、それでもみんなが許します。
でも、失敗したヤツはその後めちゃくちゃ努力をして、それがきっかけで活躍したりして。結果、win-win。これはつくり話ですけど、そういうイメージでした。自分自身をイラつかせないためにも、心に余裕をもつって大事ですよね。人を許すとか、ありがとうって思える自分でいたい。
この間、上司に何かイヤなこと言われたなとか、友達と喧嘩したとか、ネガティブな気持ちを一回忘れて、とりあえず音楽を聴いてみてって気持ちです。いったん、僕の曲に少しだけ身を委ねてほしいなって。
あと、『Thank you』を制作しているときに、たまたま「有難い」っていう日本語の成り立ちを知りました。「難」が「有る」人生は「有難い」って、難しいことがあるから「ありがとう」という感謝の気持ちが生まれると聞いて、すごいな〜と思って。成り立ちには諸説あると思うんですけど、個人的にこの考え方が素晴しいと思って。
S:確かに。雨が降るから晴れのよさがわかるみたいなね。
R:そうなんです。自分が考えていたこととリンクしたんですよね。あまり重く受け止めすぎず、ライトに伝わればいいと思っているのですが、誹謗中傷とかを言う人に対して届いたらいいなというメッセージも込められてます。自分の人生に直接関係ないところでネガティブなことを言わないで、むしろ自分に考えるきっかけを与えてくれてありがとうって気持ちになろうよって。
S:青春時代にバスケを突き詰めてきたからこその、超チームスポーツの考え方ですね。だから「KANDYTOWN」も含めて、チームでやることが得意なんだと思います。
R:あ〜、そうかもしれないですね。自分ひとりだけじゃないってわかっているからこそ、そういう考えが生まれているのかもしれないですね。
S:スポーツだけじゃなくて、会社でも同じことが言えますね。仲間を許せなかったら、まずチームが崩壊しますからね。ひとりでできることは限られるので、大きな仕事をするなら大切にしたいスポ根だと思います! 『Thank you』は、めちゃくちゃ人生観の詰まった曲だったんですね。
R:はい! 最後にそれを置きにきました。
2枚目のアルバム発売直後でも、すでに3rdアルバムの構想あり!
S:まだ2ndアルバムをリリースしたばかりですが、次なる目標は何かあるのでしょうか?
R:今すごくやりたいことがあって。コンセプチュアルに自分自身に向き合った1stアルバムと、いろいろなアーティストとコラボした2ndは両方とも楽しかったので、次はそのいいところをとったアルバムをつくれたらいいなって思っています。
S:もう次回作に取りかかりたい!?
R:つくりたいですね! ちゃんとテーマがあって、そこに然るべき人が入って、自分のソロ曲もあってっていう、いわいる普通のアルバムなのかもしれないですけど。それができたらなと思って、今は少しずつインプットというか、人と話していいなと思ったものをメモしたりしています。
S:3rdアルバムにしてオーソドックスな制作の進め方に立ち戻るというか、ここまでの2枚のアルバムで自分がチャレンジしたいことはやれたってことですか?
R:まさにそうです! 1枚目と2枚目で変化球なつくり方をしてきちゃったので。
S:でもそれがあったからこそで、いい周り道になっていますよね、きっと。
R:そうですね。失敗したとは思っていないし、自分の人生で然るべき道を通ってきたと思っています。だからこそ、いろいろな人が近くにいてくれているし、そのお陰で純粋に音楽ができていると思っています。
S:次なるチームスポーツを楽しみにしています! インタビュアーとしては間違った閉め方かもしれないですけど、2ndアルバムを前にして、すでに3rdアルバムが待ち遠しいです(笑)。
R:楽しみにしていてください!
S:そのためにも、今回の話を踏まえて2ndアルバムを聴き直しますね。これを知った上で3rdアルバムを聴かないと。今日はありがとうございました!
R:こちらこそ、ありがとうございました!
<→Vol.4へ続く:Ryohuの素顔が垣間見られる10Questions!>
【Information】総勢14組との豪華コラボが実現した2ndアルバム『Circus』が好評発売中!
’22年4月からYONCE(Suchmos)、IO(KANDYTOWN)、佐藤千亜妃、Jeter(Peterparker69)、オカモトショウ(OKAMOTO’S)といったジャンルレスな客演を迎えた楽曲を連続でリリースするコラボレーションシリーズをスタート。そこで得たラッパー/トラックメイカーとしてのスキルを存分に発揮した、約2年ぶりとなる待望の2ndアルバム。/¥4,950(完全生産限定盤:CD+7inchアナログ盤) スピードスターレコーズ 11月2日リリース予定 ※現在、ストリーミングサービスおよび iTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスでも配信中。
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【Ryohuさん衣装】すべて私物
【サッシャさん衣装】
ジャケット¥374,000(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン〈イザイア〉) パンツ¥6,490(原宿シカゴ竹下店) その他/スタイリスト私物
【協力社リスト】
イザイア ナポリ 東京ミッドタウン:03-6447-0624
原宿シカゴ竹下店:03-6721-0580
撮影/須藤敬一 スタイリスト/久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/牛玖文哉(gurus-cut&stand/Ryohuさん分)、塩田勝樹(Sui/サッシャさん分) 構成/竹市莉子・宮田典子(HATSU)